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南充浩 オフィシャルブログ

メタバースでの買い物経験は3%しかいないというアンケート結果

2022年5月23日 ファッションテック 1

アパレル業界は元々、一過性のトレンドで成り立っているようなところが大いにあるから、熱しやすく冷めやすいし、まだ正体不明の新しい物に我先に飛びつく傾向がある。この新しい物好き体質はアパレルに限らず、メディアやIT界隈も同様である。

数年前、「哲学」論争にまで発展した「ノームコア」。今、誰か「ノームコアとは」とか必死でやっている人がいるのだろうか?アパレル業界のほとんどの人間はノームコアという単語すら忘れ去っているのではないか。

2017年・18年頃に異様にヒートアップしていた「人工知能(AI)」だが、今、アパレル業界ではほとんど忘れ去られている。当時は「AIによる流行予測」とか「AIによる需要予測」とか「AIによる在庫削減」とか様々なサービスが乱立していたが、今、残存しているAI会社はほんの一握りである。

そして、メディアが過剰に持ち上げることも無くなった。当たり前である。AIを導入して画期的に需要予測が的中したり、在庫削減が削減できたり、流行予想が的中したという話しは2022年現在でも聞いたことがないからだ。

AIに存在価値が無いと言っているのではない。今後何十年後か何百年後かにはAIによる需要予測とかそういうものが可能になるのかもしれないが、今現在すぐにそんなものが実現するはずもない。

自動車の完全自動運転だって同様だ。いまだに完成していない。様々な研究で、毎日決まったルートを走る自動車の完全自動運転は可能だとされているが、日々の行動であっちにいったりこっちに行ったり、初見の道を行ったりというのは、まだ技術的には不可能だとされている。

新技術やそれを研究することは重要だが、今すぐに何でもできるというふうにダボハゼ的に飛びつくのはアホのやることだし、それをできるかのように吹聴して売りつけることは詐欺にも近い。

 

さて、そんな宿病のような体質を抱えるアパレル業界(メディア業界も)だが、最近は「メタバース(仮想空間)」にヒートアップしている輩とそれを煽る輩が目立つ。

繰り返すが、この手の新技術を開発することは尊いし、研究を続けることも尊い。

しかし、それを「〇年後には〇十兆円の市場が~」と煽るような輩は詐欺にも近しいと感じるし、あまり詳しくもないのに騒いでいるアパレル業界人はまた養分にされてしまうだけのことである。

実際に一部界隈でヒートアップしているメタバースだが、実際はどれほどの状態なのかというと、

メタバースの利用経験は約5% 利用経験者のうちメタバース内で6割が買い物・課金経験/MMD研究所調査|ECzine(イーシージン)

という状況にある。

利用率は5%で、買い物・課金経験はそのうちの6割、ひいては買い物・課金経験のある人は3%に過ぎないという状態にある。しかも「買い物・課金」なので買い物よりも、実際はゲームや音楽への課金の方がメインかもしれない。ちなみに当方もポケモンGOに課金したことは6年間で3回くらいある。

 

この結果には思わず、カルロストシキばりに「君は3%~♪」と歌わずにはいられないほどである。

 

18歳~69歳の男女7,255人を対象に、メタバースの利用状況について聞いたところ、「全く知らない」が56.6%ともっとも多く、次に「言葉は聞いたことがあるが、サービス名や内容は知らない」が19.5%、「サービス内容は知っているが、利用したことはない(利用を検討するまでに至っていない)」が10.3%だった。

 

とある。全く知らないという人が57%弱と過半数以上を占めているということを考えると、メディアや一部のアパレル業界人がヒートアップするほどの認知度すら得られていないという状況がわかる。

言葉は知っているが内容は深く知らないが20%弱、内容は知っているが利用していない・利用を検討していないが10%もいるということも併せると、そこまで大きな市場とは到底言えないだろう。

 

18歳~69歳の男女7,255人を対象に、興味のあるメタバースのジャンルを聞いたところ、「ゲーム」が19.9%ともっとも多く、次に「音楽・ライブ」が17.8%、「ショッピング」が12.5%となった。

 

とある。メタバースで利用したいジャンルは1位ゲーム、2位音楽・ライブというのはこれは納得できる結果である。例えば、当方もオンラインアクションゲームをその昔、暇つぶしにやったことがある。現在のフォートナイトなどはやったことがないが、たしかにゲームならメタバースをやる意味はあるだろうと思う。音楽やライブも同様だ。当方はライブには行かないし、行きたいとも思わないが、メタバースで利用したいというニーズは理解できる。

アパレル業界人の一部がワクテカしているのが諸ピングだと思うが、わざわざメタバースで買わずとも普通のネット通販で十分で、ゲームや音楽・ライブに比べるとメタバースであることの意味は大衆にとっては低くなるのは極めて当たり前ではないかと思う。

 

2018年頃、アパレル業界では「ネット通販」がヒートアップしていた。まるで「ネット通販さえやれば必ずどんなブランドの服でも売れる」かのように信じている人・主張している人も少なからずいた。しかし、冷静に考えれば実店舗で売れない服がなぜネットなら売れるのか。もちろん、見てもらえる人数は大幅に変わる可能性があるとはいえ、実店舗を全国に多店舗展開しているブランドなら、その人数に大差はないだろう。

結局、20年はコロナ禍でネット通販が一様に伸びたが、21年、22年は伸び悩みや前年割れのブランドも少なくない。当たり前である。ネット通販なら何でも売れるわけではないし、乱立すればそれだけ客を奪い合うことになるから売上高も分散する。

メタバースも今は目当たらさがあるが、中長期的には「ネット通販」と同様に陳腐化し、乱立し、優勝劣敗の格差が生じることになるだろうし、かつて「セカンドライフ」という仮想空間がさんざん持ち上げられておきながら、あっけなくポシャッたことを考えてみても、同じ轍を踏む可能性も否定できないと思っている。

利用する側・導入する側としては注視することは必要だが、今の時点で必要以上にヒートアップする必要は無い。逆に過剰にヒートアップすれば、詐欺にも近しい業者にむしゃぶりつかれることにもなりかねない。

 

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 comment
  • お気楽ニャンコ より: 2022/05/23(月) 3:28 PM

    メタバースは今後どうなっていくかには関心があります
    ただ、私には正直まだよく分からない部分の方が多いですね
    旅行や外出好きなアクティブ系なリアル人付き合いが充実している人に浸透するかどうかは疑問です
    人との交流はしたいけれどなかなか難しかったり面倒といった人には魅力があるとは思います
    見た目に自信がなかったり病気や身体的に不自由を抱えている人にもメリットがあると思います
    言語や人種のハードルが現実世界よりも低く、環境さえ整えば人と少ない労力で繋がれて、そして『縁を切る事』も出来る
    ただ…まだまだ法整備の問題やハッキングの問題
    仮に中のデータが盗まれたり消えたり場合の補償問題等々…
    ハマる人には仮想空間はすんなり受け入れられるだろうし、現実世界よりも住みやすいと思う人も多いと思います
    ただ、こういった分野はビットコインしかり、今後どう変化を遂げるのか、どのように使われるのかが予測がつきにくいのが投資にはハイリスクな点だと思います
    先々…相続や財産分与なども仮想通貨や仮想世界まで含めるとなると…
    半端じゃあなくややこしく複雑になる予感…
    メタバース内のファッションはあくまで仮想ですから
    常に同じ洋服でも裸でも問題はないです
    リアル世界の服好き同等に買う人は更に少数だと思います
    私なら少々高かったとしても(仮に数万円)気に入れば買うと思いますが…その一着を飽きるまで着せておくと思います
    そう考えると…
    仮想空間のでコンスタントに売り上げを出すのは簡単な事ではないと思います

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