
バブル崩壊以降2007年まで「安くない衣料品」のブームが頻繁に起きたという話
2022年6月23日 トレンド 1
4月に「ジャパンファッションクロニクル 1945~2021」という本を買った。
1945年(敗戦)から昨年までの日本のファッションの歴史を10年ごとの編年体でまとめてある本だ。つぶさに最初から最後まで一字一句ことごとく読了したというわけではないが、各年代でのファッション関連のブームが正確に記載されていて資料的価値はあると判断できる。
これを見ながら、改めて考えてみると、メディアも我々消費者も、衣料品業界人もほぼ等しく間違った認識をしていることがいくつかあることがわかる。
その代表例の一つが、バブル崩壊後すぐに倒産ラッシュが起き、低価格衣料品しか売れなくなったというものだろうと思う。
バブル崩壊は91年だとされているが、92年からすぐに不景気になったわけではなく、低価格衣料品以外売れなくなったわけではない。
この本にも書かれているが、90年代は毎年のように次から次へと高額ファッションのブームが起きていた。
自身の記憶と照らし合わせながら、思いつくままに挙げてみよう。
1、ソフトジーンズ(レーヨンジーンズ)ブーム
2、ビンテージジーンズブーム
3、ナイキエアマックス95ブーム
4、裏原宿ブランドブーム
5、アムラーブーム(バーバリーブルーレーベルブーム)
6、ローライズジーンズブーム(2000年以降へと続く)
7,109ブーム
などである。
これ以外にもMA-1 ブルゾンブームだとか、レザーワークブーツブームだとかもあった。
これらすべてに低価格代替品は存在しなかった。厳密にいうと、存在はしたが「本物商品」との落差がありすぎて、ちょっとでも見映えを気にする人間なら間違いなく「本物商品」を買っていた。ジャスコの平場で似ても似つかない低価格代替品を買っているのは、ファッションに全く微塵も興味を持っていない層に限られていた。
他方、低価格衣料品ブームの萌芽はバブル期からあり、青山商事、はるやま商事などのロードサイド低価格スーツが最も好調だったのがバブル期で、ロードサイドから都心へと進出することにも成功した。
また98年にはユニクロのフリースブームが全国で起き、メディアの煽り報道も手伝ってユニクロをスターダムへと押し上げたが、ユニクロが業界の覇権を握ったわけでは決してなかった。
フリースブームが過ぎた2000年にはユニクロは前年比40%減ほど売上高を落としているし、ユニクロがファッション化を目指し始めたのは2004年以降のことである。
また、2000年以降にも「安くないファッションのブーム」は続いている。
・神戸エレガンスブーム
・レディースのプレミアムジーンズブーム
などである。
個人的な興味と記憶でいうと、2005年~2007年まで続いたプレミアムジーンズブームは印象深い。
アメリカやヨーロッパからのインポートジーンズが持て囃されたのだが、価格は最低でも1万9000円で、2万9000円、3万9000円というものも珍しくなかった。
ローライズブーツカットというシルエットがメインだった。
で、このブームに当時懇意にしていた国内の大手ジーンズメーカーも当然のことながら乗っかったのだが、彼らの発売するレディースブーツカットジーンズは1万2000~1万5000円くらいがメイン価格帯だった。
当方が中立の目で売り場を見ると、欧米ブランド1万9000円、2万9000円というのと比べると、はるかにお買い得感があった。
人間の感覚の慣れとは恐ろしいもので、1万9000円の商品を眺め続けていると、1万2000円を見ると恐ろしく安く感じ、生来のケチである当方でさえ「1万2000円なら安いから買ってみてもイイかな」と思うほどだった。
お買い得感しかない国内大手ジーンズメーカーの商品が圧倒的に支持されたと思うかもしれないが、お高い欧米ブランドの方が支持を集めた印象が強い。
そして、今では考えられないが
値段が高ければ高いほど良い
というような驚くべき雰囲気さえあった。
実際に各百貨店のバイヤーから、国内の大手ジーンズメーカー各社は
「値段が安すぎるからもっと上げてください」
と要請されたほどである。
もちろん、この裏ではツープライススーツブームやらユニクロの定着化など、消費者の低価格志向が進んでいたことも間違いない。
しかし、低価格衣料品のみが注目を集めるようになったのは2008年のリーマン・ショック以降である。
2009年からは、しまらーブーム、海外ファストファッションブーム、ジーユーの990円ジーンズブーム、2010年以降のトレンドファッション化したジーユーブームと続く。
2009年以降、高価格なファッションブームというのはほとんど起きなくなった。起きたとしてもマス化することはなく、一部の愛好家だけのものとなった。
ざっとこのように見てくると、人々の嗜好がいきなり急変するのではなく、数年くらいかけて徐々に変わるということがわかる。
もちろん、「ファッションクロニクル」を眺めながら実感していただいた方が良いだろう。
遠因としてはバブル崩壊以降の社会情勢の変化ということもあるが、低価格衣料品一辺倒になった最大の原因はリーマン・ショックだったのではないかと思う。
アメリカはリーマン・ショックが起きてもすぐさまリボ払い大国・ローン大国へと戻ったが、日本の消費者はより節約志向が強まったということになる。
遠くはバブル崩壊以降、近くはリーマン・ショック以降の30~10数年間に渡る節約志向が強まった日本人の消費動向をバブル前夜までのようなファッション業界の売り方・見せ方では到底変えることはできないだろうと思う。
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南サンの1~7の分類で、そのブームに乗った人数が
少しずつ少なくなっていった実感があります
1,2のデニムは男女若者のざっと1/2が対象に
しかし6,7は5人に1人も対象になっていないかと
そして同時並行で、まず仕事着の重衣料から低価格化が進み
ウニクロで普段着のカジュアルまで低価格化が到達した
リーマンショック界隈の日米の比較分析が冴えてますね~
アメリカの基本は浪費・リボ払いw国家だから
安い物ならあっという間に消費が戻る
しかし日本人の基本は節約。
だから、衣料品は今の売れ方が当たり前で、本来なのです
加えて昭和40年代ならサンヨーコートの1着5万のコートを
最低10年着るのが普通でしたが、
2022年は5000円のコートを3年おきに買い替えるように
なりました、とさ
私見ですが、節約けちんぼモッタイナイ意識で
1着10万の服を10年着るより
1着5000円の服を10年毎年買い替えるほうが
よっぽど気分が良いと思います
とはいえ5000円の服でも回し着を徹底すると
5年は着れますからねぇ・・・
服が売れなくなるはずだ・・・
安くても、高機能・高耐久の服が増えてますしね