最近の「古着人気の報道」に対して少し違和感を覚える理由
2022年2月25日 ジーンズ 3
最近、エスディージーズ(笑)と絡めて「古着ブームだ」と報道されることがある。
まあ、古着屋JAMの人気ぶりなどを知ればブームなのだろうと思うが、イシキタカイ系メディアのように「エスディージーズ(笑)を考えた『全く新しい』消費行動」とか。某エライ先生のように「日本が貧しくなっているからだ」とか、そういう論調には違和感がある。
なぜなら、
1,95年のビンテージジーンズブームの前後も古着屋人気は過熱していた
2、古着屋の服よりジーユーやSHEINなどの投げ売り商品の方がはるかに安い
という2点が理由である。
古着屋についての統計データというのはほとんどないから、自分も含めてどの論者も印象論や感情論になってしまうのだが、今回は当方の印象論としてお聞きいただけるとありがたい。
まず、90年代半ばのビンテージジーンズブームの前後だが、古着屋の人気は過熱した。当方の記憶では、94年ごろからファッション雑誌にビンテージジーンズがチラホラと登場するようになり、それにつれて古着屋という存在の露出も増えた。
何度も書いているように、当方は大学卒業直前までジャスコとイズミヤで買って来た1900円の服で育てられた人間であるから、洋服販売チェーンで働くまで当然、セレクトショップも古着屋も知らなかった。
80年代(当方の中学・高校生時代)にファッション好きな人々がどれほど古着屋を認知し、通っていたのかはわからない。また90年代前半(大学生時代)にファッション好きがどれほど古着屋を愛用していたのかはわからない。ただし、大学生時代になると制服ではなく毎日カジュアル服で通学するので、友人からカジュアル服の話を聞く機会は増えた。大学生時代の当方の身の周りにいた友人たちは「特別なファッション好き」はいなかったから古着屋に関する話を聞くことは無かった。
どちらかというとDCブランド系やジーンズチェーン店系で買う人が多かった。あと、地図の模様が描かれたレザーバッグを持った学生もチラホラいた。(笑)
なので、勤務するまで古着屋なる存在があることさえほとんど知らなかったと言っても過言ではない。
勤務先には古着屋を利用したことがあるという人がチラホラいた。さすがはファッション好きである。
で、95年からビンテージジーンズブームが本格的に盛り上がったが、勤務先の人たちから聞くと、これによって古着の値段、古着ジーンズの値段が格段に上がったということだった。
ブームだったビンテージジーンズには大雑把に分けて2つの商品があった。
1、レプリカや復刻版
2、本物の何十年前のジーンズ
である。
レプリカや復刻版というのは、今作れるので、値段はピンキリだが比較的安かった。9800~29800円くらいが中心価格帯で、ケチな当方ですら9800円なら頑張れば買えた。
本物の年代物のジーンズというのは、当然、今作ることはできないから、古着屋で探すことになる。しかし、何十年も前のジーンズが良好な状態の古着で残っていることなど稀である。商品の量が少なくて、需要が増えれば価格は高騰する。
これによって年代物のジーンズの古着の値段は上がったし、何なら便乗してその他のジーンズの古着の値段も上がった。
この当方ですら、興味本位で古着屋巡りをしたほどのブームだった。
これ以降、超ブームではないが、2000年代もファッション好きからは古着屋は一定の支持を得ることで定着したように見えている。
ウィゴーなんかはこの流れに乗り巨大化し、SPA化に成功した「元古着屋」だといえる。
だから、ことさらに「古着ブーム」というのには違和感があるし、「新しい消費」と呼ばれることにはもっと違和感がある。
で、次に「低価格から古着が売れている」という言説だが、古着店を巡って見ればわかるが、はっきり言って、激安ではない。
プレミア価格の高騰品は除くとして、通常の量産古着でさえそんなに安くはない。はっきり言えば、ジーユーやワークマンの新品の方が安いし、ジーユーやユニクロ、SHEIN、アダストリアあたりの投げ売り品の方がもっと安い。
たしかに日本人の所得が伸びにくいことは事実だろう。
しかし、本当に貧しくて安い服が欲しいなら、ジーユーやワークマンに行くか、低価格ブランドの投げ売り品を買うことが最も適切な行為だろう。
最近は原材料費・燃料費・輸送費の高騰や人件費の上昇で、値引き率が抑えられているが、例えばジーユーの昨年冬に投入されたラウンドヘム長袖Tシャツなんて、590円にまで値下がりしている。長袖Tシャツが欲しい所得の低い人はこれを買うだろう。わざわざ1000円を越える古着の長袖Tシャツを買うとは思えない。
また、ターミナル駅ビルや大型ショッピングモールには必ず、低価格ファッションブランドが入店している。一方、古着屋というのは、一部でネット通販はあるものの、チェーン展開してどこにでもあるというわけではないから、わざわざ店舗を探して出かけなくてはならない。もしくは古着屋が集積しているエリアにでかけるか、である。
所得の低い人がこんな非効率的な買い方をするとは到底思えない。交通費だってかかる。当方の所得が今以上に窮乏したなら必ず、地元のショッピングモールで低価格ブランドの投げ売り品を探すか、駅ビルの低価格ブランドの投げ売り品を探す。
古着屋へ「わざわざ出かける」という時点で、心にある程度の余裕を持った人だということになる。
では古着屋が20年ぶりに再注目されている理由はなんだろうか。これも印象論になるので、またいろいろとご意見をいただきたい。
顧客はファッション好き、もしくはファッションに興味を持った人がほとんどだと思うので、
1、今のマスブランドは同質化しているので、1点物に近い(現存している枚数が少ないから)古着が魅力的に見える(個性的なデザイン物も残っている)
2、プレミア価格物を除いて有名ブランド物が新作より少しは安く買える
あたりが理由ではないかと思う。
いくら人気だとはいえ、純然たる古着屋が現在のウィゴーのように300億円規模にまで成長することはないし、1000億円企業になることもない。
ファッション好きの人たちの「比較的安価な」買い場の1つとして続くだろう。
ただ、現在の国際情勢が崩れて低価格の新品衣料品が製造できなくなれば話は変わってくるかもしれない。
comment
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BOCONON より: 2022/03/14(月) 1:49 AM
古着と言ってもいろいろで,”古着好き” さんの言う通りのようでありますね。①②のような「オシャレのための古着屋」と③の「ただひたすら安いものが欲しい」という人のための古着屋。
僕は古着には詳しくないので,一時勉強しようと思って近所の古着屋,と言ってもハードオフや,上野のモードオフに行ってみたのですが,これは③に当たるもので実際のところ「ゴミの山」としか思えず「いくら安くってもこれじゃ買うもの好きはあんまりおるまい」と思ったことでした。実際あまり客いないし,とに角安いものが欲しいなら東京あたりだと韓国系キリスト教団体がホームレス向けに公園などで配っていたりするから,恥を忍んで列に並べばタダで手に入るし,中にはそうやって手に入れた服をブックオフに売る厚かましい人間までいるようだし,あの手の団体は日本で食べ物や服を配っている写真を撮って韓国であちこちの富裕層に見せて歩くと多額の献金がもらえるそうでウィンウィンですねw
・・・何だかあまり笑えない話ですが。そんなお洒落もへったくれもない話じゃなくて南さんの言っているのはオシャレ系古着や昔で言えば裏原でしか手に入らないような服で個性的な格好がしたい(少し古い言い方を敢えてすれば) “高感度人間” のことなのでしょうが,僕は別に「俺はそこらへんのダサい奴らとは違うんだぞ」的な格好がしたいなどとはあまり思ったことがない。だからその後おしゃれ系古着屋にも行ってみたけれど,結局これも僕にとっては「豚に真珠」あるいは「ゴミの山」で何が面白いのかわかりませんでした。そもそも今回の画像も「誰がこんなおかしな服買うのやら」としか思えないようなもんだし。
しかしまあこんな事ばかり書いていてもボブ・ディラン歌うところの「理解できないものを尤もらしい顔して批評すんな,この馬鹿」でしょうから,この辺でやめておきましょう。
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古着集めて300着超えた人 より: 2022/03/15(火) 8:01 AM
ユニクロは消耗品のEZ系ストレッチパンツとかボトムスくらいしか買いませんね。(バーゲンの在庫処分時に大量に買います。)
古着のイメージって、リーバイス501のレアもの100万円とかの世界観が、一般的ですが
リサイクルショップやメルカリなどで、インポートブランドの服がユニクロの新品価格で買えてしまうことに
気づいた人が、だったら古着でいいやってなるのが今は、主流だと思います。
例えば、ブルックスブラザーズの3シーズン用ステンカラーコートが7000円とかで買えたりすることがあります。
ユニクロのシャツとかは300円で買えます。アルファのN3Bは4980円くらいで買えます。
ラルフローレンやブルックスブラザーズやバーバリーやラコステやフレッドペリーのポロシャツが2000円以下で
買えることが結構あります。デュペチカのダウンが15000円で買えたり、
バブァーのアウターが1万円で買えたり。リサイクルショップの衣類ってよーく見るとお宝なことが結構あります。
スニーカーなんかも安くて、スタンスミスを1980円で買ったことがあります。ABCマート用の合成革廉価版ではなく
本革バージョンのほうが1980円でした。
1万円もあれば、リサイクルショップでは、いろんなブランドの服を沢山買えます。
コートなんかは5000円もあれば、セレショ系のものは大半買えます。バーバリーやラルフあたりも探せば1万以下で買えます。
そういうことに気づいてしまうと、ユニクロで服買うことすら馬鹿らしくなるのだと思います。
古着がトレンドと呼ばれる理由に関してのご考査、大変参考になります。
改めて自身でも考察してみると、古着屋のスタイルも多岐に渡るようになっており、客層の棲み分けがされるようになった事で定着していると感じます。
①ファッショントレンド寄りの古着屋
90年代〜2000年代のトレンドを取り入れる若者が多い事で、この年代に人気を博した各地の老舗古着屋や倉庫型の宝探し感覚の古着屋が再注目されている感じがします。
②ブランド古着
ラグタグのようなブランド品を少し安く買える古着屋は、メルカリ等の普及で更に抵抗無くなった気がします。
③リサイクルショップ
ファッションとは無縁で1円でも安くというスタンスであろう方を多く見かけますね。SCブランドくらいならかなり安く買えます。
長々と書きましたが、ここにはSDGsの観点など一切無く、単に各々趣向に合わせた選択肢の一つとして定着している、という感覚です。