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南充浩 オフィシャルブログ

販売員にこそ素材知識が必要なのではないか?と思った話

2022年2月16日 ネット通販 3

現在の国内ブランドの洋服は、一部を除いてはかなりデザイン的に同質化しているように見える。例えば、トウキョウベースという会社はいくつかの屋号を持っているが、当方からすると、屋号は違えど、店頭に並んでいる商品はあまり区別ができない。あと店の雰囲気も似たような感じにしか見えない。屋号の違いがわからない。もちろん。これは個人差であり「私は屋号の違いがハッキリクッキリと分かります」という方もおられるかもしれないが、51歳の中老ジジイには区別ができないという話しである。

恐らくは、若い女性の顔がどれも同じように見えるというのと同じで、それだけ年老いているということだろう。

洋服のデザインがある程度同質化してしまえば、素材に差別化のポイントを求めるという販促方法を採るブランドも増える。

そうなると、店頭で日々お客と接する販売員こそ素材知識が必要なのではないかと思う。

 

 

 

 

今も生き残っておられる販売員の方々は、勉強熱心な方が多いと思っているのだが、2000年代半ばくらいまでの販売員の方々の中には、あまり素材には詳しくない人も多くおられたと記憶している。もしかしたら2022年現在もそういう販売員の方もおられるのかもしれないが。

 

 

先日、恒例のドットエスティで買い物をした。裏毛スエットパーカと合繊ツイード風生地のパンツで2枚で4000円強、貯まっていた220ポイントを使って3800円で購入した。昨年はジーユー、ユニクロ、ドットエスティでしか服を買っておらず、無印良品で買った物が3~4点くらい、ワークマンで買った物が2~3点あるくらいだった。いかに当方のドットエスティ依存が高いかがわかる。ユニクロとジーユーには無さそうなデザインのアイテムをドットエスティで補完しているという買い方である。

 

 

送られてきた裏毛スエットパーカにこんなステッカーが貼られていた。当たり前だが着用する際にははがすことは言うまでもない。

「40/40/10」

と書かれてあるが、この意味がお分かりだろうか?

 

 

素材に詳しい方や素材関係の仕事をされている方にはたやすくわかるだろう。一方、素材に詳しくない方はどうだろうか?

これは、「この裏毛素材は表糸に40番手、中糸に40番手、裏糸に10番手が使われていますよ」という意味の表記である。

 

 

以前にも書いたことがあるが、素材関係でも実は細分化されており、織物と編み物ではまったく生地の構造が異なる。そして織物が専門の人の多くは編み物に詳しくなく、編み物が専門の人の多くは織物に詳しくない。

当方はどちらかというと織物畑で育っているため、編み物には詳しくない。今回の表記は何となくは理解したのだが、念のために、丸編み専門家の山本晴邦さんに確認した。今回の「40/40/10」という表記から一体どのようなことが分かるか、読者の方々はお分かりになるだろうか?

答えは、通常の裏毛生地より少し薄いということが分かるというのが山本晴邦さんの解説である。その理由だが「通常の定番裏毛は『30/30/10』と表記されるから」(山本さん)という。定番裏毛は30番手・30番手・10番手の糸で構成されているのに対し、今回の裏毛は40番手・40番手・10番手という糸で構成されている。

 

 

糸の番手でいうと、本来は糸の重さに由来する単位だが、一般的には糸の太さの単位だと理解されている。太い=重いは一致しやすいからそういう理解がされるのも当然だといえる。で、糸の番手というと、1番手が最も太く、10番、20番、50番、100番となるにつれ糸は細くなる。

だから、30番手より40番手の方が糸は細い。細い糸で構成されているので「40/40/10」の生地の方が定番よりも少し薄いということになる。

「40/40/10」という表記から分かることは定番の裏毛よりも少し生地が薄いということで、これを販売員の方々が理解しておられるなら、接客に生かすことができる。

例えば「こちらの生地は定番より少し薄目になりますので、厚手の上着を着てもらった方が良いです」とか「こちらの生地は定番品より少し薄いので、晩春にも着てもらえます」とか、そんな具合に説明することができる。

 

 

 

 

逆に言うと、この知識が店頭販売員まで共有されていないのであれば、実はこの「40/40/10」という表記されたシールを商品に貼ることは全くの無駄でしかない。シール代がもったいないし、何より「説明不能」「意味不明」な内容のシールが貼られていることで、お客から要らぬ質問を受けるリスクが高まる。またそれに答えられないことによって、店舗やブランドや販売員個人の信用も失いかねない。さらに言うなら、販売員が苦し紛れにいい加減な答えをすれば、たちどころに信用は毀損してしまう。

 

 

突飛で特徴のあるデザインの服が減った。また、そういう物があったとしてもインフルエンサー界隈を筆頭に「パクり合い宇宙」みたいな状況が瞬時に起き、同質化してしまうことも増えた。そうなると、素材での差別化を訴えることも増えているため、昔に比べると販売員が素材の知識を持つことの重要性は今の方が高まっているのではないかと思う。ロールプレイングコンテストよりも販売員の素材知識の強化の方が衣料品販売には重要なのではないかと思う今日この頃である。

 

 

 

 

ユナイテッドアスレの安いスエットパーカをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/02/16(水) 2:27 PM

    「パクり合い宇宙」ワロタ
    宇宙と書いてソラと読むのでせう(・∀・)
    しかし、作ってる人は自分の専門分野だけで良いけど、店舗で売る人は売る商品すべてに知識を求められるから大変そうっすね。知識増やすの好きなオタクタイプだと苦にならないのですかね?

  • kimgonwo より: 2022/02/17(木) 10:52 AM

    ご説ごもっともですが
    テキスタイルにくわしくても
    客が販売員にあこがれませんからね
    「私もこの子の色違い持ってるんですよ」
    といい 客から憧れられたい人間が
    販売員になるんじゃないですか?
    テキスタイルなんて 眠たい内容は
    関心ないでしょうね
    それがいいかは当然違うけど

  • BOCONON より: 2022/02/17(木) 6:07 PM

    僕はこういうのは初めて見たので “40/40/10” と言うのは何の事やらわかりませんでした。「綿40%ポリ40%ナイロン10%って事かな」と思ってしまった。しかし僕でなくても(kimgonwo さんの言う通り)世の中大多数がそんなものだろうと思う。せいぜい素材が綿100%か合繊かくらいは気にするって程度で,生地の編み方織り方まで厳しくチェックするような唐変木なんてあんまりいそうもない。

    綿と言ってもいろいろで,海島綿のドレスシャツしか着ないような人はいるだろうけれど,フツーの人間にはそういう,ワイシャツを決して家で洗濯しないようなお金持ちの世界の事は関心の埒外だろうし,インド綿のマドラスチェックのシャツとかヴィエラのシャツなんてものはマニア以外には用のないものだ。「コットンUSA」というのはハリス・ツイードと同じく一種のブランドでどこでも名乗れるものではないけれど,その辺が画像のラベルだとどうも紛らわしい。

    結局余計な誤解を生むだけでだから,仰言る通りで,画像のようなラベルは最初からはがしておく方が良いと僕は思います。(あるいは「アメリカ産の綿ですよ」「中国/新疆ウイグル産じゃないよ」というのを有難がる意識の高い人はまあいるのかも知れないけれど,そういう人のことは僕にはよう分かりませぬ)。

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