「商品企画内容」「マーチャンダイジング」「海外政策」とことごとく裏目に出始めたユニクロ
2022年3月4日 月次速報 3
何年間、何十年間と活動してくれば何をやっても上手く行かないという時期も必ずある。
最善を尽くしたつもりでもタイミングが狂ってしまい、効果が出ないという時期もある。
ユニクロは今、そういう時期にあるのではないかと感じられる。2021年から潮目が変わった。
2020年はコロナ禍にもかかわらず、エアリズムマスク、+Jの復活フィーバーなど、好調に終わった。
しかし、2021年からは、昨年物の焼き直し商品の増加による陳腐化からの既存店売上高の減少、新疆綿の使用をめぐるトラブルとそれに対する歯切れの悪いコメント、とパッとしない流れに転じた。
2022年に入ってもこのムードは変わっていない。
商品面に関していえば、2月末までは実質的に21年冬物が主力となるから、21年の商況の延長線上にある。1月、2月とも既存店売上高が大幅減少している。
国内ユニクロ2月度は14.0%減 無印、アダストリア、ユナイテッドアローズも前年割れ – WWDJAPAN
ユニクロの国内既存店+ECの売上高は前年同月比14.0%減。7カ月連続の前年割れと苦戦が続いており、22年8月期国内ユニクロの業績予想(減収減益)通りの推移となっている。
とのことである。
そして、この原因についてのユニクロ側のコメントが何かおかしくなっていると感じられてならない。
2月は、月を通して気温が低かった影響により、春物商品の立ち上がりに苦戦し、既存店売上高は減収となりました。
とある。
覚えておられるだろうか?今年1月に発表された昨年12月度の月次速報のユニクロ側のコメントを。
あのときは
「12月下旬まで暖冬が続き防寒アウターが苦戦した」
と述べているのである。
暖冬傾向でも苦戦、気温低下でも苦戦。一体どういう気温状態なら好調に売れるというのか?もちろん12月と2月では2カ月間時期が異なるから、消費者の購買マインドも微妙に異なる。しかし、不調の原因を気温に押し付けすぎではないか。ではこれまでの好調も気温任せだったというのだろうか?「何の工夫も無かったがこれまで気温に助けられたおかげで国内8000億円規模まで拡大成長できました」と言いたいのだろうか?(笑)
ちなみに1月度売上速報ではユニクロはこのようなコメントを出している。
専門店1月度は冷え込み効果で前年超え ただしユニクロは6カ月連続の苦戦 – WWDJAPAN
「防寒衣料を中心に売れ筋商品の在庫を十分に持てていなかったことに加え、年初の新年祭などのセール時期の売り込みが不十分だった」
これは壮大なコントなのだろうか?(笑)
12月は暖冬で防寒が売れずに苦戦。1月は冷え込んだら在庫が少なくて苦戦。2月は冷え込みが続いて春物が売れずに苦戦。
もし、昨年12月の上旬から冷え込んでいたとしたら、12月も在庫過少で苦戦していたのではないのか?お分かりだろうか?ユニクロのコメントのおかしさ・異常さが。
ユニクロ12月度は11%減 気温高く5カ月連続の前年割れ – WWDJAPAN
「12月26日以降は気温も下がり、年末祭も好調だったが、それまでの期間が温かったことで、防寒商品全般の動きが鈍かった」と広報担当者。
12月26日までは暖冬で防寒が売れず、26日以降防寒アウターが動き始めた。これは事実だろう。実際に自分の体感気温もほぼ同様である。
しかし、そのまま寒い1月に突入して「防寒アウターの在庫が少なすぎた」というのであれば、仮にもし12月上旬から冷え込んだとしても1月と同じ結果になったのではないか?論理的に考えればそうなる。
ご存知のように、他社のSPAブランドや百貨店ブランドと異なり、ユニクロは期中追加生産はほとんど行わない。他の衣料品よりも生産リードタイムが長めに必要になるダウンジャケット・中綿入りジャケットなどの防寒アウターを期中追加生産することはあり得ない。
ということは、12月上旬に寒波が来たと仮定しても在庫過少で売り逃しを生じさせ、前年実績を割り込んでいたということになる。
ユニクロのコメントを2021年のコメントを見ていると、ピントがズレているとしか感じられない。恐らく、マーチャンダイジングが狂っているのだろう。適正な在庫規模を算出できていない。だから防寒アウターの在庫過少が起きる。
他社の2月実績を比べてみるが、自分でやるのは面倒なのでまとめてくださっている方のツイートを引用させていただく。
2月度既存店月次速報 ()内は前々年対比
・Uアローズ 99.1%(89.2%)
・アダストリア 95.9%(86.7%)
・しまむら 105.1%(107.4%)
・国内ユニクロ 86.0%(86.3%)
・無印良品 90.6%(114.8%)
・ニトリ 90.9%(100.3%)
・ワークマン 102.7%(98.9%)
・ライトオン 79.5%(74.3%)要因は気温ではない
— 林 亮介 │ スーツEC👔責任者 (@Rin0717Hayashi) March 3, 2022
しまむらは、前年超え、ユナイテッドアローズはほぼ前年並みである。昨年2月は今年2月ほど寒くはなかった。それでいて両社は前年超え・前年並みを果たしているとすると、ユニクロの大幅な既存店売上高減少の要因は「気温の低下ではない」ということになる。
そして、もう一つの「ズレ」を感じさせるのがロシア事業である。
ウクライナ情勢を受け経済制裁強まるロシア H&Mは販売停止、ユニクロは「状況見て判断」 (fashionsnap.com)
2月末時点で50店舗を出店。同社は現時点ではロシア国内の事業を継続しているが、「今後については、状況を見て判断していく」と回答した。
とあり、新疆綿問題と同じく煮え切らない発言をしている。H&Mの即断とは雲泥の差である。
ウクライナ戦争については、様々な見方があるが、現在、欧米諸国と我が国が強い経済制裁を打ち出している。ロシアは天然資源が豊富とはいえ、GDPは韓国並み(=東京都並み)に小さく、資源以外の経済基盤は脆弱である。
そして、今回の戦争をロシアが勝ったとしても経済的に甚大な被害を被るし、恐らくは欧米諸国からの非難や制裁は続く。
ユニクロがロシア事業に固執すると、新疆綿と同様に欧米から何かしらの制裁を受ける可能性は決して低くないと考えられる。
今回の対応も新疆綿の時と同様に、裏目に出ているといえる。
2021年からは商品企画、マーチャンダイジング設計、海外政策、とことごとく裏目に出ているユニクロだが、今春物を見ていると、昨年春物よりは随分とマシな商品が増えている。
2022年の国内既存店は成長に転じることができるのかどうか、ユニクロの動向に注目したい。
comment
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mmm より: 2022/03/08(火) 12:26 PM
ユニクロは中国を見据えている気がします。
万が一、中国vs台湾とかで同じ構図になった時にどうするのか…
ロシア50店舗に対して中国800店以上で増え続けている
さらには生産拠点でもありますし、ロシアから撤退した場合
ロシアの時は撤退したのに中国は??となるのを見越して
今回の対応になっているのではないでしょうか、、、 -
BOCONON より: 2022/03/14(月) 2:42 AM
僕はユニクロの商品ならこんな感じの比較的薄手ですっきりしたダウンジャケットをクロコダイルとかで2,3着買ってこの冬ずっと着ていました。「ウルトラライトダウンは貧乏くせえし女子ウケ悪いし,アメ横の某店の販売員君とも話したけど,モンクレールとかカナダグースとか(買えないけど)どう見ても街着としてはオーバースペックだし」ということで。
↓
https://www.uniqlo.com/jp/ja/products/E443879-000/00?colorDisplayCode=35&sizeDisplayCode=004真冬には寒いかと思ったけれど,そうでもなかった。でもユニクロはこういうのはむしろ少なくて相変わらずモコモコしたダウンジャケットやウルトラライトダウンだらけで「こういうのそう何枚も持ちたがる奴はあまりおるまい」と思ったことでした。スーパーに店出しているクロコダイルやハッシュパピーの方が(ユニクロよりはお高いけど)そういう点,ずっとオシャレだった。後出しジャンケンみたいだけど,暖冬であればなおの事こういう比較的薄手のダウンジャケットをユニクロは推すべきだったと思います。僕は「なんで去年大量に売れ残っていたバブァーのパチモンみたいなジャケット,今年も売ってんだかな」とも思った。ユニクロ等の推しているオーバーサイズの服も最近ちょくちょく見るようにはなったけど,おっさんおばはんはさすがにあんまり着ていない。中高年があれでは馬鹿に見えるしw ・・・あるいはもうユニクロはお若い人たちしか相手にしない事にした,という事なのか知らん。
いづれ僕はユニクロはどうも進むべき方向を見失っている気がしてなりませぬ。
リモートになると、部屋着があれば良いので、ピーリングが起きようが、色落ちしようが、首が伸びようが買い替えなくなる。
でも大きな要因としては、COCAや、FUN.、WEGOなど価格で戦えるコンペチも増えた上、若者には古着が再燃してきている。
GMSの買い取りアパレルも値段を下げて拮抗してきている。
マーケットのパイを食われているコメントを出すとあの方に叱責去れるのだろう。