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南充浩 オフィシャルブログ

期待が大きすぎたから

2014年2月20日 未分類 0

 6割強の売り場面積を縮小し、専門店を導入することを発表したJR大阪三越伊勢丹だが、その敗因に関して「伊勢丹流・東京流が大阪で受け入れられなかった」と指摘されることが多い。筆者はこれは適切な分析ではないと考えている。

JR大阪三越伊勢丹開業前のマスコミ各社の報道を見たり、在阪マスコミスタッフと記者会見・内覧会で接触した感触でいうと、彼らは非常に期待していた。
一般消費者はオープン前の情報はそれほど持ち合わせていないから、新聞、雑誌、テレビなどの報道でどんな施設になるかを想像するほかない。

オープン前、オープン直後の報道ではその期待感が過剰に発信されていたように感じる。

これは推測だが、マスコミ各社は「新宿本店のような伊勢丹が梅田にもできる」と期待していたのではないか。
その報道を受ける一般消費者も当然期待を高めていく。

けれど実際に足を運んでみれば、新宿本店との違いは一目瞭然だ。
JR大阪三越伊勢丹は取扱いブランド、導入テナントのラインナップにおいて新宿本店には遠く及ばない。
関西地方にも数多くある地方百貨店とほとんど変わらない。

けれども冷静に考えてみれば、JR大阪駅周辺には阪急百貨店うめだ本店、大丸梅田店が隣接している。
すでにこの2つに同時出店しているブランドも数多い。
そこにまた徒歩数分圏内で百貨店を出店するのだから、出店を断るブランドも多数出てくることは容易に想像できたはずだ。

今の時点になって、「徒歩数分圏内に3店舗も同時出店したがるアパレルブランドは少なかった」との報道も出始めているが、そんなことは少なくとも、内覧会の2,3か月前の開かれた記者会見でブランドラインナップを見た瞬間にわかっていたはずである。

たとえば、イセタンガールの売り場が作られていたがブランドラインナップはありきたりで、凡百の百貨店の領域を超えるものではなかった。
筆者も会見に出席していたが、イセタンガールのブランドラインナップを見てひどく失望した。

実際に筆者と多少の交流がある某メンズブランドでも「あの近さで3店舗同時出店は無理だ」として、出店依頼を断っている。

そうなると、過剰に期待した分、大阪の消費者には失望感が広がる。
別に多くの大阪人は東京に大して対抗意識なんて持っていないし、大阪が一地方都市であることを自覚している。

期待感から実際に足を運んだ人も多いだろう。
そうでなくては、開業直後のあの入場客数にはならない。
足を運んで自分の目で見てそれでもリピーターにならなかったということだろう。

立地条件からしても実現は難しかっただろうが、もしJR大阪三越伊勢丹が新宿本店並みの「真の伊勢丹流」を実現できていれば、こういう結果には陥っていなかっただろう。

JR三越伊勢丹の敗因を「東京流は大阪で受け入れられない」「伊勢丹流が大阪では通用しない」と分析するのは早計であり、そういう観点のみの報道はミスリードではないか。

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