「wjk」というブランドの足跡を振り返ってみた
2022年5月26日 倒産 3
今の40歳前後から50歳代前半くらいの男性にとってはすごく懐かしく感慨深いが、30代半ば以下の男性にとってはほとんど見たことも聞いたことも無いくらいに知名度が低いメンズカジュアルブランドが「wjk」だろう。
ご存知の方も多いだろうが、そのwjkというブランドを作り上げた会社が倒産した。
何種類かの報道があるが転載された帝国データバンクのこの記事が最も詳細なのではないかと思うのでご紹介したい。
元・「wjk」ブランドで知られるアパレル衣料卸、特別清算開始命令受ける(帝国データバンク) – Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは時間がたつと削除されてしまうので気を付けてもらいたい。
5月12日に名古屋地裁一宮支部より特別清算開始命令を受けた。当社は、2004年(平成16年)2月に設立された元・メンズ衣料卸業者。
オリジナルファッションブランド「wjk(ダブルジェイケイ)」「lot holon(ロットホロン)」などを展開。代表的アイテムであるミリタリージャケットの「M66 field jacket」はテレビドラマや映画で使用されるなど著名で、20~30代の男性からの支持を得て業容を拡大。FC店舗や全国の小売店、通販業者への卸売りを手がけていたほか、直営店舗や自社オンラインストアでの販売も行い、2007年6月期には年売上高約10億2000万円を計上していた。
しかし、積極策の反動で生産過剰による多量の在庫を抱え資金繰りが悪化したため、主力仕入先である繊維総合商社のモリリン(株)(TDB企業コード:400149053)主導のもと経営再建に着手。扱いブランドの絞り込みや在庫処分などを実施して採算性の改善に注力してきたなかで、2021年12月にモリリンへ事業を譲渡し、同月31日株主総会の決議により解散していた。
とのことである。
2005年ごろから2008年か2009年くらいまでが人気絶頂で、メンズファッション雑誌に毎号記事広告も含めて大量に掲載されていた。
この2005年~2007年という時期は、ブーツカットのプレミアムジーンズブームの時期で、2万円台のジーンズが百貨店やセレクトショップで飛ぶように売れていた。
このころのジーンズの特徴というと、まだビンテージジーンズブームの名残が残っていて、タテ落ち・ヒゲ・アタリ感などというビンテージジーンズ風の色落ちするデニム生地が重視され、それでいてフォルムとしてはスタイリッシュなタイトブーツカットが絶大な人気を誇っていた。(この頃は上下ともピチピチシルエットが大ブーム)
ジーンズがこの有様なので、その他のカジュアルアイテム、ワークテイストアイテム、ミリタリーテイストアイテムも細身シルエットでありながら加工感が重視されており、wjkはまさにそんなブランドだった。
この時期、当方は今は亡き「メンズジョーカー」というファッション雑誌を毎号購読しており、wjkは毎号記事広告も含めて多ページに渡って掲載されていた。
だいたいこの手のブランドは、売り上げ規模などを公表していないので、その当時の売上高は全くわからなかったが、このブログでは何度も書いているように、この当時の記事広告というのはだいたい見開き2ページで150万円~200万円くらいの料金が発生したので、それをバンバン掲載できるほどだから、よほど売上高が大きいのだと思っていたが、今回の各破産生地によると、ピーク時の2007年6月期でさえ10億円の売上高が無かったと伝えられているので、よほど無理をしてファッション雑誌の記事広告にカネを突っ込んでいたのだろう。
経営悪化の原因は、過剰生産によるものだと伝えられているが、恐らくはこの10億円という少ない売上高に見合わないファッション雑誌への記事広告出稿量の多さも大きな要因の一つになったのではないかと考えられる。
個人的には、あのファッション雑誌への投資量は、売上高100億円前後のアパレル企業でなければ見合わないと見ており、10億円ぽっちの売り上げ規模の企業にしては全くの過剰投資だった。
逆にいうと、売上高10億円という小規模アパレルでさえ、後先を考えずにファッション雑誌に投資すれば一大ブームを作ることができたということである。これが2010年以前までのアパレルビジネスの一端だともいえる。
裏話を一つすると、この当時にはブームが過ぎ去った某ビンテージジーンズブランドの名物企画マンが、このwjkの外注デザインを担当しており、当方に「本業はあきまへんけど、wjkはよう売れますわ~」と話していたことを鮮明に覚えている。
しかし、wjkのブームも長くは続かなかった。2010年になるとファッション雑誌でもあまり見かけなくなり(今から思うと多分カネが続かなかった)、業界でも話題に上る回数はメッキリ減った。
2010年代半ば以降はビンテージ風加工もすっかり逆トレンドになると商品の作り方も変わり、このwjkも何の特徴も無い高いだけのカジュアルブランドとなり埋没し忘却されるようになった。
当方が30代半ば以下への知名度が低いと書いた理由は、2010年代以降のこの露出の少なさである。
現在は、モリリンがブランドを継続しているが、恐らくかつてのような知名度に復活することはなく、その他大勢のカジュアルブランドとして細々と埋没しながら続いていくのではないかと思う。
wjkの興隆から凋落、モリリンへの譲渡という経緯を見ると、良くも悪くも「アパレルらしいアパレル」だったと感じられる。あんなアホな手法で成り上がって凋落して行くブランドは2020年代にはもう現れないだろう。ある意味で「昔ながらのアパレルの気風」を体現した最後の会社だったのではないか。そんなふうに思う。
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comment
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BOCONON より: 2022/05/26(木) 6:44 PM
『メンズジョーカー』はまだしも 〈『レオン』が こんな風に煽っている=多分ヒジョーに多額の広告費注ぎ込んでいる〉 ようなブランドって ”とおりすがりのオッサン” 氏も言うように誰が買うのやら,僕にも理解の埒外でありますね・・・って,そりゃ 〈イタリアびいきでピチピチTシャツとか好きな人たち=ちょい悪オヤジ的格好がしたい割合高収入な人たち〉 に決まっているか。
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https://kaeruleon.jp/blogs/contents/wjk-202205「芸能人にも愛用者が多い」ってハナシもあったけど,それが向井理とか水嶋ヒロとか,いささかビミョーな面子なのが笑えますねw
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/25(金) 3:18 PM
「キムタクが着てた服やら小物が売れてた時代の残党」ですなぁ
このグループは経歴が決まっていて
1.デザインの勉強をしたことはない
2.けどDCブランド時代にアパレルの社員だった
3.もちろん大好きなのは服飾ではなくお金wwと判を押したようにオソロイな連中でした
んで、過去の焼き直し物にペンキを垂らして10万とか
直営店で朝10時に販売開始な限定No入りTシャツ3万
なんて商売をやっていましたそしてそれを時代の寵児みたいに持ち上げたマスごみww
しかも時代はITバブル
ごく一部の層のウハウハ・イケイケ度は
バブルの比じゃなかったですあのとき、原宿に集っていたバカちんどもは
みんな、死んでしまったのでしょうか・・(ヒロシ風ww)かねもちリーマンを捕まえられたスーツ屋などは
まだ生き残っているみたいですでも、天下のいとちゅ~様も今では
スーツで仕事してないですからねぇ・・・・
『「M66 field jacket」ってなんだよ?米軍のフィールドジャケットはM65だろよ。』とか思ったら、wjkが出してたオリジナルがM66なんすね。ググったら11万円とか出てきたw
どういう人が買ってたんだろう?