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南充浩 オフィシャルブログ

地方小型百貨店の閉店が相次ぐのは極めて当然でこれからも続く

2022年4月13日 百貨店 1

つい先日、また地方の小型百貨店が閉店した。

「三春屋」惜しまれ閉店/八戸市中心街|経済・産業・雇用|青森ニュース|Web東奥 (toonippo.co.jp)

青森県八戸市十三日町の老舗百貨店「三春屋」が10日、営業を終え閉店した。1970年から百貨店として歩み始め、中心街の顔として市内外の人々に愛されてきたが、百貨店を巡る厳しい経営環境や新型コロナウイルス禍の影響もあり、惜しまれながらその歴史に幕を下ろした。

とのことである。

本当に「惜しまれながら」かどうかは極めて怪しい。そこまで「惜しまれている」なら売上高が少なくとも最低ラインでは維持されるだろうから閉店には至らなかったはずである。

この三春屋に限らず、地方百貨店の閉店・倒産・廃業には必ずこの手の文言が添えられるが、実態とはかけ離れており、和歌の枕詞のようなものだろうといえる。

百貨店の閉店ニュースには必ずと言っていいほど「昔は家族連れで百貨店に行くことが楽しみだったが、日本人が貧しくなったから百貨店に行く人が減った」というようなコメントが出されるが、実際のところ百貨店を見て回れば、到底家族連れで楽しめるような商業施設ではなくなっていることが理解できるだろう。

 

当方は1970年生まれで、中学校へ進級するまでの間に何度も両親に連れられて百貨店へ行った。

当方の母親は洋服が好きで掘り出し物を安く買うことが生きがいだった。この辺りは母親の気質を受け継いでいるのかもしれないと最近思う。

近所のジャスコやイズミヤの衣料品売り場物色も欠かさなかった。

子供時代の当方は洋服になど全く興味がなかったから母親に連れられて衣料品売り場に行くことが苦痛で仕方がなかった。服なんて見ても全く面白くないし、その服が母親に似合っているかどうかも全く興味が無かった。母親の服などハッキリ言ってどうでもよかった。

ひたすらに早く帰宅して、アニメ番組か特撮番組を見るか、友達と遊びたかった。オバハンが何を着ようとしったこっちゃねえというのが本音である。

イズミヤにしろ百貨店にしろ、救われたのは当時はおもちゃ屋や書店が入店していた。また百貨店は屋上に遊園地があった。

小学生になると、母親の訳の分からない洋服選びになど付き合わずに、おもちゃ屋か書店、百貨店の場合は屋上の遊園地で遊んでいた。

しかし、今の百貨店はどうだ。

おもちゃ屋も書店もない。屋上の遊園地もない。

80年代くらいからその兆候はあったが、90年代以降は「集中と選択」とやらで、レディースファッションと化粧品の売り場を広げ、おもちゃ屋は電化製品売り場を減らし、屋上遊園地を廃止した。

子供の目線から見て、あんなクソ面白くもない商業施設に行きたがるはずがない。

子供が行きたがらなければ、親も無理やり連れて行くことはできない。乳児、幼児なら抱きかかえてでも連れていけるだろうが、小学生にもなるとそんなことはできなくなる。

今の百貨店の売り場構成で、家族連れが来なくなるのは自明の理である。

じゃあ、家族連れがどこに行くのかというと、郊外型の大型ショッピングセンターである。

おもちゃ屋も書店も入店しているし、子供が遊ぶスペースも設置されている場合も多い。また屋上遊園地はない代わりにゲームセンターのようなアミューズメント施設はある。

おまけにフードコートもある。

ここなら子供でもまだ我慢できる。

 

当方には子供が3人(男2人、女1人)いるが、彼らが小学生のころはイオンモールなら我慢して付いてきた。おもちゃ屋と書店とゲームセンターで時間が潰せるからだ。おまけに買い物が終わればフードコートで何かを食べさせてもらえる。

飲食店でいうと、百貨店内のあんな気取った飲食店に連れていかれて喜ぶ子供はまあ、ほとんどいないだろう。当方がお目にかかったことの無い上流階級のお子様くらいではないか。

 

当方はスーパーペーパードライバーなので気が付かなかったが、百貨店の場合、駐車場にも難点があるらしい。現代のファミリーは車高の高いボックスカーやワゴンなどで出かける。

そういえば、昔はセダンタイプの車に家族4人が乗っているのが普通だったが、最近はそんな家族を全く見かけなくなった。

百貨店の建物自体が古い場合が多く、特に地方小型店は資金力の無さから建物がリニューアルされていない。そのためワゴンなどの車高が高い自動車は駐車場に入れないことがよくあるという。

一方、大型ショッピングセンターの駐車場にはワゴンは楽々と入れる。

となると、家族連れがどちらを選ぶのかは言わずもがなだ。

 

百貨店ガーの人々が思い描く、家族全員で楽しめるという要素が今の百貨店には皆無で、それを備えているのが大型ショッピングセンターということになる。

 

あと、付け加えるなら地方百貨店というのは小型店が多い。一方の都心百貨店は年々大型化している。また郊外型ショッピングセンターも広大な売り場面積を誇る。

今回閉店した三春屋は、2009年の東洋経済の臨時増刊によると、延べ床面積が25000平方メートルしかない。例えば、枚方ティーサイトになった近鉄百貨店枚方店も延べ床面積は1万8000平方メートルしかなかった。だいたい地方百貨店というのはこれくらいの小型店が多い。

現在の枚方ティーサイトを見れば分かるように1フロアにせいぜい10店舗前後しか入店できない。しかも1店舗ずつの面積はそれほど大きくない。

阪急うめだ本店は建て替え前に発表された計画案だと商業施設部分(いわゆる百貨店部分、オフィステナント部分を除く)の延べ床面積は15万平方メートルで、三春屋の6倍、近鉄枚方店の9倍弱の広さがある。

またイオンモールだと、イオンモール堺北花田店の延べ床面積は17万5000平方メートルと発表されている。

巨大な都心百貨店と郊外型ショッピングセンターの売り場に慣れた大衆にとって、小ぢんまりとした地方百貨店が魅力的に映らないのは極めて当然だろう。当然、誘致できるブランドのラインナップも少なく、マスの消費者には色あせて見える。

今後、地方の小型百貨店の閉店はますます加速するが、それは売り場面積の狭さや駐車場の仕組み、テナントラインナップのいずれもが現在の生活にマッチしていないからであり、家族連れが楽しめる機能が郊外大型ショッピングセンターに備わっているからである。

現在の消費者の嗜好に適さないのであれば、いくら老舗だろうが消え去るのは当然である。

センチメンタルなコメントを枕詞として使いまわしたところで何の解決策にもならない。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/04/13(水) 11:32 AM

    和歌の枕詞ワロタw
    私は1972年生まれで東京育ちですが、子供の頃は池袋の東武デパートとかのレストランで食事するのは楽しかったっすね。買い物は母親が、やっぱりどうでも良い服を延々選んでるのが苦痛でしたが。しかも東京人じゃない田舎者のうちの母親は、デパートでも必ず値切っていて大阪のオバちゃん以上でした。そして全くブランドとか知らずに買ってるんですが、たまにデパートでも値切れることがあったと自慢してましたw
    東京のデパートだと車で行くのはサイズの他に、延々並ばないと入れないってのも問題ですね。池袋だと東武デパートはまぁまぁ入れるイメージですが、この前売却のニュースがあった西武デパートは駐車場が分散している上に混み合ってるイメージです。オサレさん御用達の新宿伊勢丹とかは店に入ったことはないですが、土日に近くを通ると駐車場待ちの車列が公道上を延々と続いていますw

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