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南充浩 オフィシャルブログ

目新しさがない

2014年3月12日 未分類 0

 コメントまで出しておいてあれだけれども、マスコミが煽るほどには今春夏はブルージーンズは復活しないのではないかと考えている。

もう少しいうと、マスコミやSPAブランド、セレクトショップによるブルージーンズの大量露出が成功したとして、本格的に復活するのは今秋冬以降ではないかと思う。

理由としては、ジーンズというアイテム自体に新しい要素があまり見受けられないからである。
ジーンズの主流は相変わらずスキニーであり、そこにテイパードストレートが加わる。
男女ともにこの2シルエットである。

スキニー自体は2008年以降今までずっと主流であり続けたシルエットだから目新しさはない。
たぶん、多くの消費者は何本かタンス在庫を持っている状態ではないだろうか。
テイパードストレートは過去、スキニーほどの広がりはなかったが、それでも2年前くらいからは注目されている。

次に加工方法である。
ジーンズが薄く色落ちするのは洗い加工業者による洗い加工を施されたからであり、その加工方法は過去でほとんど出尽くしている。
技術的に最新のものはレーザー光線による抜染加工になるが、これはよほどの図柄を考案しないと新鮮さが出ない。逆にこれまでのヒゲやアタリ感を強調した中古加工をレーザーで再現することができる。
もし、中古加工をレーザーで再現した場合、見た目は何の新鮮さもない。

それよりもこのところ、ブルージーンズの主流は濃紺のノンウォッシュ、ワンウォッシュである。
今春夏もその人気が継続している。この濃紺ブームが終わらない限りは洗い加工が浮上することはない。

ジーンズのこれまでの背景を手短にまとめると以上のようになる。
そのうえで、ファッションスナップドットコムの記事にコメントが引用された。

クラッシュ、ダメージ、ケミカルウォッシュ…ジーンズ流行の兆し
http://www.fashionsnap.com/inside/jeans14-trend/

記事を読んでもらえればわかるが、トレンド最先端ブランドの事例が取り上げられている。
これがマスに広がるとしても、その拡散浸透には時間がかかる。
反対にトレンド最先端層に注目されていながらマスに広がらずに終わったトレンドも過去にいくつもあった。
今回の激しい洗い加工がマスに広がらずに終わってしまう可能性だってある。

この記事に対して、筆者と交流のあるデニム製造業者や縫製業者は危惧をあらわにしている。

なぜかというと洗い加工が重点的に注目されているからである。
かつて90年代半ばのビンテージジーンズブーム以来、過剰に洗い加工の技法が注目された。
洗い加工は無料オプションではなく、有料オプションである。そのため、ワンウォッシュ程度の簡単な洗いなら料金は安いが、ダメージ&クラッシュ&リペア加工なんて手の込んだ洗い加工なら料金は恐ろしく高くなる。

料金は企業間で差があるのだが、ビンテージジーンズブームのころのベーシックなヒゲとアタリ感を出した加工で、1本あたり平均1000円前後だった。
破ってほどいて裏から生地を当てて縫うなんていう加工を施したら、加工料金だけで何千円という価格になる。

ジーンズの店頭販売価格を押し上げた原因の一つが過剰な洗い加工にある。

あのころのマスコミの報道価値基準は「いかに手の込んだ洗い加工を施したか」に求められており、洗い加工業者がデニム業界をけん引しているような風潮まであった。

先のデニム生地製造業者や縫製業者はそういう風潮の復活に危惧を抱いているわけである。

ジーンズはデニム生地があって縫製があって洗い加工があって成り立つアイテムである。どれか一つの工程だけで製品の良し悪しを左右することは難しい。

過去のジーンズブームには毎回何か新しさがあった。

90年代前半のソフトジーンズブーム
90年代半ばのビンテージジーンズブーム
2000年ごろのローライズジーンズブーム
2000年代半ばの高級インポートジーンズブーム
2008年ごろから今に続くスキニージーンズブーム

である。

ソフトジーンズの目新しさは素材である。レーヨンやテンセル、モダールなどを交織することで今までのデニム生地にない柔らかさがあった。

ビンテージジーンズは素材的にはソフトジーンズと真逆である。何十年前の凹凸の多い綿100%のかたくてゴワゴワしたデニム生地が使われている。
また着こなし的にもドレッシー感のあるソフトジーンズとは真逆で、土臭いワークテイストにあふれている。

ローライズジーンズブームは今に至るエポックメイキングの一つといえる。

それまでオヘソの下あたりまであったジーンズの股上を一気に浅くしたのがローライズである。
現在のジーンズもこの延長線上にある。
ブームが過熱していたころは股上が浅ければ浅いほど良いみたいな変な風潮があり、ちょっとしゃがんだらお尻の割れ目丸見えみたいな商品もあった。

そのあと、アメリカやイタリアからの高額インポートジーンズがブームになり、このブーム過熱時も「価格が高ければ高いほど良い」という変な風潮があった。

ブーム過熱時というのはよくわからない風潮が生まれる。

洗い加工が最も注目されたのもこのころである。
ちなみにレディースのシルエットはこのころまではブーツカットが主流だったが、このブームの終焉とともにブーツカットは急速に注目を失う。

その次が現在に続くスキニージーンズである。

2010年ごろは、若い人やトレンドに敏感な層はスキニーを着用し、そうでない層の女性はブーツカットジーンズを着用していたから、一目でその女性がどのあたりの年代なのか、トレンドには敏感なのかそうではないのかが判別できた時期である。

で、こうして見ると、今春夏のジーンズにはその目新しい何かがない。
だから筆者はジーンズ復活という報道には懐疑的なのである。

ちょっと注意深く推移を見守りたい。

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