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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店にSPA商品の開発が必要だと考える理由

2022年2月8日 百貨店 3

百貨店の再建プランがあちこちで語られているが、こと洋服に関していえば、百貨店の洋服売り場が急激に売れるようになる理由は何一つないと思っている。

百貨店には貴金属や宝飾というジャンル、外商というジャンルがあり、この辺りは専門でもなければ、当方の生活とは縁が無いので何とも言えないが、洋服よりは他販路と差別化しやすく支持も集まりやすい。

洋服に関していえば、百貨店には独自商品がほとんどない。SPA化に何度か挑戦してきたが、ほとんどが育たないまま終わった。

百貨店というのは、販売に関しては専門だが、商品企画は専門ではない。だからSPA化は難しい。また、いくら百貨店の看板があろうと、新規に製造されたブランド品がおいそれと売れるはずもないから、一定の規模に達するまでには何年間かかかる。それまでに終わってしまうことが多い。

原則的に、独自商品がないとその店舗で買う理由はかなり薄くなる。

例えば家電なんて、どこの売り場でも同じメーカーの商品が売られている。接客態度ももちろん重要だが、それが絶対的な決め手ではない。値段が安いとか割引額が大きいとか、そちらを重視する人も多い。また保証の充実も重要視される。

売り場のにいちゃん、ねえちゃんの態度がイイとか、顔がイイとか、そんなことだけでは買わない。

ガンプラにしてもそうで、今は品薄状態なので、見つけたら買うということになるが、転売ヤーブームになる前は、値段が安いところで買う人が多かった。

何せ物自体はどこで買っても同じなんだから、値段が安い方がいい。

ジョーシンで買おうが、ヨドバシカメラで買おうが、ビックカメラで買おうが、エディオンで買おうが中身は同じだ。だったら安い店で買う。

 

洋服もこれと同じで、どこに行ってもあるブランドなら、その百貨店でわざわざ買う必要はなくなる。

安い店か在庫が豊富な店か、気に入った色柄が残っている店で買えばいい。

SPA化が完全に失敗した百貨店は、ますます品揃え型・ブランドラインナップ型になっており、それなら他の百貨店で買ってもいいし、今時のブランドは必ず直営店があるし、ネット通販もある。もし、そちらの方が安いとかポイントが貯まりやすいとかそういうメリットがあればそちらで買う。

これを緩和させる方法が、大手セレクトショップの得意技となっている「別注」商品である。

どこにでもあるナショナルブランド、有名ブランドだが、〇〇店には別注のカラー、柄物があるというのが、独自性といえば独自性になる。

ただし、食いつくのはそのブランド、その商品のファンに限られるが。

漫然と「どこにでもあるディッキーズです」「どこにでもあるオーソドックスなユニバーサルオーバーオールです」では独自性はないから、目の届く範囲で一番安い店で買うことになる。

これを加速させたのが、ネット通販ということになる。

価格コムみたいな比較サイトを使えば、最安値のネットショップがすぐに見つかる。また、当方がたまに使うYahoo!ショッピングやAmazonも同様で、同じリーボックのスニーカーでもいろいろな価格で売られている。もちろんその中から当方は最安値を買う。当たり前だ。無駄な金は使わないにこしたことはない。

 

こと洋服に関していえば、百貨店に厚い顧客を作ろうとするなら、SPA化の取り組みは不可欠だと思っている。

もちろん、これには異論反論も多いが、当方のような人間からすると、どこにでもあるブランドを引っ張ってこられても、その百貨店で絶対に買いたいとはならない。

もちろん、人間の価値は様々だが、過剰で丁寧な接客もおもてなしも別に求めていない。不快な対応がされない程度で十分である。何をそれ以上赤の他人に求めることがあるのか。

洋服販売員の中には、的確な商品知識や他販売員よりも優れたコーディネイト提案ができる人もいる。それはそれで素晴らしいことだが、そのスキルは属人性が高く、同僚や後輩に伝えることは難しく、マニュアル化も難しい。

だからこそ販売員の仕事にはやりがいがあるともいえるが、商品売上高が何千億円規模の百貨店という大きな組織が依拠するには極めて脆弱な基盤だといえる。

何せ、他人には容易に引き継げない、伝授できないものなのだから、そこを基盤に百貨店という大組織を立て直そうというのは、不可能だと当方は見ている。

当方は属人性の高い個人スキルに依拠して、大組織を継続的に好転させることはできないと思っている。そんなあやふやな物に大組織を預けることは危険極まりない。

 

大手セレクトショップや大手チェーン店がSPA化、高SPA率化しているのは、利益率の問題も大きいだろうがそれを除いても、ナショナルブランドや著名ブランドのみでは同質化してしまうためだろう。(現実にはパクり合いになっていて独自性はほとんど発揮されなくなってしまっているのだが)

百貨店の売上規模は4兆円台にまで減少しており、店舗数も全国で200店舗を下回るようになった。

 

これを「衰退がー」と日本尾張守のように嘆くばかりで何か活路があるとは到底思えない。嘆いているだけで生き残れるなら誰でも嘆く。

難易度は高くなるがSPA商品の開発に取り組むのも一つの方策だと当方は思っている。あとは、伊勢丹新宿店や阪急うめだ本店のように、強い旗艦店をさらに強くして最悪は個店として残る道を選ぶか、くらいしかないと思っている。

いろいろなしがらみやらナンヤラがあるにせよ、これまでの路線の延長線上で百貨店が生き残れるはずがない。また耳に心地良くて実績が伴わないイシキタカイ系施策を連発することでも生き残ることはできない。

 

そごう西武の売却が話題となっているが、セブンアイが思うような2000億円~5000億円では到底売れないだろう。そこまでの価値がない。池袋西武と横浜そごうだけを残して後は違う施設になるのが最善の未来ではないかと思う。

 

 

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 comment
  • BOCONON より: 2022/02/09(水) 1:32 PM

    > 洋服販売員の中には的確な商品知識や他販売員よりも優れたコーディネイト提案ができる人もいる
    > そのスキルは属人性が高く、同僚や後輩に伝えることは難しく、マニュアル化も難しい

    「スタイリストって職業もあるわけだし、百貨店に常時フロアの専属スタイリストといった係を置くことは出来ないことはあるまい」と僕も昔思ったことがあります。ただテレビや雑誌など見てて思うスタイリストの難点は ...

    ①一般にスタイリストがついているタレントやアナウンサー(最近はNHKもつけてますね)やモデルの着ているものはオシャレだけれど人畜無害でク〇面白くない
    ②全身シャネルじゃないと気が済まないなんて人は別にして、シロウトでもセンスの良い人は普通1つのショップで全身揃えたりしない,と言うよりそんなに気に入るようなものばかり置いているお店は普通ないから,せめてメンズフロア全体から選べるのでないと無理がある
    ③スタイリストはどうしても流行を意識するしイキった格好を好みがちだから、お客の感覚とズレてしまう惧れがある(昔TBSでやっていた「亭主改造計画」もそういう感じのが多かった)。
    ④以前NHKでやっていたアメリカの某番組のように「基本ベーシックなものを着なければならない」という事をお客に叩き込まないと、いつまでたっても自分で服を選べるようにはならず毎度スタイリストに頼まなきゃならない

    ・・・といった風に考えて来ると,やっぱり百貨店専属スタイリストなんてものは百貨店にもそこに出店しているブランドにもお客にも受け入れられそうにないですね。

  • kimgonwo より: 2022/02/09(水) 4:10 PM

    「ノックは無用」の魅惑の変身コーナーでは
    変身後の方が 変身前よりおかしいよという珍現象があった
    谷まさる大先生が監修していたはずだが…
    おしゃれの学校の先生でもその程度なのかと思ったものだ
    続いてはノンストップゲーム

  • ママ より: 2022/02/10(木) 2:19 PM

    経営をしない周りから眺めている意見です。
    机上の空論です。

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