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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品OEM業者の性質と存在意義を理解しないまま使っている?

2022年5月16日 製造加工業 0

ウェブ空間を眺めていると毎年無数の洋服ブランドが誕生している。

洋服ブランドはどれほど高尚なコンセプトを掲げていようと、よほど斬新なビジネスモデルを確立した少数を除くと、基本的には「服」という「物」を売ってナンボであるから、「服作り」というのは、ブランドの生命線の一つだといえる。

で、この「服」の作り方だが、無数の新ブランドとはいえ、大きく2つに分かれる。

 

1、OEM・ODM業者(商社の製品部門も含む)にデザイン・パターン作りの段階から丸投げ

2、自分達でデザインや型紙は用意して縫製を工場に直接依頼(縫製の部分だけをOEM業者に依頼という場合も)

 

この2つである。

どちらが正しくどちらが間違っているという問題ではない。

どちらのやり方でも売れて儲かればそれが正しい。ただ、新しく生まれるブランドは1である場合が多く、2でスタートできるブランドは、物作りに長けたブランドで勤務した経験がある人に限られている。

特に販売員やインフルエンサーなどがオリジナルブランドを開始する場合の99%は1のやり方である。

 

衣料品業界というのは、極度に業界内製造インフラが整備されており、乱立するOEM・ODM業者を頼れば、誰でも簡単にオリジナル商品を作ることができる。(ただし継続できるかどうかはわからない)

そのため、OEM・ODM業者が何のために存在し、介在している(させている)かを理解できないままに衣料品ブランドを開始してしまう人も珍しくないようだ。

先日、新進ブランドのこんな内容のツイートを見かけて唖然とした。

当方には別段攻撃したいという意図はないから、ほぼ同じ内容に意訳するとこんな感じだ。

 

縫製工場さんに連絡してOEMさんに怒られた。

縫製の現場を発信したかっただけなのだが。

 

まあ、ざっくりとこんな内容だ。

生産のことに対して良くも悪くも熱心なイメージのブランドなのに、OEM屋を介在させているところに驚かされた。介在させていなければ、わざわざOEM屋がクレームを入れてくる確率は著しく低い。

中には、全然タッチしていないのにクレームを入れてくるOEM屋も存在するが、そんな輩のようなところはかなり少数である。

普通に考えると、この新進ブランドがOEM屋を通常は介在させていたにもかかわらず、動画撮影とか画像撮影とかがしたくて縫製工場へ直接連絡してしまったのではないかと考えられる。

そりゃ、日常的にOEM屋を通じて商品を生産していたのなら、工場へ直接連絡をすれば、そのOEM屋は普通は激怒する。どんなに優しいOEM屋でも嫌味の一つくらいは言う。

別にアパレル業界の体質が古いわけでも何でもない。

製造工場へ直接連絡するなら、最初から工場と直接やればいいということになる。衣料品業界に限らず。

 

メディア業界でも広告出稿やノベルティグッズの手配などはだいたい広告代理店を通して行われる。

正直、広告代理店とのやり取りがめんどくさくて邪魔だと感じることもあるが、その一方で、メディア側との折衝やノベルティグッズの生産などのこまごました調整はすべて広告代理店がやってくれる。

広告代理店が邪魔なら、メディアとのこまごました折衝、ノベルティグッズの生産手配などすべてを自分でやらなくてはならない。例えばノベルティグッズの生産工場にいきなり直接連絡すれば、広告代理店から嫌味くらいは確実に頂戴することになるし、自分が広告代理店担当者なら最低でも嫌味くらいは言う。

 

またウェブサイトの構築だって、全社が直接ベンダーとやっているわけではあるまい。中間にプロデューサーやディレクターを入れていたり、そういう性格の企業を挟んだりしているだろう。

その中間を飛び越えて、いきなり直接プログラマーに連絡をすれば、そりゃ中間業者は怒る。怒られて当然である。そんなに直接やりたいんなら、全ての工程を直接やれよ、ということになってしまう。

 

 

では、OEM屋にクレームを入れられずに縫製工場へ直接連絡するにはどうすれば良いかということになるが、OEM屋に最初に確認を取るのである。

 

「発信の目的のために工場の動画撮影(画像撮影)させてもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

と。

なんなら

 

「縫製工場さんへの撮影のお手配をお願いできませんでしょうか?」

 

くらいまでやってもいいだろう。

 

一口にOEM屋と言ったって担当者の性格や個性は千差万別だから、これでもNOという担当者だっているだろうが、ほとんどの担当者は渋々も含めてOKないし何らかの協力はしてくれるだろう。(当方の経験上)

この手の配慮は別に衣料品業界に限らず、他の業界でも当然必要だと思うのだが、それすら理解できないままに洋服ブランドを開始して、10年以上も活動を存続できるのだから、衣料品業界はかなり優しいのではないかと思ってしまう。

 

それにしても、製造業寄りの大層、高尚な理念やコンセプトを掲げたブランドであるにもかかわらず、OEM屋を介在させていたということに驚きを隠せないし、そもそも周囲が思っているよりもはるかにイージーな商品作りをしていたのではないかとすら邪推してしまう。

先日、ニット(いわゆるセーター類)のOEM業者に専門知識や工場知識をレクチャーしているという方にお話を伺ったが、洋服ブランドだけでなく、OEM業者さえも物作りがイージーになってきている。そのOEM業者に依存している洋服ブランドはそりゃ物作りがさらにイージーになってしまうことは無理からぬことで、コンセプトや理念ばかりが高尚で壮大だが商品作りはイージーというブランドは今後さらに増えざるを得ず、危うさしか感じない。

 

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