製造業者視点のみでは通用しない
2014年3月7日 未分類 0
やはり往年の金看板の力は強いと思う。
ブランドの知名度は一朝一夕で培われたものではないと改めて感じた。
理由は以下のニュースである。
ボブソン/日本の伝統素材を採用したガラパゴス・ジーンズ
http://ryutsuu.biz/topix/g030615.html
これは流通ニュースのサイトに掲載されていたのだが、流通ニュースというサイトに掲載されるネタは大手企業にほぼ限られている。
いまだに「ボブソンってまだ存続していたんですか?」と尋ねられることが多いが、2012年末に新生ボブソン(ボブソンホールディングス)として小規模に再スタートしている。
2013年8月下旬の時点で、自社オンラインショップと阪神百貨店の自主編集レディースジーンズ売り場「ジーンズハウス」しか販路がなかったから、推測すると売上高は5億円未満だろう。
その規模の企業の話題が流通ニュースで取り上げられることはあまりない。
「さすがはボブソンの金看板は違う」と感嘆せざるを得ない。
この記事によると今夏からオカモト商店への卸売りも始まるとのことなので、今期の年商はもう少し増えるだろう。増えても10億円未満だと推測するのだが。
ちなみにオカモト商店は久留米絣のショップを百貨店内を中心に出店しており、サイトで確認したところ現在16店舗を展開しているようだ。
さて、今回の新商品発表だが、「あーあ、そっちへ行っちゃったか」というのが正直な感想である。
商品内容について引用する。
四国今治市のタオル素材や九州久留米カスリを素材に採用したジーンズを販売する。
日本の伝統的地場産業との協同により、日本のジーンズを独自に進化させ、廉価さを追求して海外の生産基地へシフトしたSPA企業がコピーできない商品を作ることで、日本の地場産業とジーンズ売場の活性化を目指す。
第1弾は、四国今治市のタオル素材のジーンズで、価格は1万6800円~1万7800円を予定する。第二弾は、九州久留米カスリを採用したジーンズで、価格は2万3800円~2万6800円を予定する。
とのことである。
商品を直接見ていないので何とも言えないが、文面を読んだ限りではこの企画はあまり大きな成功をおさめられないと感じる。
ちなみに流通ニュースにも商品写真が掲載されているが、あまり画質が良くないから実態はわからない。
まず、タオルジーンズなるものだが、これはどこに需要があるのだろう?
たしかに、今春夏向け商品として、各ブランドからパイル生地を使ったアイテムが提案されている。
ファッショントレンド的に分析するなら、今春夏はパイル生地のポロシャツがトレンドに浮上している。
筆者からするとなんだか30~40年前に見たような感じで古臭い印象を受けるのだが、若い人にとってはそのレトロ感がイイということになるのだろう。
また機能的に見ると吸水性の高いタオル生地を使ったトップスは春夏シーズンに最適だろう。
そういう観点からこのボブソンのジーンズは開発されたと推測するのだが、上半身に比べて下半身の汗を気にする人はあまり多くないと感じるので、ボトムスにタオル機能が必要かといわれるとちょっと疑問を感じる。
ボトムスの涼しさを追求する人なら男女ともショートパンツを着用するだろう。
次に価格である。
メイドインジャパンの今治タオル生地を使ったパンツということで1万8000円弱の価格設定となっているが、果たしてこの商品にこの価格が見合うだろうか。筆者は疑問を感じる。
1万8000円内外のジーンズというのは、インポートブランドと横並びであり、インポートジーンズを購入するお客はファッション衣料として購入するわけだから、メイドインナンチャラとかナンチャラ生地を使用とかよりもファッション性を重視する。
インポートブランドに並ぶようなファッション性が提案できているのだろうか?
久留米絣ジーンズの方も同じである。
日本製の高級素材ということになると、和装系の素材が挙げられる。
大島紬だとか小千谷縮だとか、久留米絣だとか丹後縮緬だとか。
素材自体に付加価値性は感じられるものの、2万円台という価格設定は高すぎる。
もちろん、素材背景などは洋装とは異なるため、一概に「高すぎる」というのはフェアではないが、こと「ジーンズ」というアイテムとして見たときに2万円台のジーンズは高すぎる。
先ほども書いたように、欧米からのインポートジーンズの主要価格帯が1万円台後半である。
2万円台のジーンズはそれらよりも高いということになる。
それほどのブランドステイタスがあるのかということが問題になる。
さらに重要なことは現在のボブソンはレディースに特化しているということである。
メイドインジャパンのナンチャラ生地を使いましたよ。
メイドインジャパンのナンチャラ生地を使ったから価格が1万8000~2万7000円になっちゃいましたよ。
という販促プロモーションが生かせるのはメンズである。
レディースではメイドインジャパンとか伝統のナンチャラ素材なんてことはあまり関係ない。
メイドインジャパンの生地を使っているのに割安感が感じられる見た目とデザインになっていれば話は別だが、見た目やデザインよりも先行して製造地とか製法とか生地のウンチクを語られても女性客は興味を示さない。
その手法が通用するのはメンズである。
そしてこういう手法を嬉々として取り入れるのが国内生地産地企業である。
現在、産地企業がオリジナルの製品を開発するケースが増えた。その際、筆者の体感では8割くらいの企業が、作り手の論理で動いており、
○○産地の国産生地を使った高品質高価格の商品
というスタンスである。
しかし、多くの場合、デザインが残念だったり、販促手法が残念だったり、色柄が残念だったり、すべてが残念だったりする。
デザインはイマイチだけど○○産地の国産生地を使った高品質な商品なので値段は高いですよ。
こういう商品が市場に受け入れられる可能性は極度に低い。
そして多くの国内産地企業がそういう商品を製造してしまっている。
申し訳ないが、今回のボブソンの企画は、どうしても筆者にはその類に見えてしまう。
極めて製造業者志向といえるだろう。
筆者の勝手な思いだが、この類の商品なら、旧ボブソンが得意としていた機能性ジーンズの方が需要が多いのではないか。
保温ジーンズをいち早く市場に投入したのはボブソンだし、涼感ジーンズの開発も早かった。
もし、90年代のままのボブソンなら今頃は超ストレッチジーンズとか、下着が透けないホワイトジーンズとか、防汚加工の淡色ジーンズなんていう商品を開発していたのではないかと想像してしまう。
あくまでも想像にすぎないのだが。
閑話休題
今回の新商品はメンズに向けた手法をレディース用として打ち出しているので、ミスマッチ感は否めない。
今後もレディースブランドとして特化するのであれば、軌道修正が必要ではないか。
伝統の金看板を持つだけに再浮上してもらいたいとは思う。