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南充浩 オフィシャルブログ

SDGSやサステナブル系の衣料品は大手企業が潤うほどには売れにくいという話

2022年5月17日 トレンド 1

業界メディアでは、ほぼ毎日、SDGS、サステナブル関連の記事が必ず数本は掲載されている。いわゆる環境対策系の施策なのだが、SDGSの17の目標のうち、環境問題だけに異様にフォーカスを当てすぎていて気色悪いことこの上ないということは、以前からこのブログでも書いている。

先日、某大手肌着・靴下メーカーの決算会見に出席させてもらったが、今年度以降の事業計画がSDGS、サステナブルの連発・オンパレードで途中でアホらしくなってしまった。

そんな、環境施策に全振りする業界メディアとアパレル企業首脳陣だが、実際の現場ではどうかというと、素材メーカーや生地問屋、大手アパレルメーカーの現場担当者から部長クラスまでに聞くと「SDGSとかサステナブルとか叫んでも実際は期待通りには売れてないです」とか「上がギャーギャーうるさいからとりあえずやってます」とか、必ず答える。

一般的に素材メーカーや生地問屋、大手アパレルメーカーは個人・零細ブランドに比べると、目標とする販売数量や売上金額が大きいため、同一の感覚では決して語れないのだが、期待するようなロット数・売上金額には到達していないというのが、各社共通の実情だといえる。

 

このアンケートもそれを反映しているといえる。

 

SDGs消費、経験者は約3割、価格は3割増まで許容…購入品は食品・雑貨など | 通販通信ECMO (tsuhannews.jp)

 

  • 「SDGsの認知度」は46%

  • 具体的な購入品目は「食料品」が65%でトップに

  • SDGs消費での価格増は「3割増」が最多

 

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(株)と立教大学教授の斎藤明・研究室が10日発表した『SDGsを意識した消費活動』の調査結果によると、SDGsを意識した消費経験があるのは約3割。「SDGs消費」で価格の増加については「3割増まで」が最多だったが、若年層では「5割増まで」が最も多く、コスト負担への許容意識が高いことが分かった。

 

とのことである。

会員ページでは、男性よりも女性の方が購入者割合は多いということも書かれてあり、購入品目としては食料品がトップで、雑貨類も多いということになっているが、衣料品はそこまで多くない。

 

当方、大学では社会学部社会学専攻で、そんなに勉強熱心ではなく、酒を飲むために大学に通っていたようなものだが、授業にはほとんど出席していた。

そのうちの一つに社会統計学というのがあったのだが、この授業では、アンケートはどれほど結果を操作しやすいかということが説明されていた。

設問の作り方や答えさせ方によって、結果を誘導できることが多いということである。この授業を聞いてからは各種のアンケート結果を全信用することはなくなったのだが、まあ、それを割り引いても幾ばくかの真実は含まれているだろうと思ってアンケートを眺めている。

今回のアンケートも全信用に値するものではないかもしれないが、購入率や購入品目、価格許容などはある程度の事実に近いのではないかと考えられる。

まず、知名度・認知度は高い。これだけ連日連夜メディアで垂れ流されていれば、ほとんどの人間は理解度の深さは別にして言葉くらいは覚える。

次に購入者が全体として約3割というのもそれくらいだろうと思う。知人や親類にそんなにSDGSやサステナブル商品を買った人間が存在しないからだ。

「知ってるけど買ってない」とか「知ってるけどたまにしか買わない」とか、その程度が一般大衆の反応だろう。自分もその一人である。

次に、衣料品はあまり買われずに食料品・雑貨が多いということは、商品特性と価格によるところが大きいのではないかと思う。

食料品でSDGS類がそれなりに売れるのは、2つの大きな理由があると考えられる。

 

1、直接体内に入れる物である点

2、一部の超高級品を除いて単価が安い点(何万円もするような野菜は数少ない)

 

直接体内に入れるため、神経質になる人はなる。これが何十年間も偽医学や偽健康食が撲滅されない理由だろう。なるべく体に良い物を食べたいと思ってしまうことはある面で仕方がない。

そして、価格で考えると、例えばSDGSやサステナブルっぽい打ち出しをした野菜や果物、お菓子類があったとして、通常のスーパーマーケットの価格より5割増しや2倍になったとしても、一つ数百円から1000円くらいである。この程度なら買ってみようかという気にもなる。

しかし、衣料品の場合は、嗜好性が強く、単価が高い。

まず、SDGSやサステナブル系で作られたと主張する服でも、自分の好みでなければわざわざ買う人はいない。自分の好みでない服は単なるゴミである。

次に価格だが、1000円の野菜は高級品の部類だが、1000円の服は安物である。SDGSやサステナブル系の服は、製造コストから考えて高額にならざるを得ない。

先日、某サステナブルガーの新進ブランドのサイトを見たのだが、ユニクロのレディースにも並んでいるようなベーシックな合繊使いの服が1万円台半ばの価格で売られていて、俺なら絶対に買わないと思った。

値段がもう少し安ければ試しに買ってみようかということになるかもしれないが、1万5000円とか1万6000円を出してまで試す気には全くならなかった。

 

そして、許容価格についても平均すると3割増だが、若年層は5割増までOKというのもだいたい実情に近いのではないかと思う。

多くの人はSDGSやサステナブル系の商品に対して3割増くらいまでの価格なら我慢するということで、若年層は5割増まで許容できる人が多いとのことだが、逆に言うと、若年層でさえ2倍増や2・5倍増は許容できないということになる。

いくらSDGSやサステナブル系(環境系)の商品とはいえ「それなりの経済合理性」が無ければ大衆は買わないのである。

これらを総合して考えると、大手が求めるほどの数量や売上高は、環境系に全振りした衣料品では到底稼げないということになる。

対外的・社会的なポーズも必要なのだろうが、大手の環境系アピールへの全振りは消費者にそれほど響いていないようなので、違う施策も並立させた方が賢明ではないかと思う。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2022/05/18(水) 7:35 PM

    先日東武百貨店1階のエレベーター脇でSDGs的商品のワゴンセールのようなものをやっていて,ちょっといい感じの女もののバッグがあったので手に取って見ていると,販売員女子が声をかけてきた。

    彼女:そちらは電車のシートをリメイクした商品なんですよー。
    ぼく:ふーん。これは悪くないデザインだけど,値札がついてないな・・・この手の商品てだいたい結構お高いのよね。
    彼女:そうですねー,どうしても手間がかかりますので…そちらは3万〇千円ですね。
    ぼく:(高えな,オイ)うーん,そうか。まあ今日はちょっと目についたんで寄ってみただけなんで,また来ますね。
    彼女:どうぞよろしく。

    言うのも大人げないけど,手間かけて高くつく商品作っているということはその分多くの〔石油~電気使う=CO2出す〕という事だから,明らかに本末転倒してますね。だいいち南さんもおっしゃるように,こういうものを買う奇特な人がそんなにいるとも思えない。正直少なからず馬鹿げている気がする。男女兼用服とかも。
    僕も相手かまわず「正しい事を言えばみんなわかるはず」と考えるほどナイーヴではないつもりだし,世間的世界的にそういう方向に行っているんじゃ致し方ないとは思うのですが,それにしてもなあ・・・

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