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南充浩 オフィシャルブログ

インフルエンサーとタイアップしても必ずしも効果があるわけではないという話

2022年4月21日 メディア 3

新聞、雑誌、テレビなどの旧メディアに比べると、WEBは流入数や視聴率が明確に把握できるため、広告効果に確実性があると言われている。

明確に把握できるというのはその通りだが、広告効果が高いかどうかは微妙なところである。

正確に言うなら、広告効果が高いこともあるが、全く無いこともあるというのが実状といえる。で、さらに言うとこの状況は、新聞・雑誌・テレビへの広告出稿とほとんど差が無いといえる。

 

当方はその昔、広告を出稿する側に1年間まわったことがある。今は亡き零細Tシャツメーカーの広報窓口である。2003年ごろの話なので、メインの出稿先はファッション雑誌である。

ペーペーだった当方にどの雑誌にいくらの広告を出稿するなんていう権限はないから、それらは全て経営者が決めることであり、当方はメインの広告代理店とやり取りすることがほとんどで、極稀に最終段階で出版社側と少しだけやり取りするくらいである。

基本的にファッション雑誌への広告出稿は「販売部数〇〇万部ある」ということが根拠になる。数字が大きければ大きいほど多くの人に読まれている「可能性が高い」ということになり、広告効果がある「可能性が高い」とうことになる。そのため広告料も高くなる。

当時は100万部ファッション雑誌も珍しくなかったし、零細弱小雑誌以外は20万部~30万部くらいの部数は当たり前だった。

何度か30万部くらいのファッション雑誌に広告掲載を行ったものの、実際はほとんど反応は無かった。

もちろん、広告を出したメーカーやブランドが読者に魅力的かどうか、掲載した商品のデザインが魅力的かどうか、という差異はある。魅力が無ければいくら広告掲載を繰り返したところで無駄である。

だが、30万部あるから必ず反響があるわけではないということは、出稿する側にまわってよくわかった。

 

このころから、広告代理店の人間と時々情報交換をするようになった。

中小規模の何社かの人間とやり取りしたことがあるが、交流したがある広告代理店の人間は全員、基本的には「販売部数が〇〇万部あるから」とか「視聴率が〇〇%あるから」という判断基準しか持ち合わせていなかった。しかし、その基準で広告を出稿しても(テレビCMを流しても)効果があるとは限らないというのが現状で、それは今でも変わらないのだろうと思う。

 

2010年代に入って、WEBが新しいメディアとして興隆し始めた。

WEBのメリットは先ほども述べたように、旧メディアとは異なってどれくらいの人数が流入したか、どれくらいの人間がクリックしたかがわかる点にある。

2010年頃はブログブームで何百万PV数を稼ぐアルファブロガーが持て囃された。ブログに広告を掲載すると〇〇万PVだから効果があるとか、記事に書いてもらうと効果があるとか、そんな感じで、儲けるアルファブロガーが続出した。

しかし、2010年代後半になると、ブログではなくインスタグラムやYouTubeなどが注目されるようになる。

特に2010年代半ばごろからはインスタグラムで何百万フォロワーのいる「インフルエンサー」に高い媒体価値があるとされ、インフルエンサーは「案件」と呼ばれる企業との有料タイアップで荒稼ぎするようになった。

2020年代になると、ユーチューバーがそうなる。

今の芸能ニュースやスポーツ新聞の芸能面は、ユーチューバーの誰それと誰それが口論したとか、そんなネタばかり掲載されている。知らんがな、勝手に喧嘩しとけや。

この手のインフルエンサー案件、YouTube案件も旧メディア同様に広告代理店が運んでくる。

2010年代後半に、広告代理店のWEB担当者と何度か同席したことがあるのだが、彼らのセールストークは基本的に2003年当時と構造は何も変わっていない。

「フォロワー数〇〇万人」「動画再生回数〇〇万回」「チャンネル登録者数〇〇人」

これが基準である。ちなみに某大手肌着メーカーはこの手の営業トークに何の疑いもなく乗っかってしまった。

 

だが、はっきり言うと、これは旧メディアの「販売部数〇〇万部」「視聴率〇〇%」と同じで、広告効果が必ずしもあるとは限らないというのが、今の実態である。

ちなみに某大手肌着メーカーは「フォロワー〇〇万人のインフルエンサー」を起用してさほどの効果も無かった。

なので、今のリアルな声はこうである。

 

まあ、某大手肌着メーカーに大手広告代理店が仲介した某インフルエンサーも似たようなものだった。

さらにYouTubeも同様で、こんな声もある。

 

 

いかがだろうか。

広告代理店の口車には各メーカー、ブランド、ショップはくれぐれも用心してもらいたい。

 

では、広告出稿には全くメリットが無いかというと そんなことも無い。効果がある場合もある。

最も危険なのは「広告出稿の判断基準がフォロワー数の多さ、販売部数の多さ、視聴率の高さしかない」場合である。

話をファッション雑誌全盛時から斜陽時に戻すと、例えば広告代理店の中でもスーツ系の「メンズEX」という雑誌は広告効果が高いとして有名だった。

しかし、この雑誌の部数は3万部とか4万部程度しかない。

それでも効果があるとして広告は集まりやすい。アパレル不況でも広告出稿が続いたというのは出稿側も効果を体感できたからだろう。

このように部数は少なくとも特定のジャンルにおいては広告効果がある、ひいては読者に熟読されているというメディアもある。

逆にいくら部数やフォロワー数が多くとも、客になり得ない人間ばかりだと広告やタイアップは全く見られないということになる。

広告出稿をするメーカーやショップ、ブランド側は広告代理店の口車を簡単に信じないという高いリテラシーを身に着ける必要がある。

 

 

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胡散臭すぎて草wwwww

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/04/21(木) 4:21 PM

    私が某有名経営コンサルタントに訴えられた時の相手方の主張では、【「胡散臭い」は社会的評価を低下させるから名誉毀損】だって言われましたw(・∀・)

  • BOCONON より: 2022/04/21(木) 7:16 PM

    『MEN’S EX』は僕もむか~し読んでいましたな。基本イタリアびいきとは言え案外まともで「正しくエレガントなスーツとその着こなし方」とはどんなものか知っているとおぼしき人たちが作っている感じがしたので。
    それゆえこの雑誌の記事を読んでいると明らかにイタリア人の着こなしを内心バカにしているのが垣間見えたりするので可笑しかった。ネクタイの大剣と小剣をわざとずらして結んでタイピンで留めて着用する,といったようなわざとらしい着こなしとか,いい歳こいたおっつぁんがテイラード・ジャケットにウォレット・チェーンなどぶら下げていたりするような「中学生かよw」と言いたくなるような格好のつけ方とか。
    落合正勝尊師も元来トラッド育ちらしいし昔はR.ローレンびいきだったりして,たぶん本音では「クラシコ・イタリア推しなんて飽くまでビジネスよ,ビジネス」という事だったのだろうと思われる。実際この人がイタ物スーツなど着た姿など見ても全然カッコよくなかったし(まあ輸入物買って着たり日本人体型に合わせて作る技術のないイタリア人にオーダーしたってねえ…別段大柄な人ではないのでイタリアもののネクタイなんて長過ぎて困っただろうと思う)。

    しかしその『MEN‘S EX』もしばらく見ないうちに月刊から季刊誌になっていた。たぶんもう廃刊/休刊も間近なのでしょう。同じ世界文化社の『Begin』も最近は洋服なんてろくに載っていなくてアウトドア用品特集などを連発している有様である。『LEON』なんかと違って比較的フツーの服や定番商品が多く載っていた雑誌に広告が集まらないというのは,僕にはちょっとショックですね。これは「世の中もう流行り物かつ安いものしか売れない」「スーツの時代はもう終わり」「百貨店もセレクトショップも時代遅れ」という方向へ向かっている,ということだから。少なくとも今のところは。
    今さらながら「アパレル業界というのはもう “終わりの始まり” なんて呑気な事を言っていられる状態じゃなくなっているな」と思ったことでした。

  • とおりすがりのオッサン より: 2022/04/22(金) 10:39 AM

    ピッティとかの業界人っぽい人の着こなしにコメント付けて紹介してるサイトで、チェック柄スーツにドクロが連なったウォレットチェーン付けたオッサンを【ドレス度高めのスリーピーススーツでコーデをエレガントにまとめつつ、スカルチェーンでエッジをきかせている。】って説明してて笑いましたw(・∀・)

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