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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロの「在庫過少」「セールの売り込み不足」による苦戦は「プロパー消化率」を重視しすぎたからでは?

2022年4月6日 企業研究 0

今回はユニクロに話を絞ってみる。

ユニクロの既存店売れ行きが昨年8月から減少に転じている。2015年にも既存店売上高が減少した一時期はあったが、今回はその時とは違う雰囲気を感じる。

自分自身がユニクロ商品に飽きているからということもあるのだろうが、マス層がユニクロ商品に飽きており、以前のような熱い支持を感じない。おまけに前回も書いたように、ファーストリテイリングの安全パイ志向も手伝っているのか、商品も定番的・マンネリ的で目新しさを感じない。

いわゆる商品企画面で停滞が起きていると感じるが、それ以上にマーチャンダイジングにも異変をきたしているのではないかと感じられる。

とりわけ気になったのが、2021年秋に投入された防寒アウター類の数量設定である。

以前にも書いたが再度整理して考えてみよう。

まず、昨年12月の売れ行き減少に対するファーストリテイリングのコメントは

〇12月は、4週目まで気温が高く推移したことから、防寒衣料の販売に苦戦しました。 最終週は気温の低下に加え、年末祭が好調だったことで増収となりましたが、月全体では減収となりました。

となっている。

繰り返すが、たしかに昨年12月は25日ごろまでは比較的高気温だったが、26日ごろから寒波が襲来した。

25日までは確かに防寒アウターの販売は苦戦しただろう。暖かいのに分厚いダウン類を買う人は今の時代は少ない。しかし、26日に寒波が襲来したのなら、売れ行きは好転するはずである。いや、好転しないならマーチャンダイジングがおかしいということになる。

そしてそのまま寒さが続いた1月の既存店売り上げは、というと前年割れである。そのときのコメントがこれだ。

〇1月は、防寒衣料の在庫の過少や、セール時期での売り込みが不十分だったこと、 入庫遅延の影響で春物商品の立ち上げが遅れたことにより、既存店売上高は減収となりました。

特に気になるのが赤字にした部分である。寒さが続いたにもかかわらず「在庫過少」に陥ったということは、とりもなおさず、防寒アウター類の数量を少なめに作っていたということになる。これは恐らくは暖冬を予想してのことになるだろう。

また「セール時期での売り込みが不十分」というのは、売れ行きが芳しくないにもかかわらず値下げが不十分で中途半端な値下げをしたが売れなかったということになるだろう。

 

もちろん、ユニクロは1年くらい前から商品を企画し、半年くらい前から生産に取り掛かるので、期近対応は昔から難しいということは分かっている。その分、売れ残った商品を格安に値下げして投げ売り処分をするという手法でこれまで切り抜けてきた。

だが、今回は防寒物の生産量を減らしたことと同時に、不良品の値引き率を抑えたために売れ行きが不振に終わったということは、どちらもマーチャンダイジングの失敗だといえる。

このことはマサ佐藤氏もブログで検証しておられる。

2021AWシーズンの検証の際にすべきこととは?

 

ファストリテイリングのコメントを見る限りでは、今年は防寒衣料の仕込みが少なく、特に寒くなってからの売上に苦戦したということが見て取れます。(但し、12月・1月のコメントはナニイッテルノカワカンナイ?状態ですが)このことは、UNIQLO以外の他社ショップでも見られた現象で、推測するに、過去3年が暖冬だった為、防寒衣料を多く余らせてしまった反省から、防寒衣料の売上予算を大幅に下げたMD設計をしたことが要因だと考えられます。

以上のことを踏まえ、21年AW商戦の検証を帰納的な思考で検証・分析を行えば。

”2021年AWの防寒商品の仕込みが足りなかった!”

となります。

このあと、防寒着のIF検証を行っておられるので興味のある方はそちらをご覧いただきたい。

 

1年前、半年前に気候を予測することは不可能に近いから、ともすれば「クイックレスポンス(QR)対応ガー」と言い出す人間も出てきそうだが、ユニクロの生産数量の多さや品質管理の厳しさを考慮すると同時に、現在の国内外の工場の状況も併せて考えると、リードタイムをこれ以上短縮することは不可能だろう。また、他の国内アパレルがこれ以上生産リードタイムを短縮することもかなり難しいだろう。

 

なぜ、ユニクロがこんなお粗末な結果になったのかということを考えてみると、あくまでも推論に過ぎないが、「プロパー消化率」という指標を「異常に重視」しすぎたためではないだろうか。

プロパー消化率を異常に重視し、異常に高く目標設定したことが、今回の「在庫過少」「セールでの売り込み不足」につながったのではないかと当方には見える。

理由は、プロパー消化率というのは定価でどれだけ売れるかということを割合で示したものである。はっきり言ってプロパー消化率100%はユニクロほどの規模になると不可能である。必ず売れ残りは出るから、その売れ残りを投げ売ってでも完売させるというやり方にならざるを得ない。

しかし、「プロパー消化率を100に限りなく近づけること」を目標に掲げられたらどうだろうか?まず、「必ず売り切れるだろう」という数量しか作り込まなくなる。となると、通常の人間なら少な目に抑えておく。これが在庫過少につながる。そして、値引きなしで売ろうとすると、売れ行き不振商品でも思い切った値引きはできなくなる。これまでのユニクロ、ジーユーならいきなり半額とか990円にまで値下げしていたのが、200円引きとか500円引き程度の小幅な値引きしかしなくなる。現に昨年秋くらいからそういう値引きに変わっている。

そこそこに人気のある商品ならその程度のビビった値引きでも売れるだろうが、死筋商品は不人気商品なのだから思い切った投げ売りが必要である。それこそ各メディアやコンサル各氏が絶賛するSHEINのように2枚目99%オフ(実質二枚目無料)にしてでも売り飛ばす方が正しい。

 

 

ユニクロ、ジーユーの場合は、恐らくは本部が値引きを決めているのだろうから、本部がその決断をすべきである。プロパー消化率よりも「粗利益高」「営業利益高」を本部は重視すべきである。

「プロパー消化率を高めろ!」とか「プロパー消化率〇%達成」とかそういう目標設定では生産数量設定も値引き額設定もチビってしまうのは当然である。それよりも「粗利益高〇円」「営業利益高〇円」という目標設定にすれば、本部担当者も「あと〇円の値引きができる」と考えられ、死筋商品に思い切った値引きができるし、「〇円まで値引きができる」となれば商品数量も「過少に抑える」という発想はなくなるだろう。

繰り返すがあくまでも推論に過ぎないが、ユニクロの在庫過少、セール不振の原因は「プロパー消化率」という指標を「異常に重視しすぎた」ことが原因ではないかと思っている。

 

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