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南充浩 オフィシャルブログ

洋服月額レンタルサービスの利用率は2・5%しかないという話

2022年5月27日 ファッションテック 1

趣味と仕事を兼ねて、毎月平均で3枚くらいの服を買い続けている。

たまに要らなくなったり壊れた服は捨てている。どうせユニクロとジーユーの値下がり品だし、その値下がり品をメルカリに登録して出品して送付する手間がめんどくさい。だったら、毎月の不燃物ゴミ回収に出した方が手っ取り早い。今後もメルカリやヤフオクは永遠に利用しない。

さて、そういう不要な服を手元に貯めないための方策として洋服の月額レンタルサービスというものが我が国にも10年くらい前から導入された。

しかし、個人的にはいまだにこのサービスのありがたみがピンと来ない。冠婚葬祭用の礼服などをレンタルする意味はわかるし、必要となったら当方もレンタルサービスを利用するつもりだが、デイリーカジュアルやお出かけ用カジュアルをレンタルしようとは全く思わない。

自分を鑑みるとその認識なので、正直なところ、このレンタルサービスが日本で採算ベースに乗るのか?といまだに懐疑的である。

このブログで常々書いているように、どんなものでも世の中の需要はゼロではない。だからその需要に対応するところにビジネスは生まれる。ただ、その需要が一定以上の規模が見込めるのか見込めないのかが問題である。自分の消費志向に基づいて考えると、カジュアルウェアの月額レンタルサービスという需要は日本国内においては極めて小さいものではないかと想像する。

当方が最も重視するのは「価格」「料金」である。

まず、国内には低価格ブランドがひしめき合っている。その値下がり品の中から使えそうなものを厳選してピックアップすると、だいたい毎月3枚くらい買っても、アイテムにもよるが平均で5000円くらいで買える。もっとも、冬の防寒アウターは価格が高くなるから、値下がり品を買っても単品は最低でも3990円くらいにはなってしまうが、夏の半袖Tシャツなら590~990円で選び放題である。

月額5000円前後で3枚くらい買えるのであれば、それ以上の価格を支払ってレンタルする必要はないと当方は考える。当方がレンタルサービスに冷淡な理由である。

そして、サブスクリプションとして毎月支払わねばならないというのも消費者からするとネックである。例えば、秋冬の防寒アウターは買えば値段が高いからレンタルしたいと思うが、夏の半袖Tシャツは買っても値段が安いからわざわざレンタルしたいとは思わない。このように毎月必ず利用したいとは思わない人は少なからず存在するのではないかと思う。そのためレンタルサービスの利用者は拡大しにくいと見ている。

 

実際、これを裏付けるようなアンケート記事が掲載された。

洋服月額レンタルサービスの認知率は半数超えも利用率は2.5% 最多利用は10代女性/MMD研究所調査|ECzine(イーシージン)

利用率は2・5%しかなく、以前にもご紹介したメタバースの利用率と3%と似たような結果であるといえる。

スマートフォンを所有する18歳~69歳の男女10,833人を対象に、洋服月額レンタルサービスについて聞いたところ、「全く知らない」が47.0%ともっとも多く、次いで「洋服月額レンタルサービスという言葉は聞いたことがあるが、内容はよく知らない」が28.6%、「だいたいどんなものか分かるが、利用したことはない(利用するまでに至っていない)」が19.5%となった。

続いて、洋服月額レンタルサービスの利用状況を性年代別に見てみると、「現在利用している」と「利用したことがあるが、現在は利用していない」を合わせて利用経験があるのは女性10代(n=171)が5.9%ともっとも多く、次いで男性20代(n=924)が5.8%だった。

とある。

全く知らないが47%ということは53%は知っているということになり、知名度はそこそこあるといえる。しかし、利用率は低い。最も利用率が高い10代女性ですら5・9%、20代男性でも5・8%しかない。ということはこの層ですら94%強は使ったことがないということになる。

なぜ、使わないかというと、先述したように「使う理由」「使いたいと思う理由」が無いからだといえる。

ちなみにこの5年間くらい毎年、専門学校で10代・20代の若者と接しているが月額レンタルサービスを利用しているという生徒を見たことがない。

 

続いて、洋服月額レンタルサービスのサービス名まで知っていると回答した1,534人に、知っている洋服月額レンタルサービスを聞いたところ(複数回答可)、「メチャカリ」が56.3%ともっとも多く、次いで「airCloset」が20.9%、「SELECT」が15.8%となった。

 

とあり、メチャカリ、エアークローゼットが1位と2位になったが、知名度という点において2位のエアークローゼットは1位のメチャカリとは知名度でいうと半分以下ということがわかる。

そして、レンタルサービスがビジネス化しにくいというのは、知名度において圧倒的に1位であるメチャカリですら、コロナ前の段階で「広告費を除けば黒字化しました(要は広告費を含めると黒字化できていませんということ)」という状態でしかなかったことからも理解できるだろう。

またエアークローゼットも決算内容はさして良くはない。

エアークローゼット 売上/利益/業績推移の決算グラフで経営分析 | グラフで決算|投資、分析、金融、就職転職に役立つ (gurafu.net)

ここで分析されているが、売上高は28億8700万円にまで伸びているが、営業利益は3837万円しかない。営業利益率は実に1・3%しかないほどに本業の儲けは少ない。

30億円近い売上高があっても本業の儲けは3900万円しか作れないのであれば、ビジネス化することは難しいし、似たようなサービスが林立した場合(すでにしているが)、さらに高収益化は難しいということになってしまう。

認知度において圧倒的な1位と2位の業績がこの有様なので、洋服の月額レンタルというビジネスモデルは、我が国では成長できにくいということになる。

繰り返すが、需要はゼロではないから、全廃してしまう必要は無い。だが、大規模な売上高や高収益を期待してはいけないということである。これから月額洋服レンタルサービスに参入しようとしている企業はこのアンケート結果を踏まえてビジネスモデルの構築、ビジネス規模の模索をすべきだろう。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2022/05/27(金) 6:26 PM

    メチャカリの “サブスク” は安いけれどダサいですね。Dコレクションのそれも安いけど,もともとダサいって定評のあるサイトですしね。
    およそレンタルサービスは思ったより高価で安いコースでも1万円近くするサイトが多い。でも高いからってダサくないわけでもなくて,メチャカリより少しはましって程度。まして上級コース15,000円なんてねえ ...

    ガールズちゃんねるでは「ブランドバッグのレンタルなんて誰が借りるんだろ?」「月7,500円出すくらいならそのお金貯めて自分で買った方が良くない?」って声が大多数のようで,つまりはそういう事でありましょう。

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