小規模ファッション専門学校の閉校が続くが、業界知識の伝達は必要不可欠だと考えているという話
2022年3月30日 ファッション専門学校 2
5年半くらいに渡って、専門学校の非常勤講師をさせてもらってきたが、その学校のファッション科が2023年3月末で終了する。
ヒューマンアカデミーというところだが、当方が通っている大阪校を含めて全校一斉に今いる在校生が卒業したらファッション科は終了というわけだ。
このブログを始めたころから、ファッション専門学校の危機というのは、しばしば報道されてきた。
理由は大きく分けると3つくらいになる。
1、少子化による生徒数の減少
2、少子化の中でファッション業界へ進みたいという生徒がさらに減少
3、ファッション業界は斜陽産業という世間的認識の高まり
である。
少子化による生徒数減少はファッション専門学校だけの問題ではない。俗にFラン大学と呼ばれる低偏差値大学も軒並み入学者数を減らしている。
つぎに2だが、これは3とリンクしていて、ファッション業界は斜陽産業であるという世間的認識が高まったため、そこに「わざわざ」進みたいという生徒数がさらに減少した。またそこに進むことを良しとしない親御さんは増えた。
一応、3人の子供の父親を26年くらいやってる当方からしても、先細る業界へわざわざ我が子を進ませたいとは思わないのは当然だろう。
当方の場合は、苦労をさせたくないというよりは、中高年になった時にその業界が無くなって仕事に困るようにならないでほしいと思っているからである。古い人間なので若いうちは苦労はした方が良いと思っている。
関西でも小規模ファッション専門学校は近年次々と閉校している。
2020年3月末でエスモード京都校と京都のディーズファッション専門学校は閉校した。全国的に今後ますます小規模ファッション専門学校の閉校は増えるだろう。
東京、大阪を中心に一握りの大規模ファッション専門学校だけが残るということになるだろうし、ファッション専門学校の入学者数が増加に転じるような未来はないだろう。
その一方で、例えば芸能人や有名ユーチューバーなど、有名になった人は何故か飲食と洋服をやりたがるという謎の習性がある。
有名になってカネももってるんだから、好きな服を買えばいいと思うのだが、彼らは何故かオリジナルの洋服を作りたがる。飲食店にしても同様である。なぜ自分の飲食店をわざわざ作りたがるのか理解に苦しむ。
実際に、何かのビジネスでカネが儲かるようになったという若い社会人(有名人ではないが)がヒューマンアカデミー大阪校に入学したことがあった。
また、専門学校とは関係ないが、某スポーツ選手(野球とかサッカーほどメジャーではない)から洋服を作りたいという相談を受けたこともあった。
一応、細かく当方の知っている範囲で、製造の工程や業界のビジネス構造の話をさせてもらったが、正直なところ、話は全く噛み合っていなかった。
そりゃお前の説明が下手くそだからだろ?と言われればそれまでなのだが、ヒューマンアカデミー大阪校と、大阪文化服装学院の夜間コースで複数年の講師をさせてもらって、そこまで話が理解できないと言われたことはないので、個人的には認識の前提が全く異なるのだろうと思っている。
繊維ファッション関連の報道についてSNS上で業界関係者と業界に無関係な素人の認識が大きく異なることをこの10年間飽きるほど見てきた。
もちろん、業界関係者でも工程によっては得意不得意があるので、まるっきりその分野については知識不足の方もいる。また知識はあっても自己の利益のためだけにポジショントークに終始されるエラい先生方も掃いて捨てるほどおられる。
だが、やっぱり素人さんとは、認識の前提が大きく異なっていると感じる。
洋服や生地、糸、ビジネス構造が一般大衆に適正に伝わらない根本的な原因はここではないかと最近思うようになった。
翻って自分自身を顧みてみると、まかり間違って大学卒業後に洋服販売員になってしまった。そしてその後、97年から業界新聞記者になってしまった。
就職当時、転職当時に業界知識があったかと思い返してみると、全く知識が無かった。
例えば、販売店に配属になった直後の春、小泉アパレルのインド綿スカートが飛ぶように売れていた。店長や先輩販売員は「小泉さんの商品はいつも売れるよね」なんて話していたが、当方からすると「小泉アパレル」なんて社名は初めて聞いた。当時、小泉と聞いて思い出すのは、アホの一つ覚えで「郵政民営化」しか叫ばない政治家の名前しかなかった。
そういえば、当方には瀧定大阪に入社した同級生がいるが、この同級生も「就職活動をするまで瀧定大阪なんて会社は知らなかった」と告白している。当方も業界新聞記者になるまで瀧定大阪なんて会社は知らなかった。
恐らくはそういうことなのだろうと思う。
今、繊維ファッション業界とファッション専門学校に求められていることは、キラキラした上っ面の華やかさを喧伝することではなく、現実に則した業界の構造とか工程とか知識をポジショントーク抜きで喧伝することではないかと思う。
カネを持ったど素人がオリジナル洋服を作りたがる謎の風潮は高まるばかりで、それを実現させるために、OEM屋・ODM屋が仲介しているのだが、ここでのトラブルや行き違いは年々酷さを増すばかりである。
素人感覚は必要だが、素人のままでは困るのである。
当方も今年52歳を迎え、先行きも見えているし、今後大成しないということも確実に見えてきた。
今後はこのそのような発信?講座?などをしていくことが業界への恩返し(言うほどの恩は受けていないと思うがw)ではないかと思うようになってきた。知識の伝達みたいなことは不要ではないと思っている。
今回は、そんなジジイのボヤっとした抱負である。
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comment
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BOCONON より: 2022/03/30(水) 4:35 PM
スポーツ選手や芸能人やモデルはアパレルや飲食店を始めたがるけれど大方は失敗する,というのは南さんの仰言る通りフツーの商売人とは「認識の前提が大きく異なっている」からだと思われます。具体的には――
①自分がCMに出たりイメージキャラクターになって商品が売れるなら自分が直接商品作って売ればもっとお金になるはず
②有名人には良からぬ人間があやしげな儲け話を持って寄って来る事がよくある
③既に本業で高収入を得ているから税金対策になる(場合もある)
④「一流の物や人を知っている」という自信がある・・・といったところ。①~④まで皆失敗する理由にはなっても成功する理由にはなりませんね。要はシロウトのまんま,コツコツ地道に修行も勉強もせず必死さもなくて商売で成功しようという事だもの,そりゃ「世の中そんなに甘くない」ですわな。
たとえ名前貸しただけだったとしてもその店や企業が不祥事でも起こせば「僕は直接タッチしてないんで…」じゃ済みませんしね。R某やG某みたいに。
ご自身の経験を還元しようとおもわれるなんてすごいですね
尊敬します
一方で そういう貴重なお話を聞きたい学生いるのかなとも思います
インスタントな成功しか関心がないから
手っ取り早く小銭が稼げそうな アパレルを始めようと
いろんな人がするんじゃないですかね
暴露系youtuberがはやってるっそうですから
ガーシーチャンネルの向こうを張った
ナーミーチャンネルで業界の暴露をされて方が
時勢に合ってると思います
もっとも アパレルに関心がある人が少ないので
登録者数は稼げないかもしれませんが