品質検査に合格した生地でも消費者からクレームが出ることもある
2022年7月11日 品質検査 0
皆さんこんにちは。
USです。
梅雨が一瞬にして明け、あっという間に夏らしくなってきました。
いきなり猛暑が到来しており、マスク着用が辛い季節ではありますが、熱中症などに気をつけて楽しい夏を過ごしたいところです。
前回、洗濯表示について書いたとき、消費者に対して責任を持って洋服を販売しようとしている会社は、生地の試験データ等を確認した上で絵表示をつけてるはずだよ、という説明をしました。
有名アパレルでは自社の生地や製品に対する品質基準が設定されており、これに基づいて生地の性能検査(品質検査)を更に細かく確認されている場合が多いです。
それぞれの会社基準によってどこまで試験する項目は変わってきますが、概ね『染色堅牢度5項目』(光、洗濯、汗、摩擦、ドライ溶剤に対する項目)は最低確認する事が多いです。
当然、基準未達の場合があれば、生地の改善をしたり、基準未達項目に対してデメリットをつけたり、洗濯絵表示にて当該の処理を✕にする対応を取られることとなります。
しかし、その生地検査を実施する中には、全ての項目において基準値を上回っている優秀(?)な生地もあります。
『その生地は全部項目基準値を上回っているので完璧だ!!』
と、思われる方も多いと思います。
ところが、その品質検査で合格が出たとしても、残念ながら消費者からの申し出(クレーム)が発生する場合もあるのです。
『合格してるのになんで問題が出るの??』
このように言われる方は多いです。きっと今このブログを読んでくださっている方もそう思われるのではないか?と思います。
理由は様々ありますが、検査で基準を上回っていようが、全ての項目で5級がついていないということは、元生地の色が変色していたり、白い試験用生地に色が移っていたりしており、わずかながらも変化が見られるということです。
くどいようですが、色が付いている以上色が移る可能性ゼロではないですし、色が変色しない可能性もゼロではないということになります。
『じゃあ検査をする意味がないじゃないか』
そう思われる方は多いと思います。しかし、品質基準はある程度の実用に耐えられることを想定して策定されています。つまりその想定を超えた場合に問題が発生(色が変わったり、破れたり)してしまうのです。
想定とはなにか?
端的に言えば実用年数だったり、使用頻度だったりということになります。そして「想定」されているよりもハードな使用をされた場合は必ず何らかの問題が発生します。また、どんなに大切に着用し、メンテナンスをしていてもやはり洋服にも寿命があり、それを超えた場合も何かしらの変化が現れます。
それは日々ただ着用しているだけでも、日に当たったり、汗をかいたり、擦れたり、引っ張られたりすることの小さな積み重ねであっても、積もり積もって目に見える『劣化』になります。また、着用せずに保管しているだけでも、製造されてから年月経つと様々な要素で劣化してしまう場合があります。
実用洗濯試験においても、繰り返し洗濯していると、前回洗濯後は色が滲んでなかったのに、今回洗濯後確認すると、急に色が滲んでいるということもあります。これも洗濯を繰り返すことで染料が劣化し、堅牢度が低下したと考えられます。
では、耐久性がどのくらいなのかというと、それは難しい問題で、アイテムや洗濯頻度、使用頻度、目標にしている耐久性等によって変わってくるので一概には言いづらいです。
耐久性については、消費者庁のウェブサイトで確認すると、洗濯表示ラベルの項目について下記のよう記載があり、参考になります。
『・ラベルは、少なくともラベルを付ける繊維製品と同程度の家庭洗濯処理及び商業クリーニング処理に耐え得る適切な素材で作成する。
・ラベル並びにラベルに印字した記号及び付記用語は、容易に読み取れる大きさとし、製品の耐用期間中は判読可能でなければならない。』(消費者庁ウェブサイトより引用)
つまり、洗濯表示ラベルの印字が読めるまではとりあえず耐用期間中ではあると言えます。
逆にラベルが判読できない状態なら『耐用期間が過ぎたもの』と考えられるということになります。
この辺りのことは、店頭で自社の商品を購入していただくお客様にも機会を見つけてお伝えした方がよいのではないかと思います。
では皆さんまた来月お目にかかりましょう。
USでした!
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