ネット通販も実店舗同様に好不調の格差が拡大
2022年4月14日 ネット通販 0
実店舗での洋服の売れ行きには格差があることは広く知られている。
アパレル不況と言われながらも好調なブランドもあれば、好調な店舗もある。日経平均株価が下がっても株価が上がる銘柄があるのと同じである。
2015年頃からのZOZOTOWNの急成長ぶりによって「ネット通販バラ色論」がメディア、業界内部、一部のポジショントーカーの中で蔓延していたが、2022年現在だと、ネット通販も実店舗同様に格差が生じている。
三陽商会は2022年2月期でEC売上高は前年割れが続いているし、オンワード樫山は自社ECは前年割れしている。
先ごろ発表されたライトオンもEC売上高は14%減に終わっている。
ライトオン21年9月〜22年2月期は最終黒字に – WWDJAPAN
ライトオンの2021年9月〜22年2月期は、売上高が前年同期比7.5%減の252億円、営業利益が同16%減の4億8000万円、純損益が3500万円の黒字(前年同期は3億9500万円の赤字)だった。
EC売上高は前年同期比14%減だった。
とのことである。
2020年春のコロナ禍による実店舗の営業休止によってネット通販の売上高は飛躍的に伸びた。しかし、それは多くの消費者がネット通販のすばらしさに目覚めたのではなく、「実店舗が営業休止だから仕方なくネットで買った」というのが実態ではなかっただろうか。
もちろん、「仕方なく買ったらなかなか快適なのでネット通販の比率を増やした」という消費者もいるだろうが、全員がそうはなっていないということである。
三陽商会にしろ、ライトオンにしろ、オンワードの自社ECサイトにしろ、2020年春に飛躍的に伸びたが、21年はその実績を越えられなかった。
実店舗休止によって強制的にECへ移行させられた2020年が現段階でのネット通販売上高のピークだったのではないだおるか。
ちなみにライトオンの資料には
EC関与売上は前年同期比86%にとどまり、EC化率は3.7%と前年同期比0.6ポイント低下
と述べられていて、WWDの記事はこの「EC関与売上高は前年同期比86%」という部分をEC売上高が14%減と伝えているのだろうと考えられる。
で、このEC売上高(正確にはEC関与売上高)が前年割れを起こした原因として
「ただ、販管費の削減でECへの誘客が鈍るなど(販管費抑制は)裏目に出る部分もあった」と藤原祐介社長
という一節が記事にあるが、販促費を10%強削減したためにECへの誘致が鈍ったというわけなのだが、恐らくは、販管費削減というのは、主にネット通販における割引を減らしたのではないかと考えられる。
今やネット通販の最大の販促手法は「割引」「値下げ」である。
コアなファンに支えられている小規模ブランドはそうではないが、大手のECサイトになればなるほど、集客の手法は「割引クーポン発行」「値下げ」「送料無料」「タイムセール」「Web先行バーゲン」である。言い方はいろいろだが、実態は値下げである。
ライトオンが言っていることはこれらの販管費を削減した結果、通販サイトへの集客が鈍り、必然的に売上高も下がったと言っているわけである。
以前にも書いたことがあるが、ネット通販は最早、小規模業者が手を出しにくい販路になりつつある。いや、なってしまっていると言っても過言ではないだろう。
2005年頃のネット通販創成期には、オッサンが無料のホームページビルダーで組んだサイトでも売れた可能性が高かった。
しかし、現在、オッサンが自分で組んだ素人感丸出しの通販サイトなど集客できるはずもない。
まともな通販サイトを作ろうとするなら少なくとも何百万円かはかかる。そして物流費もかかれば、カスタマーセンターも充実させなければどんなクレームが来るかもしれない。
それ以外にも販促費が必要だし、インフルエンサーの起用やらタレントとのタイアップ契約だとか、Web広告の出稿だとかそういうことにも巨額の経費がかかる。
Web広告料金は年々上がる一方である。
また実店舗とネット通販の在庫統合をするにも多額の費用が必要となる。実際に昨秋ごろに実店舗とネット通販の在庫管理システムを統合したワークマンによると「何億円かかかった」とのことである。
もうキッチリとした通販サイトは、大手資本でなければ運営できなくなっていて、個人商店ではまったく太刀打ちできない。
小規模企業や川上企業はこれからようやくネット通販に乗り出すところが少なくないが、資本力の勝負という局面に差し掛かっていることをもっと認識すべきである。
2010年頃まで言われていた「ネット通販は実店舗出店に比べてローコストでできる」というのは過去の神話になってしまったということを強く認識しないと無駄にカネと労力を捨てるだけになり、挙句の果てには在庫と負債を抱えるだけになってしまう。
個人的には、アパレルのネット通販はすでにレッドオーシャンとなっているように映るし、すでに実店舗と同様に資本力と規模感の勝負になっていて、小規模業者や新規参入者はよほどの工夫を凝らすか、莫大な先行投資を注ぎ込む以外に勝ち目はなくなっているように見える。
専門学校生でもイージーな感じで「ネットで服でも売りますわ~」と言って就職を決めずに卒業して行く生徒をちょくちょくと見かけるのだが、業界に長居し続けているジジイの目には酷く不利な勝負をわざわざ挑みに行くようにしか見えない。
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