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南充浩 オフィシャルブログ

知名度が低いのに割高な商品は売れない

2014年4月7日 未分類 0

 現在、生地製造業、加工業者、縫製業者が下請けから脱するために、自社オリジナル製品を開発する動きが増えている。
下請け製造業としての立場から脱するためには、自社オリジナル製品を開発し、それを消費者へ直接販売することが効果的である。

けれども、多くの自社オリジナル製品開発の動きが上手く行っていないのもまた事実である。

こんな事例を目にしたので製造加工業者は自社の活動の参考にしてもらいたい。

近鉄百貨店あべのハルカス本店で、大阪の逸品を集めた催事が開催されている。
その中に、大阪の靴下製造工場が自社オリジナル製品を出品している。
現在、流行のランニング・ジョギング用のサポートソックスである。

長距離を走るランニング・ジョギングの際、衝撃吸収力を助けたり、土踏まずのアーチを支えてくれたりして疲れにくくするという靴下である。

足の部分によって編みの密度を変えるので、単純に均一な編みをすれば良いという商品ではない。
それなりのノウハウが必要となる。

さて、この製造業者の商品の販売価格は1600~1800円である。

一方、同じビルのウイング館にはSPA型靴下専門店チェーン「タビオ」のショップが入店している。
タビオにもランニングサポートソックスが販売されている。
価格は1500~1600円である。

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(タビオのランニングソックス 通販サイトより)

製造業者のブースは、サポートソックスが半分以上を占めて大幅に露出させているが、タビオは通常のソックスがメインでサポートソックスは一部で展開という感じで見え方はまったく異なる。

そういう見せ方の違いはあるが、正直、タビオを見たとき「製造業者のサポートソックスを拡販するのは今後かなり厳しいな」と感じた。

なぜならば、タビオの方がブランドステイタスは上で、消費者への知名度も圧倒的に高い。
そして、商品価格はタビオの方が100~200円程度とはいえ、割安である。

知名度の高いブランドが、若干割安で販売しているなら、多くの消費者はそちらを選ぶ。
わざわざ知名度が低くて、若干割高感のある商品を消費者が選ぶ理由は何もない。

製造業者は販売戦略を見直す必要がある。

今回はこの靴下製造業者を批判しているわけではない。
多くの製造加工業者が生み出すオリジナル製品が、これと同じようなことをしているので、他山の石としてもらいたいのである。

製造加工業者が自社オリジナル製品を企画製造販売するということは、その分野の先行ブランドと競合するということである。

その際、知名度が圧倒的に劣っているが、価格は先行ブランドよりも高めであっては、よほどの仕掛けを行わない限りそう簡単に売れるものではない。

今回は靴下を例示したが、ほかにもさまざまな商品で同じことが起きている。
たとえば、カジュアルシャツでもそうで、○○産地のシャツが1万数千円で、ラルフローレンのシャツが9800円なら、多くの消費者は当然ラルフローレンを買う。

消費者にとって「製造業者による自社開発商品」なんて背景はまったく関係ない。
ましてや「製造原価を積み上げていったらこんなに高価格になってしまいました」なんてことも消費者にとっては考慮する必要もない。

自社製品の開発には賛成するが、その場合、先行有名ブランドとどう競合するのかまでを考えておく必要がある。

知名度でも負け、コストパフォーマンスでも負け、となると、自社製品の強みは何か?

というところまで考えなくてはならない。

そうはいっても自社製品を作るというのは第1歩であるから、これは続けてもらいたい。
重要なことは自社製品を作ってそれで終わりというわけではない。
自社製品を作ってからの「どう売るのか?」「どう告知するのか?」が重要になる。
残念ながら、自社製品を開発したら終わりと考えている製造加工業社は少なからずある。

作ってからのことを考えなければ、多くの製造業のチャレンジは失敗に終わってしまうだろう。

製造加工業者には自社製品を見つめなおしてもらいたいと思う。

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