
今後は「育てたアパレルは売却する」のが最善の手法となりそう
2022年2月15日 トレンド 2
経済系メディアに称賛されているユニクロやZARA、最近だとSHEIN(伝えられている事象が全て事実かどうかは甚だ怪しいが)の取り組みだが、国内にあまた存在する中小零細アパレル・繊維メーカーには活用できる部分があまりない。なぜなら、個々の取り組みにおける投資額が桁違いに多いからだ。
「おっしゃっていることはわかりますが、当社の規模では実行は不可能です」
という内容の物が多い。もちろん、知識があるにこしたことはないから、知っておいて損をすることにはならないし、いつの日かその知識が役立つときもくるだろう。
しかし、洋服という「水物」を売っていて、企業が永続することは難しいし、メディアが褒めちぎるZARA、ユニクロ、SHEINの売れ続けている最大の理由は「安いから」であり、これらのシステムがいくら優れていようが、1着数万円単位にまで値上げされれば確実に売れ行きは鈍る。
個人的にはいわゆる「昔の百貨店ブランド価格」で永続的に成長し続けて、巨大企業化することは、現在の国内アパレル業界では不可能だと思っている。特に嗜好性が高いブランドは高価格帯のままで何千億円企業に成長することは当方は不可能だと思っている。
そうなると、いわゆる特徴のある中規模・小規模アパレルはどのような将来が理想的なのだろうか。
個人的には、創業者や創業メンバーからすると、適当な時期に会社を高値で売却するのが最も理想的ではないかと当方は思う。
これが最もリスクが少なく、実入りが大きくなる。
次に考えられるのが、創業者が自身の息子も含めて、だれか後継者に託すことだろうと思う。これは今までの国内アパレルでは主流だった。
岡山・福山界隈のジーンズカジュアルパンツメーカーもそうだったし、大手総合アパレルでもそういうところが多かった。国内だとユニクロはだれが後継するのかに注目が集まっている。
だが、30年間くらい業界を見ていると、後継者に託することが良いことだとは思えなくなってきた。コロナ禍に見舞われる前から、ジーンズカジュアルパンツメーカーの経営破綻や大手総合アパレルの迷走が起きていた。大手総合アパレルが世襲することは最近ではあまりないが、ジーンズカジュアルパンツメーカーの3代目、4代目は末期にはかなり追い込まれていて、相当に精神的に辛いだろうと感じられた。
もちろん、創業者や先代は良かれと思って世襲させたのだろうが、逆に子孫を苦しめることになってしまったのではないかと思う。
さて、先日、ジャパンブルーが投資ファンドに買収された。
なぜか、各業界メディアのウェブ記事が削除されているのだが。何があったのだろうか?
[お知らせ・企業情報] 【株主の異動と新経営体制への移行のお知らせ】 | japanblue(ジャパンブルー)|倉敷市児島発祥のジャパンブルーデニム&ジーンズ
株式会社ジャパンブルーは、株式会社刈田・アンド・カンパニー(以下「K&C」)のグループ会社が運営するK&C1号投資事業有限責任組合が当社の85%の株式を保有(以下、本件株式譲渡)すること、並びにK&C主導での新たな経営体制に移行することに2021年12月31日付で合意し、本日本件株式譲渡および新経営体制への移行を実施しました
とのことである。
創業社長と副社長は退任ながら、
なお、創業者である真鍋寿男を筆頭とする既存株主らは引き続き15%の株式を保有しつつ、K&Cとの協力を進め、当社事業の更なる発展を支援して参ります。
とのことである。
ただ、既存株主らが15%の株式を保有しているというが、個々の既存株主(創業社長も含めて)の保有率は当然のことながら、15%未満ということになるわけで、完全に手放した状態に近いと考えられる。
ジャパンブルーは「桃太郎ジーンズ」「ジャパンブルージーンズ」など、物作り系の高額なジーンズを企画・生産・販売してきた。祖業は「コレクト」という屋号の児島のテキスタイルコンバーター(生地商)である。主にデニム生地や厚地のカジュアル綿生地を得意としていた。
当方は、まだジャパンブルーが設立される前のコレクトに何度か定期的に取材に伺ったことがあり、逆に「桃太郎ジーンズ」というオリジナル製品に進出した際には、「生地商がオリジナルブランドを開始して上手く行くのだろうか?」と懸念した。
その後も「ジャパンブルージーンズ」という新オリジナルジーンズブランドを立ち上げたりと拡大路線を取ってきた。
ジーンズ村の人達からすると、物作り系イメージの高額ジーンズこそ「本物」で大規模に成長するのは当たり前・成長してもらいたいという気持ちだったと当時も今も当方には映っているのだが、当方はそれは無理な話だろうと今も確信している。
理由は何度も述べている。
高い洋服を買う層の人口はそんなに増えていない。また、そういう層がいることは間違いないが、そこにも競合ブランドがひしめいているから、桃太郎ジーンズやジャパンブルージーンズだけを買うことにはならない。他ブランドとの競合に勝ち抜いたり、併用してもらうことが不可欠になる。
富裕ではない一般層が、その手の物作り系高額ジーンズに「食費を削ってでもあのジーンズを買う」というような強い憧憬があるかというと、当方も含めてほぼ皆無だろう。
となると、旧ジャパンブルーとしては現状がピークだったと当方は考えている。
このタイミングで会社を売却するのは、創業者としてはベストの選択だろう。当方が創業者でも売却する。
現在でも不況にかかわらず続々とアパレル業界には新規参入者がある。
恐らく9割くらいは5年以内に消えてなくなると見ているが、数十億円規模に成長する企業も中にはあるだろう。そこからかつてのワールドやストライプインターのような2000億円規模や1000億円規模に成長することは国内市場では不可能だろう。
そうなると、もっとも利益が極大化するだろうというタイミングで会社を売却するのが賢明な手法ということになる。今後は、ある程度まで育てて売却するというのがアパレル経営者の標準的手法となるだろう。
そんな桃太郎ジーンズをどうぞ~
comment
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お気楽ニャンコ より: 2022/02/15(火) 2:12 PM
まさかの『法衣』が布衣(庶民の着る衣服)に…
訂正いたします
以前、妙中パイルという
国内最高水準ジャカード織の技術を持った工場を見学させていただいた事があります
その時の事を、思い出しました
総理官邸や国会議事堂の重厚なジャカード織のイスやカーテンの多くを(ほとんど)を作っている会社なのに(今では国内の工場ではほぼ作ることが出来ない)
国発注の製品を請け負っても全く儲かるどころか赤字くらいの話に驚きました
他に作れるところがない上のですから、強気な値段設定も通るのでは?と思いましたが…
高い技術を持った会社ですが近年では重厚なジャカードの技術は需要が少ないらしく…
私が見学した時はTVの液晶パネルの製造工程で使用するパイルがメインの収入だとおっしゃっていました
(当時、それもいつまでも続かないだろうともおっしゃっていましたが)
後は小ロッドの長繊維の整経(縦糸)のドラム巻き販売
どんなに高い技術を持っていても
超豪華なスゴい生地でも所詮生地は生地(材料)
一部のラグジュアリーブランドがたまに使うくらいでは到底利益は出ません
非常に、維持経営が大変だとおっしゃっていました
そして、そのうちローマ法王の布衣(シルクのベルベット)
も織れる工場が無くなるのでは?と思います
世界3社(うち日本1社)で持ち回りで織っているらしいですが…
話は変わって…
ジャパンブルー、そうだったのですね…
価格はそれほど高いとは思いませんが
そこはかとなく垢抜けないデザインのブランドなぁと思っていました
(レディースしか買った事がないので、私見ですが)