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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店は最終的に都心大型旗艦店だけが残るだろうという話

2022年7月12日 百貨店 0

2020年7月に亡くなった父の三回忌を先日行った。

昨年はコロナ自粛のため、親戚を呼ばずに1人で1周忌を行ったが、今回は自粛ではなかったので、何人か親戚を読んだ。

で、葬儀とか法事とかでは、全員ではないが中には香典やご仏前をいただくことがある。この金額が5000円とか3000円程度なら、お返し(一応半額相当の品物)をする際にもあまり悩まない。1500円とか2500円くらいのお菓子の詰め合わせでも贈っておけば事足りる。しかし、返礼に困るのが3万円とか5万円をいただいた場合である。

15000円とか25000円の食品の詰め合わせなんてそうそう売っていないし、高級品になればなるほど受け手側の嗜好が分かれるような気がして贈りにくい。

そういうときに便利なのが、百貨店の商品券を金額分贈ることである。

実際に、父の葬儀でのお返しも百貨店商品券を贈った。

 

だから、自分自身は百貨店で買い物をすることは年に1回あるかないかくらいだが、葬儀や法事のときには、百貨店を必ず利用する。

自分自身の生活だけに焦点を当てれば、百貨店で物を買うことはほぼないが、やはり法事や葬儀のお返しを贈るという点においては必要不可欠といえる。

 

新型コロナ禍が一段落し、再拡大の可能性はあるものの、もうこれ以上自粛はしていられないから、我が国のみならず世界的に(ゼロコロナにこだわる中国を除いて)平常通りに動き始めている。

丸2年間停滞させられた小売流通業も回復を目指して活動を活発化させている。

そこで取りざたされるのがまたぞろ「百貨店は復活できるのか」とか「百貨店を復活させるために」とか、いう「百貨店の復活」である。

コロナ禍によって百貨店売上高は4兆円規模に転落した。そこからの「復活」というわけだが、結論からいうとかなり難しいだろうと思う。

もう百貨店全体の売上高が5兆円台・6兆円台に回復することは無い。

理由はこれまでこのブログで書いてきたように、今後も地方・郊外の小型百貨店の閉店・撤退ラッシュは止まらないと考えられるからだ。

可処分所得云々を除いても、地方・郊外民は、小型百貨店へ行く理由がないからである。あるとすれば当方と同じで冠婚葬祭の贈答品のためだけだろう。

たまに地方・郊外の小型百貨店を時間つぶしがてら覗くことがあるが、近鉄百貨店あべのハルカス本店とか阪急うめだ本店などの都心大型百貨店を見慣れた当方からすると、めちゃくちゃショボく見える。

1フロアが狭いし、取扱品目も少ないから、目的買い以外はちょっと使いようが無いと感じる。

そりゃイオンモールを見ている方がはるかに規模も大きくて楽しめる。

 

先日も帯広の百貨店の「藤丸」の閉店が決定した。

帯広の百貨店「藤丸」が23年1月で閉店、地域唯一の百貨店 不景気ニュース – 不景気.com (fukeiki.com)

北海道帯広市の百貨店「藤丸」は、2023年1月末をもって店舗を閉店する方針を明らかにしました。

1900年(明治33年)に「北越呉服」として開業すると、1930年に現在地へ移転するとともに百貨店を開業しました。その後、1982年に地上8階・地下3階の現店舗を建設し営業を開始すると、現在では地域唯一の百貨店として営業を続けていました。

 

この流れは今後加速することはあっても止まることはないだろうと思われる。

地方・郊外の小型百貨店とイオンモールを見比べると、はるかにイオンモールの方が施設的にも充実しており幅広い年代層で楽しめる。

これは以前にも書いた。

都心の大型百貨店でさえ子供が楽しめる場所ではなくなっている。本屋もおもちゃ屋もなくなってしまった。イオンモールにならあるし、ゲームセンターみたいなコーナーもある。子供連れのファミリーにとってどちらが行きやすいかというと圧倒的にイオンモールとなる。

だから、メディアがいまだに「百貨店の復活に向けて」なんていう特集を組んでいるのはナンセンスだと感じる。

 

そんな中で注目しているのが、富裕層に向けた外商強化というプランである。

三越伊勢丹HD/富裕層の取り込み強化で22年度個人外商売上860億円目指す | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

従来の店舗ごとに、店舗にある商品を紹介し販売するスタイルから、旗艦店2店舗を中心に、店舗にないグループ内外の商品供給、旅行・イベントなどコト消費を加え、2022年度の個人外商売り上げ860億円を目指す。

個人外商売り上げは2019年度は716億円、2020年度は790億円だった。

 

とのことである。

当方は、この三越伊勢丹に限らず、都心大型旗艦店を主体とした外商強化はそれなりの効果があると考えている。実際に百貨店の外商は売り上げ規模が減らないどころか現状維持から微増している場合が多い。ならそこを強化しようというのは極めて当然の考え方である。

しかし、百貨店外商には欠点もあって、現在の外商顧客の多くは老人層である。老人層は20年後にはほとんどこの世を去ってしまう。

となると、外商強化の方向性の一つとしては、その老人客の子供世代・孫世代をガッチリと取り込む必要があるということになる。子供と孫をガッチリと取り込めば、今の老人層が死に絶えても売上高は維持ないし伸ばすことも可能になる。

 

当方は外商で働いたこともなければサービスを受けたことも無いのでリアルな空気間は分からないが、昔、百貨店メンズに詳しい方からはこんなことを教えられたことがある。

「庶民とはかけ離れているが、富裕層の中には子供のころから百貨店でしか買い物をしたことがないという人たちも多く、その子供や孫も若い割に非常に百貨店に親近感を持っているから、その層をガッチリと固めることは必要であり可能」

ということだった。この話を踏まえても三越伊勢丹が都心旗艦店を中心に外商を強化するのは百貨店としては極めて理にかなっている。

 

現在のすべての百貨店は子供にとっては圧倒的にクソつまらないビルになっている。こんな空間に「ファミリー客よ、もう一度」と言ってみたところで、子連れ客が戻るはずもない。

だったら、得意とする富裕層向けの外商を強化し、その子供世代、孫世代を固めることに注力した方が効率的であることは言うまでもないだろう。

 

百貨店は、強い都心大型旗艦店だけが残り、不採算の地方・郊外店はすべて閉店・撤退ということになるだろう。逆に強い都心大型旗艦店だけが残ったときに百貨店のブランドステイタスはさらに高まるのではないかと思うが、反面、全国の店舗網を失ってバイイングパワーは低下することになる。

まあ、しかし、それが百貨店に残された最も現実的な生き残り策ではないかと思う。

 

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