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南充浩 オフィシャルブログ

いくら「本物」だろうと不便な製品なら大衆は支持しない

2022年5月2日 ジーンズ 4

「古き良きナンタラ」がメディアや業界では重宝されるものの、一般消費者、大衆は古き良きナンタラよりも機能的にアップデートされた商材を好むということが多い。

まあ、当方もほとんどこだわりがないのでその一人ではあるが。

 

先日こんな記事が掲載された。

デニム大手のカイハラが国内の設備投資に注力 21年度は売上高・利益微増 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

デニム大手のカイハラは、生産効率化に向けた国内の設備投資や、スポーツ、雑貨など新規用途の開拓に力を入れている。22年2月期は売上高、利益ともに微増で着地、コストダウンに向けた取り組みが収益に貢献した。

22年2月期は、上期が海外需要の回復で伸びたが、下期は海外向けが落ち着き、国内もまん延防止措置などで低調に推移した。綿花などの原材料や原燃料、染料薬品の上昇といったコスト上昇要因があったが、生産工程の集約といったコストダウンが利益面で功を奏した。

国内の規模を維持していくための設備投資も再開し、織機の入れ替えや工程管理システムを順次更新している。紡績から織布、染色整理加工まで手掛けているため、「全部を一元管理できれば効率は大きく上がる」(貝原淳之専務)と見ており、スマートファクトリー化を進めていく。一方、現在月産100万メートル規模のタイ工場は稼働が安定しつつあり、「安定受注、安定生産が定着すれば、(月産150万メートルの)第3フェーズも視野に入ってくる」として、早期の安定操業を目指す。

 

とのことである。

カイハラの近況が掲載されたのだが、比較的堅調なようで何よりである。

しかし、カイハラも含めて、基本的に繊維の国内製造加工業者は大手とはいえ、上場していないことが多く、業界紙に語られる業績が実態ではない場合も往々にしてある。もちろん、カイハラはそんなことはないだろうが、当方は少し割り引いて「公式発表」を眺めるようにしている。

これは全く別の業者だが、業界紙や経済紙には景気の良いニュースが報道されたのにその2週間後とか1か月後に倒産してしまうなんてことも珍しくない。

それほどにほとんどが非上場である国内の繊維加工業者の「公式発表」というものは額面通りに受け取ることは危険だといえる。

 

ところで、無料会員限定部分にこんな一節がある。

 

幅広い用途が見込めるインディゴで色落ちしにくいデニムも継続的に開発しており品質が向上、雑貨用途も狙っていく。

 

このところ、BMCやその他ブランドからも聞くのだが、カイハラは結構、新デニム素材の開発に注力しているようである。

2010年頃までのビンテージ系こだわりデニム一本脚打法からは脱却したように当方の目には映る。ここで言及されている「色落ちしにくいデニム」もその一つだといえる。

 

ビンテージ系デニム生地の特徴というと

1、色落ちしやすい、色移りしやすい

2、不均一な太さの糸を使用している

3、そのため、表面感に凹凸がありザラザラした硬い触感となる

4、14オンス強の綿100%であるため分厚く重く硬い

というあたりだろうか。

ジーンズ業界の人々やジーンズマニアからすると、理想のデニム生地ということになるが、2008年のスキニージーンズブーム以来、ストレッチ混デニムに慣れ親しんだ大衆からすると「不便である」と感じる。

ストレッチ混に比べると綿100%の分厚いデニムは硬くて穿きにくい。細身のストレートなら、動くのに四苦八苦する。そんな物をわざわざ穿こうなんていう物好きは少数派のマニアしかいない。

それと同様に、ジーンズ業界人やマニアからすると最大の魅力の一つである「色落ちしやすい」というのも大衆にとってはマイナス要素としか感じられない。

通常の衣類も確かに洗濯を繰り返せば色落ちはするが、もう少し均一に色落ちする。しかし。従来型デニム生地、ことにビンテージ系デニム生地は最初の濃紺が嘘のように色落ちして薄くなってしまう。

業界人やマニアからすれば「それこそが最大の魅力」ということになるが、さしてこだわりの無い大衆からすると「そこまで極端に色落ちしない方が良い」ということになる。

また、着用すると白いシャツや肌にまで青が移染するような「こだわりデニム生地」もビンテージ全盛期には珍しくなかったが、それとて、こだわりの無い大衆からすれば「不便すぎる代物」でしかなかった。そこまで気を付けて服を着たいなんていう人はそんなにいない。自分だってめんどくさいから嫌である。

その一方で、ジーンズ需要の伸びは止まったものの、デニム生地のトップス類や雑貨類・家具類が欲しいと言う人は増えた。デニム生地のあの見た目や雰囲気については大衆も好むところだといえる。

しかし、色落ちしやすい・色移りしやすい従来型のデニム生地ではこれらの用途には向かない。ことにソファーやクッションカバーなどの家具類・雑貨類には使用できない。

10年くらい前にも、ソファーやクッションにデニム生地を使いたいというインテリア業者からの要望はあった。だが、色落ち・色移りという欠点のために使用を諦めた業者も多々あった。

また、パンツ用途でもワンウォッシュの濃紺を長持ちさせたいという要望もあった。

だが、当時のデニム業界人やそれに心酔した通ぶった連中は

「色落ちしないのはデニムじゃない!!」

と頑なだった。

たしかにデニム生地の定義からすると「色落ちするもの」ではあるが、そこに需要があるなら「色落ちしにくデニム生地」も作ればいいじゃないか、みすみす商機を逃している愚行だと当方は思った。

結果、その手のこだわり派の主張より、大衆が望む色落ちしにくいデニム生地が、カイハラなどによって開発生産されるようになった。当たり前である。欲しいという人が多数いるのだから、作って売ればいいのである。

 

現在数多くの機能性衣料がある。

ストレッチパンツもその一つである。

例えば、バブアーのオイルコットン生地コートや、マッキントッシュのゴム引きコートを今時大衆が求めるだろうか。防水機能でいうなら、ゴアテックスを始めとしたそれらの類似商品の方がよほど高機能である。おまけに手入れも楽でイージーケア性が高い。

もちろん、わざわざ不便なバブアーやマッキントッシュが欲しいというマニアもゼロではない。しかし少数派である。少数派のためにゴアテックスやその他類似生地を生産しないというなら、それは考え方が間違っている。

生産をゼロにせよとは言わないが、少数のマニア向けはマニア向けとして少量作ればいい。

大衆はそんなマニアックなこだわりよりも便利さを求める。デニム生地も同様である。

これは何もデニム生地や防水生地に限ったことではない。他の機能性生地や機能性衣類も同様である。業界人はもともと愛好家が高じて業界に入っているから、ともするとマニア向け思考になりやすい。しかし大衆に売りたいのなら大衆に売れる物を企画し生産するのが理にかなっている。大衆にめんどくさいマニア向け製品を押し付けようとするのは最大の愚行だといえる。

 

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 comment
  • kta より: 2022/05/02(月) 12:35 PM

    色落しやすい「本物」とされるデニムはスマホが必携な現状だと、
    前ポケットにあの形で色落ちしてしまうのが結構なダサさ…

  • BOCONON より: 2022/05/02(月) 1:08 PM

    仰言る事はわかるし,別に反論したいわけでもないが,どうしても「それを言っちゃあおしめえよ」という気はする。
              ↓
    http://blog.esuteru.com/archives/9872414.html

    「機能性がなくて合理的でない/不便なものはいらない」と言ってしまえばネクタイどころか「革靴も要らない」「日本の夏に長袖のシャツや長ズボンなんてバカげている。Tシャツに半ズボン,サンダルでたくさん」「スキニーデニムなんてキュウクツなズボン穿く奴はアホ」と云った風な結論にしかなりますまい。でもそれじゃもうオシャレもへったくれもないし,しまいにゃ「アパレルメーカーなんて要らない。ユニクロGUワークマンさえあればOK」・・・って結論になりゃしませんか?

    「その通りだよ」と言われそうな気もするし,世の中事実上そういう方向に向かっている気もしますが,もしそうなら僕はもともとひとの服装には大して関心がないし,何も言わずにムカシトカゲのような珍獣的服装でこれからも行こうと思っています。

  • お気楽ニャンコ より: 2022/05/08(日) 4:58 PM

    別にイタリア製のバカ高い
    ペラい服を着ようが
    めちゃくちゃ高尚なうんちくのある製法の
    高級靴や腕時計を買おうが
    買いたい人、欲しい人
    そこに価値を感じる人は買うでしょう
    ちょっと近所に出かけるだけでもスーツを着用しようが
    人それぞれだと思います
    〆の一文に要約されている
    『大衆にめんどくさいマニア向け製品を押し付けようとするのは最大の愚行だといえる。』
    というお話だと思いますが…

  • BOCONON より: 2022/05/10(火) 12:51 AM

    > イタリア製のバカ高いペラい服
    > めちゃくちゃ高尚なうんちくのある製法の高級靴や腕時計
    > ちょっと近所に出かけるだけでもスーツを着用

    ちょっと何言ってるのか分からないです。
    僕はそういう極論ではなく,言いたいのは「(実際のところ大方は洋服見る目のない)大衆の目線に合わせた服ばかりじゃつまらないな。たとえば電車乗っている時見まわしてみても,ごくフツーのサラリーマンが着るようなフツーのビジネススーツでもちゃんと選べている男はほとんどいない。ストレッチ素材のスーツなどはそりゃ着心地は悪くないかも知れないし,洗濯機で洗えるスーツはそりゃ便利ではあるだろうけれど,そういう風合いが良くなくて長持ちはしないような服ばかりで “何だって売れればいい” というのではスーツが可哀想だし勿体ない」といった風な事であります。大きなお世話と言っちゃえばそれまでですが。

    一方確かにイタリア人のする事なら何でも真似したがったり「ウディ・アレンが『アニー・ホール』(やれやれ一体何年前の映画だ)の時着用していたものを忠実に再現したチノパン」なんてものを穿いた写真をupして悦に入っているセレショの販売員とかは「僕もそういうの嫌いじゃないが,今そういう自己満足気味な商売しても客は着いて来るまいし,実際セレショも落ち目だし」とも思いますが。

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