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南充浩 オフィシャルブログ

ファン集団からの脱却が求められている

2014年3月5日 未分類 0

 岡山県・児島のジーンズ製造業が自社ブランド・自社製品の展開に乗り出したという記事が繊研プラスに掲載されている。

【経営】ジーンズ産地動く 製造業自ら、前へ
http://www.senken.co.jp/news/32349/

ジーンズ産地として世界的に知られる岡山県・児島。ジーンズの縫製や洗い加工、OEM(相手先ブランドによる生産)を本業とする製造業の間で、ファクトリーブランドを提案したり、製造業同士が連携して受注をとろうという動きが増えている。国内ジーンズ市場は回復が進まず、小売市場もまだ回復していない。「受注があっても加工賃は厳しい」と言われる現状に対し、「このままでは」と待ちきれず、製造業自ら”前へ”と出て行く事例が生まれている。

とある。

例示されている企業の中には最新情報が少し異なってきたところもあるのだが、大枠はそんな感じであり、この記事の趣旨自体はまったくその通りである。

筆者も直接知っている企業が何社かあるのだが、個人的にはこれらの取り組みがどれほど有効なのか疑問を感じる。

というのは、これらの企業はジーンズという製品の提案に終始しているからである。

もちろん、ジーンズ製造業だからジーンズ製造が一番の強みだからそれを打ち出すことは間違いではない。
けれども、ジーンズを扱っているブランドなんて現在でも掃いて捨てるほどある。
そんな中にまた新たに無名に近いブランドがジーンズを投入してどれほどの売れ行きがあるのか正直なところ疑問である。

数年という中期的視野に立てばある程度の売り上げ規模は期待できるかもわからない。
しかし、これら製造業に数年という視野で活動できているところがどれほどあるだろうか。皆無とは言わないが、ごく少数派であるというのが筆者の体感である。

むしろ、ここに挙げられている企業よりは、生活雑貨・インテリアに活路を見出した企業の方が一枚上手だったと評価できる。

以前にも挙げたことがあるが、洗い加工場の山陽ハイクリーナーは、デニム生地を使った生活雑貨・インテリアブランド「araiyan」を立ち上げている。

またナショナルブランドの中でも「リー」は目先が効く。
昨年秋から開始された東急ハンズとビームスのコラボ企画「ワークハンズ」ではデニムや帆布など厚手生地によるワークウェアや生活雑貨が提案されている。

この中でデニムエプロンがあるがそれは「リー」の企画製造である。
聴けば、「リー」はこのほかにもカフェのエプロンや制服などをデニムで別注製造しており、いわゆる「ジーンズ」以外での需要の掘り起こしに積極的であり、取り組みの方向性が他のナショナルブランドとは一線を画している。

ちなみにこの「ワークハンズ」で販売されている13000円前後のメイドインジャパンジーンズはベティスミスが製造を請け負っており、専業メーカーと呼ばれる中では「リー」と同様に目先が効く企業である。
またベティスミスはJR西日本とのコラボデニムバッグの企画製造で知名度を高めており、「ジーンズ」だけに依存しない取り組みをいち早く始めている。

ブランド数が掃いて捨てるほどある「ジーンズ」というアイテムに今更、無名ブランドが参入するメリットを筆者はあまり感じられない。
「製造業が自社でデザイン企画していますよ」ということが大した付加価値にはならないと考えられる。
なぜなら、消費者にとってはそのジーンズを企画した企業が製造業であろうが小売業であろうが知ったことではないからだ。

もちろん本格的な仕様云々はあるだろうが、それなりの値段でそれなりの仕様をした商品であれば、それをデザインしたのが著名デザイナーであろうが、小売業であろうが、レディースブランドであろうが、それは消費者にはどうでも良いことである。

むしろ、知名度の高い企業がデザインした商品の方が消費者には受け入れられやすい。
ジーンズというアイテムを扱うブランドは現在、掃いて捨てるほどあるので、ここに無名ブランドが新規参入することは至難の業だろう。数年という中期的視野から取り組むのなら話は別だが。

それよりもエプロン、インテリア商品、雑貨類、制服にデニムの活路を求めたほうが即効性がある。
今までにあまりない商品だから現在のところそれらはブルーオーシャンである。

ナショナルブランドも含めてジーンズ製造業というのはスタッフ自体が「ジーンズファン」の集団であるというのが長年接触してきた筆者の感想である。

たしかに「好きこそものの上手」とはいうものの、単なるファン集団ではイノベーションや新業態は生まれないのも事実である。
そこからいかに脱却するかが、ナショナルブランドも含めてジーンズ製造業に問われているのではないか。

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