MENU

南充浩 オフィシャルブログ

クラウドファンディングに限らず「過剰なストーリー作り」にはご用心を

2022年3月22日 トレンド 0

すっかりと普及したクラウドファンディング(クラファン)という資金調達方法だが、普及すればするほどトラブルの発生が目立つようになってきた。

先日、紹介されたこの記事は、クラファンの普及のデメリットが浮き彫りにされているのではないかと思う。

 

クラファンで3億6000万円を集めた製品は、なぜ謝罪に追い込まれたのか:「優良誤認」の声も(1/6 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

 

かなり長文なので、当方が要点をまとめてみる。

 

次世代の超音波食洗機というキャッチコピーが書かれた「ザ・ウォッシャー・プロ」は、自宅のシンクや洗い桶に水をためて、パワフルな超音波により最短30秒で食器類を洗浄できるのが特徴だ。一般的な食洗機での洗浄が推奨されていないフライパンや鍋から、野菜や海鮮、換気扇などの家電部品まで、幅広く洗浄できるということで、話題を呼んだ。

 

この製品のクラファンで3億6000万円が集まったという。アパレル系からすれば羨ましい限りだろう。

 

『「The Washer Pro」は弊社と超音波技術に特化したテクノロジー会社と手を組んで、1.6億円の研究費をかけて6回モデルチェンジしてきました。10年間試行錯誤を経た集大成ともいえるBDPシリーズ最高峰の機種です』(「ザ・ウォッシャー・プロ」のプロジェクトのページから引用)

 

との「ストーリー」が語られていて、クラファンというか、現在のネット通販に手慣れている印象を強く受ける。

 

弊社とは同プロジェクトの実行者である「Brand Design Plus(ブランド・デザイン・プラス)」(以下、ブランド社)を指す。この文章は日本語にやや違和感があるが、素直に理解すると、ブランド社とテクノロジー会社が、10年の歳月と1億6000万円の研究費をかけて「ザ・ウォッシャー・プロ」を共同開発したのだと受け取れる。

 

とあり、当方もそのように読める。まあ、昨今のSNS上でのやりとりを見ると、人は誰でも同じように文章を読解できるとは限らないようだから、そう読めないと思う人も中にはいるのだろう。

この製品は6代目なのだそうだが、この説明文だけを見ると「ブランド社」と「テクノロジー社」が共同で初代から6代目まで開発してきたと読める。まあ、以下同文。

しかし、この記事によると、実態は異なっていて初代から4代目までは「テクノロジー社」が独自で開発したもので、「ブランド社」は5代目の開発から参画したのだという。

となると「ブランド社」は「10年の歳月」は費やしておらず、せいぜい3年くらいということになる。また1億6000万円の開発費のうち、3分の1かもっと少額しか費やしていないのではないかということになる。ここが「優良誤認」だと言われても仕方がないところとなっている。

 

この「テクノロジー会社」とは中国企業のようで、ある企業のWebサイトに、ロゴを除きデザインが似通った超音波食洗機が販売されていた。これについてブランド社に尋ねたところ、以下の返答だった。

 

ブランド社側の言い分とすると、「パワー、本体の大きさ、音量、パネル、対応する食器、など色んな面で弊社の商品とは違う商品です。」とのことだが、一目で類似品と素人目に見える商品が他社から売られているということに対しては、普通の消費者は釈然としない気持ちになる。

 

マクアケの担当者に確認したところ、同製品の製法は「OEM生産」となるそうだ。この場合、ブランド社が委託先企業に対して、自社ブランド製品の製造を委託。委託先企業が自社の技術などを使って製造した製品をブランド社に納品。ブランド社が自社ブランドの製品として販売する流れだ。

上記を踏まえると、プロジェクトページ内の開発背景は誤解を生む可能性が大きく、5代から開発に参入したにもかかわらず、「BDP(ブランド・デザイン・プラス)シリーズ最高峰の機種」と書かれている。これらは、誇大表現や優良誤認にあたるのではないか。それが、複数のサポーターや消費者が指摘したポイントの1つだった。

 

とのことで、このブログの読者の方々はとっくにご存知だと思うが、OEM生産とは、相手先のブランド名とデザインで、生産を請け負うという仕組みで、自社工場を持たないことが多いアパレル業界では日常茶飯事の生産体制である。

しかし、当方は、「テクノロジー社」が独自に販売していた製品が素人目から見てほとんど見分けがつかないということから考えると、実態はOEMではなくODM生産だったのではないかと考えてしまう。

ODM生産とは、これも繰り返しになるが、デザイン作りから生産までを相手先のブランド名で請け負うという生産方法であり、アパレル業界では現在はこれが主流となっており、業界内で「OEM屋さん」という場合は、9割以上の確率でODM屋を指しているという状態にある。

つまり、デザインがほとんど見分けがつかないのであれば、実態はOEM生産ですらなくODM生産だったのではないかということになる。

ODM生産の商品を、さも自分たちが10年以上かけて共同開発しましたというのは、「優良誤認を誘う」として指摘されても当然ではないかと思う。

 

さて、今回の問題は近年流行りの「過剰なストーリー作り」にあるといえるのではないか。要するに「盛りすぎている」のである。

たしかに、効能やスペックだけでは伝わりにくい。だから「ストーリー作りが重要ですよ」と2000年代後半からいろいろな販促セミナーで提案されてきた。だが、物事は必ずいつかは普及する。「ストーリー作り」が普及して蔓延しすぎた反動として、「過剰なストーリー」「盛りすぎたストーリー」がSNSの普及とともに世の中に溢れかえるようになってしまった。

24時間・365日感動話をツイートし続けている怪しげなビジネスアカウント、さっぱりよくわからない深イイ話モドキで多数の信者を獲得しているオンラインサロン主などである。

今回のこの製品もそれらと同類といえるだろう。

もちろん「ストーリー作り」は重要で、衣料品に限らず、国内の事業者は欧米企業に比べてこれが下手くそだと言われてきた。しかし、今の若い世代の中には「過剰なストーリー作り」を得意とする者が多数現れるようになった。ある意味で良い部分もあるのだろうが、当方は「巧言令色鮮し仁」だと思っているので、この類の人間はあまり好きではない。

「ストーリー作り」に巧みな人間が多数出現したというのは、良い部分もあるのだろうが、そこは匙加減が重要で、あまりに「盛りすぎる」と今回のような指摘が相次ぎ謝罪に追い込まれてしまうというわけだ。目立てば目立つほど、成功すればするほど逆にそのリスクは高くなる。

アパレルブランドでもインフルエンサーブランドでもアパレルのクラファンでもこの手の「盛りすぎる」表現が近年は溢れているように感じる。衣料品やファッション雑貨という商品では、この食洗機ほどの金額は到底集まらないだろうが、他山の石としておいた方がよいのではないかと思った次第だ。

 

 

「盛らない」シチズンの超音波洗浄機をどうぞ~

Message

南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ