MENU

南充浩 オフィシャルブログ

インフルエンサーブランドが継続しにくい理由

2022年5月6日 トレンド 0

また連休の谷間である。

5月2日と6日さえ有給休暇か何かで休んでしまえば10連休という人もいるだろう。マンボウも発令されていない長期休暇は3年ぶりのことになるので、ニュースによるとどこのスポットも人出が多かったようだ。

こういうときに独居していると助かる。どこにも出かけないで済むからだ。生来、人ごみは嫌いである。

 

 

先日、インフルエンサーの知人がブランドを廃止するという知らせがあった。

この知人に対して何の悪感情も持っていないし、攻撃する気もないということを前提として「継続する」ということの難しさを改めて感じた。

事細かに内部事情を聴いたわけではないが、外野から見てきた印象でいうと、

 

1、インフルエンサー個人の単品提案

2、商品の提案基準はインフルエンサー個人の好みに準拠

3、自身のファンや関係者への販売がほぼ100%というsmallビジネス

 

という感じである。

例えば、5月には半袖ポロシャツを提案し、6月にはTシャツを販売する、という具合である。

正確な活動年数は数えていないが、衣料品の企画・販売(いわゆるインフルエンサーブランド)をしていた期間は3年間くらいだっただろうか。

 

はっきり言うと、アパレル企業としては、この体制で10年、15年と業務を継続することは不可能であり、それは活動当初から一目瞭然だった。

ただ、一口にブランドと言っても、継続する形態は様々であり、最初は完全なる個人の思い付きでも、企業としての体制をある程度整え、10年以上継続することもあれば、徹頭徹尾個人プレーを貫いて短命に終わる場合もある。

いずれを選択するかは事業主の判断一つである。

 

ただ、このインフルエンサーのやり方では5年以上は継続できないだろうと当方は見ていた。

理由は

 

1、アイデアが続かない

2、アイデアが枯渇するから事業主が飽きる

 

というのが、大きな理由である。

 

個人が生み出せるアイデアなんて、よほどの数少ない天才を除いては、バリエーションは少ない。大ヒットを飛ばした小説家や漫画家だって、だいたいは似たような話しか作れない。

まったく異なった作風を複数持っている作家は珍しい。

衣料品に対するアイデアも同様だと当方は思っている。どうせ個人のアイデアなんて3種類くらいしかなく、シーズンによってその味付けを変えるくらいしか普通の人間にはできない。

当方は凡人以下だが、アパレルの企画担当者も大半は凡人であるし、インフルエンサーもこと衣料品企画能力は凡人がほとんどだから、当然アイデアの引き出しは少ない。

となると、毎月1つを企画提案しても、年間で12種類必要になる。2年で24種類、3年で36種類が必要ということになり、アイデアは長くても12回、短ければ5回目か6回目で枯渇してします。

2年目、3年目は以前の企画の焼き直ししかできなくなる。

そうなると、個人事業主だと、嫌気がさして「辞めるわ」という話になるのも当然だろう。アイデアが次から次へと湧いてきて止まらないなんていうのは、手塚治虫レベルの天才しかいない。そして手塚治虫レベルの天才はほとんど生まれない。

 

通常のアパレル企業は、これをルーティン化することでブランド活動を継続できている。

昨年実績をベースにしつつ、そこに新柄や新色を加えるというのが、オーソドックスな手法である。オーソドックスな手法はともすると「つまらない」「新鮮味がない」と揶揄されるが、世の中のほとんどを占める凡人にはオーソドックスな手法を身に着けることが最も効果的な安全策となる。

ただ、あまりにも安直に前年踏襲を長年やり続けていると、変わり映えしないということで既存客は離れ、新規客も獲得できないという最悪の事態に、ファッションブランドは陥りがちである。衣料品ビジネスの難しさである。

 

現在、数多くの、それこそ当方ごときでは把握しきれないほど多くのインフルエンサー個人ブランドが乱立している。それだけオリジナル衣料品を作る障壁がゼロに等しいまでに無くなったということになるが、このうち、10年後も継続できているブランドは1割以下もないだろう。

もちろん継続したいなんて思ってもいない個人ブランドも多数あるだろうし、儲かったらさっさと逃げたいと思っている個人ブランドも多いだろう。

それはそれで個人の好みだから構わないが、もし継続を望むブランドがあるなら、マーチャンダイズを真剣に考えることをお勧めする。

年間の商品計画を立て、既存の焼き直しを何割にして、新規企画を何割入れるのか、を毎年考えるという作業をやってみてはどうか。

個人の好みとノリと雰囲気だけで商品企画できるのは、せいぜい1年か2年くらいである。3年目以降になると、アイデアは枯渇し、やっている側にとっても新鮮味が感じられず、モチベーションが低下するだけである。

 

今回、やめると決めたインフルエンサー氏の次の活動はどうなるのか、興味を持って見ているが、衣料品ビジネスの難しさを改めて感じさせてくれたのではないかと思っている。

今も盛んに信者にオリジナル衣料品を買わせている某インフルエンサーもいるが、継続したいと考えているなら、商品計画を毎年立てることをお勧めして連休の谷間ブログを終えたい。

 

仕事のご依頼はこちらからお願いします~

 

SERVICE

 

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ