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南充浩 オフィシャルブログ

長所と短所は裏表 ~苦境に立つ商社のアパレル向けOEM生産~

2022年5月19日 トレンド 1

繊維・衣料品業界を回っていると、だいたい同じような情報を手にする。

それをどう捉え分析するのかは個人個人によって異なる。

 

《めてみみ》痛み分け | 繊研新聞 (senken.co.jp)

まあ、見出しだけでは何のことやらさっぱりわからないが、本文を見てみよう。

商社の衣料品OEM(相手先ブランドによる生産)事業が苦境に立っている。昨年より〝マシ〟だがコロナ禍前の水準には届かず、利益面が厳しい。

前期はベトナムなど東南アジアの都市封鎖、原材料や輸送費の高騰、コンテナ不足による物流停滞などが響いた。そこに急激な円安、中国での都市封鎖による供給網の分断が追い打ちをかける。「三重苦どころではない。経験したことがないほど様々な要因が重なり厳しい」状況。特に低価格ゾーンで利益確保が困難だ。ある繊維商社の社長は「このゾーンでは価格転嫁ができていない。今後受注をお断りすることも出てくる」と話す。

どこも不採算取引を続けられる余裕はない。取引先の業績も良くなければ痛み分けで、苦しい時期を何とか一緒に乗り切ろうとなるが、大幅増益を達成した取引先もあるだけに「やりきれない」のが本音ではないか。

 

とのことで、これは当方ごとき底辺の業界人でも耳にしている内容と同様である。

商社(総合・専門ともに)はこの20年間くらいは繊維原料や生地売買ではなく、洋服ブランドからのOEM生産請負事業で業績を伸ばしてきた。

これは、俗に生地問屋と呼ばれることの多い専門商社も同様で、大手アパレル各社が企画部門や生産管理部門の人員を削減し続けた結果、生地だけを見せられても製品企画ができないという状況になり、生地だけを見せても取引が決まらないということが常態となった。(要するに、企画担当者は生地を見ても製品のイメージがわかないので取引が成立しない)

そのため、生地問屋は自社の生地を使った製品サンプルまでを展示するようになり、この生地を買ってくれれば製品作りまでを請け負いますよ、というスタンスでアパレル企業へ臨むこととなった。それが功を奏して、各商社はOEM生産請負が繊維事業の主力となってしまった。

コロナ禍以前にも細かい業界内の問題は様々あったが、大枠は順調に推移していた。

ところが、コロナ禍による営業時短や営業自粛が国内外で続くとともに、そこから派生したさまざまな値上げや不足が相乗効果を発揮して、これまで主力だった商社のOEM事業が一転して苦境に陥ってしまった。

メリットとデメリットは表裏一体、禍福は糾える縄の如し、とはまさにこのことである。

 

当方のつまらないこのブログにも毎日様々な方から様々な情報をお寄せいただく。感謝するほかない。

そういう情報の中にこんな内容の物があった。少しボカしてお伝えする。

某専門商社の担当者からの情報によると

 

「当社が手掛けているワークマンの某商品ですが、コストが合わず1枚あたりだいたい300円の赤字になっています。発表されていた販売枚数の6分の1程度で生産打ち切りになる可能性が高い状況です」

 

とのことだった。

先のコラムとほぼ同様の内容である。

ワークマンの商品というのは基本的には何万枚単位の生産になるから、この「某商品」が10万枚の生産だとすると、この商社は全数量を生産すると3000万円の赤字ということになる。20万枚なら6000万円の赤字ということになる。

概して商社というのは売り上げ規模が数百億円以上ある大手が多いが、この世界的な構造不況の中、3000万円とか6000万円とかのレベルの赤字を出すことはリカバリーは可能だが、痛いだろう。生産打ち切りの見通しとなることも当然である。

 

ただ、衣料品の生産に詳しくない人からすると、ワークマンも大手だが、商社も大手なので

「大手商社なら、ワークマンは大手といえども条件が合わない商品は最初から突っぱねることも可能なのではないか」

と考える方も多いだろう。

しかし、繊維・衣料品業界の現状ではそれはなかなか難しい。ワークマンからの圧力が強いというわけではない。

個人経営レベルのOEM請負業なら1社あたり50枚~100枚という受注でも十分に食える。しかし、商社ともなると売上高が数百億円以上になるため、これを維持するために取られねばならないオーダーも「数量」が求められる。チマチマと1社あたり50枚の生産請負なんてやっていられない。

となると、最低でも1型あたり1万枚くらいの生産オーダーを取らねばならない。

しかし、現在の国内アパレルで1型1万枚以上の数量を発注できる企業は限られている。ファーストリテイリング、しまむら、良品計画、などほんの一握りしかない。ワークマンはそのうちの貴重な1社なのである。

商社の、特に現場担当者とすればノルマを果たすためにもワークマンのオーダーを最初から突っぱねることはなかなかできない。ワークマンを見逃せば、その代替になるような企業を見つけることの方が難しい。

となると、少々不利な条件がそろっていてもとりあえずやってみるということになる。

 

為替相場は1年くらいで変化する可能性は非常に高いから目先の円高・円安に一喜一憂しすぎる必要はないが、それ以外の要因はどう変わるのか予想もつかない。

また中国の過剰ロックダウンも近々終わるという保証はなく、もっと長期間続く可能性も決して低くはない。それも加味して考えると、商社のOEM事業の苦境は長引く可能性も高い。

これまで業績を支えてきたOEM事業が一転して苦境に陥るとは皮肉なものだが、かといって、90年代以前のアパレル企業のように今更、社内に企画担当者や生産管理担当者をふんだんに抱えるということも実現不可能に近い。OEM事業者にアパレル各社が頼り過ぎたツケが今、回ってきているのかもしれない。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/05/19(木) 1:19 PM

    金属加工業のダメダメ中小企業で見積りとかやってますが、前任者の見積りがテキトーで安過ぎてビックリすることが結構ありますわ。完全に赤字の製品とかもあったりして、そんなのに限ってリピートで延々注文が来たりするんですよね。(って、クッソ安いから、いっぱい注文が来るんでしょうけどW)
    あまりに酷いのは値上げ交渉したりしてますが、ホントにテキトーな受注をするアホは害悪でしかありませんわ。もっとも、そんなダメ会社だからこの前、デカい会社に買収されちゃいましたが。元の社長は、「赤字の製品なんか一個もない!」と根拠なく豪語してたバカでしたw
    デカい商社さんだと、さすがにうちみたいなテキトーな値付けはしてないと思いますが、デカいとデカいなりに難しいところがあるんですね。でも、赤字なのを認識できて生産中断できるところは、しっかりとしてますね。
    企業再生のコンサルタントの話とか聞くと、ダメ会社は赤字製品あること自体の認識ができていない所も多いらしいです。むしろ、赤字だと思いこんでる枯れた製品が、実は一番利益率高いとかいうこともあったりするそうでw

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