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南充浩 オフィシャルブログ

三崎商事の経営破綻から見る欧米高級ブランド輸入業者が厳しい理由

2022年8月2日 経営破綻 2

欧米ブランドの老舗輸入業者である三崎商事が経営破綻し民事再生法を申請した。負債総額は46億円。

三崎商事が民事再生法申請、1996年にドルチェ& ガッバーナと提携 (fashionsnap.com)

1963年創業の老舗輸入業者で、96年から2002年5月まで「ドルチェ&ガッバーナ」「D&G」の国内総代理店を務めていたことが有名である。

今回の破綻報道を受けて、業界外の人のコメントを見ていると事実誤認とか先入観などが多いと感じる。傾向としては大きく2つに分けられると思う。

1、ユニクロ全盛のアパレル市場は終わってるなあ

2、D&Gなんかやっているから潰れる

というものである。

1についてはユニクロ全盛はその通りだが、欧米高級インポート市場は2000年代後半にはすでに大きく縮小していた。もちろん一部のラグジュアリーブランドの強さはあったが、そのラグジュアリーブランドの多くは直営店化しており、いわゆる仕入れ型の高級インポートブティックいう販路はかなりの苦戦傾向にあった。

2については全くの事実誤認で因果関係が逆である。ドルチェ&ガッバーナとD&Gが2002年に離れてしまったから三崎商事の苦戦が如実に始まったといえる。

 

ドルガバが三崎商事から離れたのが2002年で、そこから2005年頃までが欧米高級インポートブランド市場の最後の輝きだったと当方は感じる。

97年から業界紙記者となり、欧米高級インポート業者の担当記者も兼務した。なにせ、イズミヤの1900円の服で育てられた男だから、初めて見る欧米高級インポート業者の煌びやかな世界に驚いた。扱っている商品も10万円、20万円、30万円は当たり前だし、社員も自社が扱っている高級ブランドに身を固めていた。

そして2003年に退職してから当方は転々としていたのだが、2006年か2007年ごろに以前の知り合いの部長を訪問したことがあった。その際、部長が「インポート業界も斜陽だよ。新卒が全然入社してこない。うちの会社も30代が最年少だよ」とおっしゃったので驚いたことを今でも鮮明に覚えている。

あの煌びやかだった業界がたった数年でこんなになってしまうなんて、と。

だが、考えてみると凋落するのも当然だとわかる。ドルガバの例を出すまでもなく、2005年頃までに人気ブランドのほとんどはジャパン社を設立して輸入業者から独立してしまっている。輸入業者各社にどれほどの有力ブランドが残っていたのかと問われると、当方にはちょっと思い付かないほどだった。

そして、その傾向は今でも続いている。

直近で有名な出来事というと2014年のブルネロ・クチネリが輸入業者のウールン商会から離れてジャパン社を設立したことだろう。

 

さて、欧米高級ブランド輸入業者各社は今回破綻した三崎商事に限らず、多くが苦戦傾向・縮小傾向にある。三喜商事、サンフレールともに大幅に縮小しているし、コロネットは一度経営破綻している。ウールン商会もブルネロが無くなり縮小傾向にある。

ではなぜ、欧米高級ブランド輸入業は苦戦・縮小傾向にあるのか?

 

1、日本国内で展開していない著名な欧米高級ブランドがもうほとんど残っていない

2、日本で売れ行きが好調になるとジャパン社を作って直販に乗り出す

 

この2つが大きな理由だといえる。

戦後、日本は経済成長とともに欧米の著名ブランドがどんどん輸入されるようになった。先年倒産したサンモトヤマなんかがその先鞭を付けたといえるだろう。当たり前の話だが、最初は紹介すべき有名ブランドがたくさんあった。それが60年代、70年代、80年代、90年代、2000年代と進むにつれてどんどん残りの数が減ってくる。もちろん、その時代ごとに新興ブランドも出てくるが、無限に出てくるわけではないから、いつかはインポート業者の紹介に追いつかれる。

そして、2である。

ドルガバの例を出すまでもなく、それ以前から、輸入業者が国内市場を切り開いて一定額以上の売上高が稼げるようになると、もれなくジャパン社を設立する。ブルネロ・クチネリも同様だ。古くはルイ・ヴィトンやグッチだって最初は輸入業者がインポートしていた。

欧米ブランド側に立って見ればジャパン社設立は当然の帰結である。なぜなら、輸入業者が30億円、50億円、100億円を稼げるようにしてくれたなら、卸値で彼らに卸すよりも日本で直販した方が売上高は格段に増える。また営業利益も高まる。そりゃジャパン社を設立するのも当然だろう。

 

これと同じ構図が欧米ライセンスブランドである。

近年だと三陽商会とバーバリーの件が有名だが、古くはアディダスがデサントとライセンス契約を打ち切ったこと、クリスチャン・ディオールがカネボウと契約を打ち切ったことが有名だった。

ではなぜそうなるのかというと、例えば三陽商会はバーバリーで500億円内外の売上高があったと言われている。バーバリー側はライセンス料という収入があるが、これは当然500億円ではない。ライセンス契約料の形態はさまざまあり、三陽商会との契約形態は公表されていないが、例えば「年間〇〇億円」という定額もあれば、「売上高の〇〇%」という定率もある。どちらの形態かはわからないが、500億円に比べればはるかに安い。定率だとだいたいが10%とか20%くらい(率の設定も社やブランドによって異なる)なので、仮に10%とすると50億円である。バーバリーとしては50億円より直販で500億円を手に入れた方が良いと判断しても不思議ではない。

アディダス、クリスチャン・ディオールも同様である。

 

そんなわけで、欧米高級ブランド輸入業者の破綻は今回の三崎商事で終わりでは決してなく、今後も続くだろうと予想される。全社が無くなってしまうということは考えにくいが、ガッチリとブランドを掴んでいる一部の輸入業者を除いて、多くは消えてしまうのではないかと考えられる。

 

蛇足だが、「今は韓国ブランド輸入が全盛」という意味のわからない意見を見かけることがある。しかし、現時点において、1着何十万円もするような欧米高級ブランドと同じ価格帯の韓国ブランドは知る限りではほぼ存在しない。またブランドのステイタス性も高くない。強いて挙げればMCMくらいだろうか。

そしてドルガバよろしく1ブランドで何十億円も稼げる突出したビッグブランドが無い。「韓国ブランド」というグループをすべて合算するとそれなりの売上高はあるのかもしれないが、個々のブランドの売上高はそれほど大きくないし知名度もステイタス性もそんなに高くない。

個人的な感想でいうなら、小規模なブランドが集まって一つの市場を形成しており、それを構成するブランドは数年ごとに入れ替わっている。という印象が強いため、現時点では欧米高級ブランド輸入業者にとって到底代替品たりえない。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/08/02(火) 12:51 PM

    服飾じゃないですが、つい三日前?には、自動車のポルシェの輸入販売元だったミツワ自動車が自動車整備事業を終了したらしいですね。一時期は200億円以上の売上になってたようですが、記事とのブランドと同様にポルシェジャパン社が設立されて輸入代理店契約は終了となり、その後は一ディーラーとして存続してたようです。メルセデスベンツも同じ感じですね。欧米人はホント面の皮が厚いw
    とはいえ、ビジネスモデル破綻したら、他の商売できるくらいじゃないと経営者はダメだとは思います。東レとか富士フイルムとか、祖業がダメになっても成長していますし。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/17(水) 12:40 PM

    輸入車の世界はまだディーラーなり整備という元本業に
    付随したビジネスモデルが残ったからいいと思うんです
    バルコムしかりヤナセしかりでagentで無くなっても
    金は回ってきます

    しかし同じ輸入業・物販でも、服はダメですね~
    本業が無くなった瞬間、付随した物がないから
    売上がまったく立たなくなってしまう

    不動産でも持ってりゃいいけど、製販りょうほうやってないから
    華やかそうでも、実はそう儲からない世界にすぎない

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