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南充浩 オフィシャルブログ

全品番を受注生産化することは難しいし売れ行きが伸びにくいという話

2022年4月25日 トレンド 0

つい先日、めでたく52歳のジジイになってしまった。来年は53歳のジジイになる。

老い先短くなると、数カ月後の予定をこなせるかどうか不安になる。「その時にはもしかしたら死んでいるのでははないか」と真剣に思う。

誕生日より何か月か前に、プレミアムバンダイから送料無料クーポンをもらった。

プレミアムバンダイ|バンダイナムコグループ公式通販サイト (p-bandai.jp)

バンダイの商品は基本的には卸売りだが、プレミアムバンダイではネット直販している。一般店頭向け商品も販売されるが、一般店頭には出回らないネット通販専用商品も数多くある。今話題のガンプラでいえば、プレミアムバンダイ専用のガンプラはファンの間では垂涎の的の物が多い。

ただ、プレミアムバンダイの難点を言えば、何万円・何十万円買おうが送料は660円で無料にはならないという点である。物流業界から言わせると正しい措置なのかもしれないが、4000円以上送料無料とか5000円以上送料無料という買い方に慣れてしまっている当方からすると、なんだか抵抗がある。

2万円分買って送料が660円かかって合計2万660円になるのは、もしかしたらさほど抵抗がないのかもしれない。しかし、当方はプレミアムバンダイで2000~4000円くらいのプラモデルを買うので、例えば2000円のプラモが送料込みで2660円になるとひどく高くなったように感じるわけである。

だから送料無料クーポンが配られたときにしか買わない。

 

前置きが長くなった。

そんなわけで送料無料クーポンが支給されたので、いろいろと迷った結果、9月配送の商品を三つ買った。3月くらいのことだったと記憶している。

とりあえず生きる楽しみができたのだが、受け取るのは9月である。9月までにもし死んでいたらどうしようかという不安は常にある。

主にプレミアムバンダイ(略プレバン)専用ガンプラは受注販売の形態を採る。受注販売だが無限に受け付けるわけではなく、一定の数量に達したら締め切る。または達していなくても期限が来たら締め切る。

好調な商品は締め切り後に二次、三次と受付をする。

商品にもよるが、だいたいは受付てから発送するまでは数か月、だいたい半年前後の期間がかかる。

 

さて、洋服でも盛んに「受注販売せよ」という声が聞こえるが、洋服の受注もプレミアムバンダイ同様に納期は数カ月先くらいになる。

1週間とか2週間くらい先なら、多分生きているだろうと思えるがあまりに先すぎると生きているかどうかが不安になる。もちろん、明日死ぬ可能性もあるから、1週間先であろうが6か月先であろうが本来はあまり変わらないのかもしれないが、やっぱり6カ月先では不安が大きくなる。

また、ガンダムのプラモデルですら、全品番をネット受注販売しているわけではない。あくまでも一部に過ぎず、大半の品番は卸売りして一般店頭販売している。

もちろん、これにはこれまでの取引先との関係性もあるだろうが、恐らくは膨大な全品番を受注生産することはシステム的にも不可能なのではないかと思う。

 

洋服でも一部の小規模ブランドは受注生産を行っている。

これらの小規模ブランドは熱烈なファンがいるが、小規模なので熱烈なファンは何万人、何十万人もいない。そのため受注生産が可能なのだろうと考えられる。

また、小規模受注生産ブランドは展開品番数も少ない。多くても10型か20型程度であり、以前に聞いた受注生産型の某ブランドでは「受注数量が少なすぎる品番はボツにします」とのことである。

ユニクロ、ジーユーを始めとする品番数が多いマスの洋服ブランドでは、全品番を受注生産することは不可能だろう。

また、マスブランドを買う多くの人々は、あらかじめ買いたい服を決め打ちして臨むことは少ない。「人気のあのデザインの商品が欲しいから」ということはあるだろうが、同じ人物でもそう決め打ちして買った洋服の割合は少なく、多くは店頭で見て(今だとネット通販で見て)衝動買いするということの方が多い。当方だってそうである。

となると、数か月前に決め打ちしなくてはならない受注生産を全商品に導入することは難しく、マス向けであればあるほど難しいということになる。

またこんな意見もあり、これもその通りだと思う。

【トップに聞く 2022】TOKYO BASE 谷正人代表 「ヨウジの売れ行きは圧倒的」 中国市場戦略を聞く (fashionsnap.com)

 

受注販売は感動を生まない

―経営とサステナビリティの両立は今後より求められると思います。

 まずは余計なことをしない。作りすぎない。これが大事ですよね。再生素材を使った新しいブランドをやるというのは全くサステナブルではないですし。余計な事業から撤退することも一つのサステナビリティだと思っています。

―過剰生産しないために完全受注生産に取り組む企業が増えています。

 逆に僕たちは受注販売を止めました。「いま欲しい」というお客さまの方が圧倒的に多いですし、受注生産商品と在庫がある商品では、売れ方が3、4倍ほど変わります。あるショールームストアでは「商品をその場で持って帰りたい」という来店客が8割いたというデータが出たそうですよ。それはそうですよね。わざわざお店に行っているのだから。

―受注生産はサステナブルだという見方が強いですが。

 サステナビリティの観点で言うと受注販売の方がもちろん良いですが、受注商売ってある意味“こちら側の都合”でもあるじゃないですか。ステュディオスでも5、6年前に顧客向けに受注会を開いたことがありますが、シーズンアイテムを先見せすることで逆にその後お店に来てくれなくなってしまうんですよね。要するに「お店に行く感動」がなくなってしまうんですよ。受注販売することによって逆に売上が半分になってしまったら、何のために受注販売をやっているのかという状況になってしまう。我々としては1人でも多くのお客さまに感動を届けることを優先し、在庫を残さず売り切ることを目指していきます。

 

とあり、サステナブルを含めた受注生産の在り方には深く賛同する。たしかに先に見て受注してしまうと、シーズンインしてからわざわざ店頭へ行くとか、そのブランドの公式通販サイトへ行くということはしなくなる。なぜなら、すでに今シーズンの商品を発注し終えて到着を待つだけだからで、到着後は今シーズンの商品を追加で買おうとは思いにくくなっている。

小規模ブランドならそのやり方でも良いが、100億円以上の売上高が欲しいマスブランドはこのやり方では到底求める年商規模・営業利益額には到達できない。

小規模ブランドによる受注生産を全く否定しないが、中堅から大手に対してまで完全受注生産を提言することは実情を無視したポジショントークにほかならない。

また体感気温に則した買い方をする消費者がほとんどで、半年先の気温を想像しながら先行受注するのは、マニアックな少数派だということも忘れてはならない。

マスブランドが受注生産するとしても限定された品番数にとどまるだろうし、それがまともな判断だといえる。

 

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