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南充浩 オフィシャルブログ

見た目があまり変わらないなら

2014年2月19日 未分類 0

 衣料品の中でもファッション衣料とよばれるジャンルに、機能性が必要かどうかというのは、昔から議論が分かれるところである。

機能性というのは、機能性繊維を用いた吸水速乾とか保温発熱とか、軽量化とか、撥水とかそういうことである。
ストレッチ素材というのも広い意味でとらえるなら機能性といえる。

ユニクロはどちらかというこの機能性を打ち出すことで自社の衣料品を販売する。
量販店は完全にユニクロに追随している。

ユニクロも量販店もファッション衣料というよりは実用品の色合いが強い。

じゃあ、たとえば百貨店とかセレクトショップとかで販売されている商品にそういう機能性は必要なのかどうかということになる。
個人的には、そういう機能があれば買う動機になるし、販売する側は売りやすいと思うから賛成である。

けれども業界にはそれに否定的な立場をとる人々もおられる。
そういう人々のすべての意見を把握しているわけではないが、知る範囲で集約すると

「あくまでもファッション性が重要であり、機能性はその次である。機能性を重点的に打ち出すよりもまずファッション性を追求しているかどうかが重要である」

という感じになる。

これはこれで一つの意見であるし、なるほどとも思う。

ユニクロも含めた量販店と同じ打ち出しで良いのかという疑問も含まれているのだろう。

しかし、その一方で、現在のユニクロを含めた量販店の商品と、百貨店・セレクトショップの商品とが一見しただけで大きく異なる点があるかというとそうでもない。
ブランドタグとか胸のワンポイントマークを除けばあまり大差が無いように見える。

90年代前半に黒いスーツを買おうと思ったら、DCブランド系のショップ以外に販売していなかった。
当然DC系は価格が高く、安いところを探したら、ロードサイドの青山とかアオキとかはるやまの略礼服しか市場にはなかった。
ツープライススーツショップはそのころには市場に存在していなかった。
筆者が欲しいのは冠婚葬祭ようの略礼服ではないので、DC系のショップで8万円くらいする黒いスーツを購入した。もちろんバーゲンで5万円くらいに値下がりしてからであるが。

現在なら、略礼服ではない黒いスーツはツープライススーツショップにも掃いて捨てるほど転がっている。
価格は1万9000円とか2万80000円とかである。
そしてそれを着用していてもブランドのものと大して見え方は変わらない。

この黒いスーツの例は極端だが、90年代半ばくらいまではファッション衣料と量販店の衣料品は大きく異なっていた。
だから少々高くてもファッション衣料を買わざるを得なかった。

しかし、今のように見え方がそう大きく変わらないのであれば、わざわざ高額な商品を買う必要はなく黒いスーツはツープライススーツショップで購入すれば良い。

となると、機能性を追求することは一つの付加価値となる。

量販店商品の給水速乾性はこれくらいだが、百貨店商品の給水速乾性はその1・5倍くらいあるというような打ち出しもありだろう。
むしろその方が消費者にも伝わりやすいかもしれない。

古くからファッションに携わっておられる方は寂しく感じられるだろうが、これが現状である。

幸いにして、我が国の合繊メーカーとか紡績各社は機能素材開発が得意である。
これを有効に活用しない手はない。

ただ、懸念があるとすると、あまりに機能性を追求しすぎたために不必要と思われるような機能まで付加する可能性があるということだ。

以前にも書いたが、男性のワイシャツにUVカットとかビタミン加工とかそういう機能性を持たせた時期もあったが、果たして男性のワイシャツにそういう機能が必要だっただろうか。
こういうことは繰り返されるべきではない。

一般消費者に伝わりやすく、それでいて高価格でも納得してもらえるとするなら、高機能素材を使うのが一番の近道だと考えられる。

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