無印良品の「年商3兆円構想」の実現はかなり困難なのでは?
2022年4月8日 企業研究 4
2010年代半ばからときどき寄稿しており、2020年春からは定期的に寄稿させてもらっていたBLOGOSが3月末で更新を休止した。
当方の寄稿としては最後の記事で、3月30日に掲載された。
値上げのユニクロ、しまむらに対し価格据え置きの無印良品、ワークマン どちらの戦略が功を奏すか (1/2) (blogos.com)
今春からの値上げに関して、低価格ブランドでも対応が分かれており、ユニクロとしまむらは一部値上げ、無印良品、ワークマン、それからこの記事では触れていないがジーユーは据え置きえある。
これを受けて売れ行きはどうなりそうか?ということを予想してほしいというのが編集からの依頼だった。
予想については、読んでいただければすぐにわかることだが、
【一部値上げ組】
ユニクロ 苦戦
しまむら 好調
【価格据え置き組】
無印良品 苦戦
ワークマン 好調
である。
この記事を書いたのは実は1月末から2月頭にかけてのことだったのだが、掲載は3月30日に延びた。そのため、2月の月次速報の数字を反映させるなど少し修正した。
1月末時点での予想だったが、3月の月次速報の結果と合致しており、少し安心した次第である。
世間的には3月のユニクロの既存店売上高10%減%・8カ月連続前年割れに興味が集中しがちだが、無印良品の10%減と衣料品19・3%減というのも相当に衝撃的な業績である。
3月というのは基本的に気温が高くなり、春めいてくるころなので、中旬以降は春物の動きが活発になる。大雑把に言って3月中旬から4月中旬くらいまでが洋服の最も売れる時期の一つとされている。
古い話でいうと、ジーンズ類の最も売れる時期の一つもそのころだとされていた。
2020年のコロナ営業自粛が早いところ(東京都心など)で3月下旬、全国的には4月頭から始まっており、各社の売上高が激減したことは記憶に新しいと思うが、3月・4月というのは衣料品販売においてそれほど重要だといえ、売れ行きが最も見込める時期の一つだということである。
その3月に既存店売上高が前年10%減になったユニクロと無印良品は相当に厳しいといえる。
無印良品については衣料品不振は1年以上続いている割にそれほど重要視されていなかった。なぜなら企業全体の売上高は悪くはなかったからだ。
その理由は衣料品の不振を食品の伸びがカバーしていたからだ。
しかし、今3月は頼みの綱の食品も大きく前年割れをしており、ある意味でユニクロよりも厳しい状況に置かれているのではないかと考えられる。
無印良品の3月直営既存店売上は、
全体では前年比10・0%減
衣料品は前年比19・3%減
生活品は前年比5・0%減
食品は前年比9・8%減
となっており、衣料品が大幅に落ち込むとともに食品の落ち込みも拡大している。おまけに生活品も前年割れとなっており良いところがない。
しかも、昨年9月からの月次を見てみると、
売上推移速報PDFデータ(2007年〜) (ryohin-keikaku.jp)
食品の既存店売上高が前年を越えているのは、昨年11月の3・6%増しかない。あとは全て前年割れである。ちなみに衣料品は今年1月の7・8%増だけであり、あとは全て前年割れである。
今年3月でいうと、3部門トータルの既存店実績では客数は前年比5・0%減、客単価は同5・2%減となっており、この二つの要因で売上高は先述したように10・0%減に終わっている。
そして
3月は中旬より生活雑貨10%オフの施策をしたものの、売上が伸びず、直営既存店+オンラインの前年比は90.0%、直営全店+オンラインストアの売上高前年比は96.4%となりました。
というコメントを発表している。
値段をむやみに高くしたら絶対に売れないが、安くしても要らない物は売れないということを如実に証明してしまったといえる。
さて、先日、3月末に何店舗かの無印良品を見てみた。
生活雑貨や食品については門外漢なので言及しようがないが、衣料品に関して言うと、売れないのも当然ではないかと思ったし、同じような構成が続くなら不振ももっと長期間続くのではないかと思った。
理由は、あまりにも変わり映えしないからだ。
ユニクロにもその兆候は見られるが、それでもまだ新色・新柄を投入したり、一部に新型を投入したりしており、改善しようという意図は見える。
しかし、無印良品の衣料品は前年春夏どころかここ3年くらいは全く変わっていないように見える。もちろん秋冬商品も同様である。
サステナブルとかSDGsとかその手の取り組みなのか何なのかわからないが、あまりにも変わらなさすぎて驚くほどである。サステナ信者にとっては理想の売り場かもしれないが、普通の消費者にとっては一昨年と変わっていないだから、買う物が無いというふうに映る。
買うとすると、お気に入りの「あれ」が汚れたり破れたりしたから買い替えるとか、同型商品の違う色柄を買い足すとかその程度の需要しかない。
そうなると売れないのは当然である。
サステナガーみたいな人の中には「定番商品を拡充して長期間売るべきだ」という論があるが、無印良品の場合は拡充するどころではなく、何も変わっていないように見える。昨年買う物が無かった人にとっては今年も買う物はないから、買い替え・買い足し客しか獲得できないということになる。
今の無印良品の売り場を見ていると、新型投入がどれほど衣料品にとって重要なのかということがよくわかる。
良品計画の新社長は「食品スーパー的役割を強化することで年商3兆円にする」という構想をブチ上げておられたが、衣料品の変わり映えの無さ、前年割れが続く食品という現況を見ていると、とてもではないが年商3兆円構想の達成は難しいと言わざるを得ない。
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comment
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BOCONON より: 2022/04/08(金) 6:43 PM
も一つ。無印良品が優位なのはユニクロや GU ほど発色が悪くない,という点が挙げられるので,その長所はもっと生かすべきだと僕は思います。
ユニクロの春物シャツが店頭に並んでいるのを見ると,たとえばピンクのシャツなどは色が安っぽい上にどう見ても日本人の男に似合うようなものではない。この時期オジサンたちの中には紺ブレザーにブルージーンズやチノ,中にピンクのボタンダウンシャツ…なんて出で立ちでお出かけする人をたまに見る。スタイリストの大山旬氏など「ユニクロだけでお洒落」論者御推奨のスタイルですが,一般に紺ブレザーにジーンズは合わせにくい,というのは措くとしても髪の毛黒くて肌が黄色っぽい日本人がそれでは,黒・黄・ピンク・紺(靴も黒だったりする)と強い色やくどい色だらけでどうにも纏まらない感じになってしまっていることが多い。せめてピンクのシャツはユニクロはやめて,多少高価でも抜けの良いピンク≒さくら色でもないと無理があるので,無印良品はそのあたりを狙ったら良いのに,と思うのです。茶色のシャツも嫌いじゃないが,世の中僕みたいな時々全身アースカラー,なんて格好してる人はそんなに見ないので。ユニクロはブルーのシャツや白いシャツは子供の描いた絵のように真っ青だったり真っ白けだったりするのが難点だし,柄物は総じてあまり良くなかったりするし,今年はデニムのような生地のカーディガン風なジャケット推しのようですが,これもあんまりいい色や質感じゃない,といった塩梅だ・・・まあしかし,問題は以上僕が述べたような話が感覚的に分かる人は世の中あんまりいそうもない,というのと無印良品はあまりきれいな色柄ものの服を作るのに熱心じゃない,という点ですね。でも僕が数年前買って愛用している無印良品のストライプのニットタイは紺ブレザーに合わせて歩くとよく販売員さん達にホメられたりするから,発色の良さを生かすというのはできない事はあるまいと思うのですが ...
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ハマオ より: 2022/04/08(金) 9:47 PM
無印の服は15年ぐらい買ってないですね。
価格設定が中途半端ですよね
安くもないし微妙に高く感じられますね
無印で買わなければいけない
絶対買いたいと、いう気持ちにならないですね
同業他社の定番を中途半端な価格で展開しているだけのイメージですね
自分が高校生の時なんかは無印の自転車で通学していると結構自慢出来た位
あこがれのブランドだったのに
30年前の話しですけど -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/21(金) 9:11 AM
ハ氏>同業他社の定番を中途半端な価格で展開している
> 高校生の時は無印の自転車で通学していると自慢できた時の流れは残酷、ですな・・・
むかしを知る人からすると、今の無印は
他社のパクリ品を高く売っている印象がするのか・・・むかしを知らない人はさらに厳しい眼で見ている筈
30年前はシンプルな自転車は無印しか出していなかった
けど、今ではBSもパナサイクルも無印的な自転車を
いっぱい出しています。機能・イメージは無印以上です同様なパターンが無印が展開する商品すべてに
みられますPB品の発祥はスキマ商品だった筈
そのすき間を専業大手メーカーが埋めにかかると
もう無印の出番はありませんじゃあ専業メーカーに転換できるかというと・・・
最終的には「無印のイメ~ジであなたのお店を
創ります」とかそういう路線にいくのでは?もちろん売上はナム~でしょうけどwww
以前も書きましたが,ここ数年の無印良品のシャツの極端に細身短丈の造りはさすがに評判が悪かったらしく,今年は丈はともかく「身幅にゆとりを持たせました」と店頭の POP でアピールしていたのでオジサンには窮屈で着られないということはなくなったようです。しかしそんな事は「基本誰が着てもいいような感じのフツーの服」が売りの無印良品なら当たり前みたいなもので,改善したというよりは「変な事をやって無理やりユニクロ等と違いを出そうとするのはやめた」といったようなものだから自慢にはなりませんね。
それ以外,紳士ものは全体としては南さんのおっしゃる通りで,今年の春物はブルース・リーの着ていた中国服のような奇妙なジャケットなどは姿を消したけれど,その分特に目を惹く商品がない。せいぜいバンドカラー(=いわゆるスタンドカラー)のシャツくらいですね。バンドカラーのシャツはスーツの下に着るとネクタイなしでも様になる(例:大江健三郎,井上ひさし)から一般的には所謂 “オフィス・カジュアル” には良いのだけど,無印良品は色が茶色っぽいのが多くてむしろカジュアル向きだし,バンドカラーのシャツは最近ユニクロやGU,スーパーでも売ってますしね。
一方相変わらずある種の意識高い系の人向きな何とも形容しがたいおかしな男女兼用服にコダワったりもしているけど,大方の客はそんなコーナーには見向きもしないような按配で「こんなものは無印良品が開拓者にならなきゃならない理由はなくて,もし流行ったら追随すればいいってだけの話だろうに」と僕は思う。これまた以前書いたように,それが世界的流れだとしても。
一方無印良品はセットアップスーツには消極的なようですが「強化するならそっちだろうに」と僕は思う。
・・・こんな塩梅だから、無印良品の衣料品はまだ当分迷走が続きそうな気がします。