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南充浩 オフィシャルブログ

ジーユーと国内ユニクロは停滞期にさしかかっているのではないか

2022年4月19日 ユニクロ 5

「月満つれば則虧(か)く」という言葉がある。

満月になれば必ず欠けていくという意味で、盛者必衰である。個人的にはどんなに優れた商品やブランドでも規模の拡大には上限があると思っていて、無限成長はあり得ないと思っている。

国内のユニクロとジーユーもそのような状態にさしかかったのではないかと当方は見ている。

男性消費者としての立場で言えば、ユニクロのメンズは21年春から目新しさに欠け続けている。ジーユーも同様に21年秋から目新しさがほとんどない。

ユニクロとジーユーのターゲット層は異なるし、商品テイストも異なるが、どちらも目新しさがあまりないというところが共通している。

サステナブルガーの文脈で言えば、同じ商品を長い期間売り続けることができることが理想だということになるが、衣料品ビジネスの場合、「定番+目新しさ」が無ければ売れ続けることは難しい。それはユニクロメンズよりもはるかに目新しさに欠け陳腐化している無印良品の衣料品売上高の不振が証明しているといえる。

数字的にも先ごろ発表された22年8月期第二四半期連結でその兆候が見られる。

ファストリ2022年8月期上期は増収増益 国内・中国ユニクロ事業は苦戦、コロナ禍での物流遅延が影響 (fashionsnap.com)

昔ふうにいうと2月中間連結である。

国内ユニクロ事業の第2四半期連結累計期間の売上収益は、4425億円(前年同期比10.2%減)、営業利益は809億円(同17.3%減)と大幅な減収減益。既存店売上高は9.0%減だった。

とのことで、

同社は要因として、「前年同期はラウンジウェアなど在宅需要にマッチした商品やエアリズムマスクの販売が好調だったことで、ハードルが高かった」とし、これに加えて、冬物の売れ筋商品に欠品が発生し、機会ロスが生じたことを挙げている。

この説明はその通りだろう。

冬物の売れ筋に欠品が生じたことも何度も月次売上速報で語られている。

このブログでも何度も取り上げた。前代未聞のお粗末マーチャンダイジングである。

12月では「気温が高く防寒が売れなかった」といい、1月には「寒波で防寒が足りなかった」という。

細かい数字は分からないが、この説明を基に考えるとユニクロの理想とする展開は理論的にはこうなる。

 

「冷え込みが短期間(10日前後くらいか)で終わり、1月中旬から暖冬に戻る」

 

という気温変化が起きた時にのみユニクロの防寒物の在庫量が適切ということになるが、そんな都合の良い気温変化の年は見たことがない。あまりにも僥倖に頼りすぎたマーチャンダイジングである。

それよりも当方が注目したのは

Eコマースの売上高は724億円(同1.9%減)と若干の減収だったものの、2年前比では約4割の増収となっている。

である。

 

国内ユニクロのEC売上は約2%減の724億円【2022年度中間期】 | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)

ファーストリテイリングが発表した2021年9月-2022年2月期(中間期)の連結業績によると、国内ユニクロ事業におけるEC売上高は前年同期比1.9%減の724億円だった。

減収の要因は、2020年9月-2021年2月期に4割増と急拡大したことによる反動。

とある。

ユニクロのEC(いわゆるネット通販)は拡大し続け、国内単独ブランドとしては初の1000億円を越えた。だが、ECといえどもどこかには上限があるので、現時点ではここがユニクロの国内ECの上限なのではないかと感じている。

店頭商品に目新しさが無ければ、ECでもそれは同じだから、売れ行きが鈍るのは当然である。

またユニクロ商品をネットで買いたい人はもうだいたい買っているし、ネット通販だけがどんどん伸びるはずもない。またユニクロのネット通販は他社のネット通販に比べるとあまりメリットが無い。

あるとすると、A店店頭に残っていない商品がネットでは在庫が残っている場合がある、ということぐらいである。

他社のネット通販なら買い物をするとポイントが貯まり、それが割引に使えるが、ユニクロのネット通販にそのような機能は一切ない。何万円買おうが1円も割引できない。じゃあ、わざわざネットで買おうかとはならない。あるとすると、店頭に行く時間がないとか、ネットには在庫が残っているとか、そういう状況の時だけである。

 

またジーユーも減収減益である。

 

ジーユー事業の第2四半期連結累計期間の売上収益は1228億円(前年同期比7.4%減)、営業利益は93億円(同40.9%減)と減収減益。減収となった要因は、シーズン初めに気温が高く推移し秋物販売が苦戦したこと、冬物のニットやボトムスなどのコア商品の販売は好調だったものの、生産や物流の遅延の影響で売れ筋商品をタイムリーに投入することができず機会ロスが生じたことが起因しているという。

 

とのことで、店頭から見る印象については先述した通りで、21年秋から目新しさが急激に無くなった。メンズでいうとビッグサイズの長袖Tシャツとパーカとトレーナーばかり並べられても、似たような物ばかりそんなに何枚も買う人はいない。

ユニクロメンズ、ジーユーメンズともに明らかにネタ切れ感が強い。ジーユーの上限売上高は3000億円に届かないのではないかと見ている。

 

もちろん、中国をはじめとするアジア工場の休止や混乱、稼働率の低下は4月現在も続いており、海外生産比率が高い同ブランドはそれによる商品計画の乱れはあると考えられるが、それを考慮してもユニクロとジーユーの商品はマンネリ化し魅力が無くなってきているように見える。現に今春のユニクロ、ジーユーともに商品のマンネリ化は続いている。

ユニクロ、ジーユーともに国内での大幅な売上高の拡大は今後も望めないだろうと見ている。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/04/19(火) 11:12 AM

    わたし、昔から変な日本語だと思ってるのが「伸び悩む」ですね。
    「〇〇社の売上が今期は伸び悩み」とか「〇〇君の英語の成績が伸び悩み」とか。なんで、伸びていくのが前提なのかとw
    企業なら、業種によってはどんどん拡大出来ることもあるかもしれないですが、人の能力とかだいたいは限界あるはずで、伸びなくなったらソコが限界なんじゃね?と思ってます。

  • BOCONON より: 2022/04/19(火) 7:11 PM

    この春夏ユニクロのTシャツ/UT はFFシリーズ推しのようですが,およそゲームの類をやらず今のところまるで関心のない人間からすると「控えめに言って,デザインだけ見る限りどれもあんまりいただけないTシャツ」という感想しか出て来ないので,このスレの住人やツイッター民たちは「ダサくてもファイナルファンタジーでありさえすればOK」なのか,本気でカッコいいと思っているのか,どうも判然としない。
    デザインについてはあながち僕は「理解できないくせに上から目線で批評したがる奴=利巧さうな事を言ひたがる馬鹿(©小林秀雄)」ではないつもりでいますが・・・まあいづれ僕みたいなジジイの着るもんじゃないからいいか。
             ↓
    http://jin115.com/archives/52344177.html

  • ハマオ より: 2022/04/19(火) 9:09 PM

    ユニクロのMD上の一番の課題はレディースじゃあないですかね
    メンズは新しい提案は出来てないですが
    いわゆる定番商品の売上が見込めますが
    レディースは値下げ幅がかなり大きいですよね
    三桁プライスもよく見ますね。
    ブラトップやルームウェア位しか売れ筋が思いつかないですが
    これはファッションではないですよね
    実用品ですね
    Guはパターンの汚さ
    素材の悪さが不振の原因では
    まああのプライスにそれを求める事が間違えですかね

  • BOCONON より: 2022/04/20(水) 2:46 AM

    レディースものの素材と言えば,いくら夏向きと言ってもこんなペラッペラなジーンズ穿いた女と一緒に歩きたくはないと思う(「お前に言われたないわ」でしょうが)。
           ↓
    https://www.gu-global.com/jp/ja/feature/cms/gujeans_look/women/pc/

    ブルージーンズと言えばちょっと前のユニクロCMの桑田佳祐のジーパンにネクタイなんてのも真似したところで大方は嗤われて終わりでありましょう。そもそもあのCMの桑田自身別に格好良くないし。どうやら一度「チノパンはオタクが穿くもの」「ジーパンはおっさんじーさんが穿くもの」ってイメージがついてしまうと汚名返上するのは容易ではない模様である。それでスキニーももう終わり(昨日黒スキニー穿いた爺さんを何人か見かけてびっくらしてしまった)でシェフパンツも格別流行ってないとすれば,ジャージか “感動パンツ” しか穿くものがあるまい。

    オーバーサイズ服も街でもあんまり見ないし,ネットでも「オーバーサイズ 流行」で検索すると予測ワードが「嫌い」「ダサい」「早く終われ」だらけで笑える。アパレルは何か大流行するものがないとあんまり儲からなくて困るという事情は分かるけれど,力づくで流行らそうとするのはちょっと違うと思うな。今どき「有名デザイナーがコレクションで発表したものはしばらくすると下々の者たちの間でも流行る」なんて事もあんまりありそうもないし(そう言や大分前「男もののベルボトム・ジーンズはエディ・スリマンがコレクションで発表したんだから流行る。絶対に,です」と意気軒高だったお若いのもいたなw)。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/22(月) 10:19 AM

    大本営発表のプレスリリースを垂れ流してチョウチンつけるライター
    だらけの中で、南サンの視点と分析は本当に「まっとう」です

    南サン:>衣料品ビジネスは「定番+目新しさ」がないと、売れ続ける事はない

    これ、まったくをもっしてその通りです
    そして、業界歴が長い人間ほど意識してない
    さらに、目新しさを長年維持するのは非常に難しい

    あれこれ不調の原因を無理に分析して点稼ぎしようとする
    ライターや業界紙の記者が多いですが、
    製品ベースであれば「目新しさがないから売れなくなった」
    というのが不調の原因の大半だと思います

    定番とはいえ、3年前と同じ物を同じパターン・同じ色指定
    同じ縫製仕様書で作っていても売れるほど、
    きょうびの市場は甘くないです

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