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南充浩 オフィシャルブログ

高感度店のチェーン店化は難しいと感じる

2022年2月7日 売り場探訪 3

ドラマや漫画、アニメなどで好評を博した作品の続編が作られることがある。

成功することもあるが、失敗することも多い。特にアニメや漫画、特撮あたりでは、結構外してしまうことが多いように体感的には感じる。

製作スタッフも演者もほぼ同じメンバーなのに、それでも何となく前作や前前作に遠く及ばないのは不思議でたまらない。

なんというか、テンポというか、間というかが違う。

自分はこの手のエンターテイメントのことは経験がないからよくわからないが、いろいろなインタビューを読んでいると、製作しながら盛り上がりとか視聴率とかで路線が良いように変わる場合が多いのだという。

「ライブ感」という言葉を使って説明する人もいる。

続編になると、それが無くなる場合があり、なんだかちぐはぐなテンポや展開になってしまうのではないかと思う。

もちろん、スポンサーの要望とか演者の事務所との兼ね合いとかそういう大人の事情もあるのだろうが、それを除外してもやっぱりテンポや間、展開のおかしい続編が多いと感じる。

 

小売店舗も同様で、画一化されているチェーン店はそんなことはないが、「高感度」を掲げてファッション性をアピールしている小売店はチェーン展開することが難しいと感じてしまう。例えば本店とか都心店が成功したからと言って、地方店や郊外店も同様のノウハウで繁盛するとは限らないし、本店や都心店とは似ても似つかないなんちゃって店舗になってしまうことも多々ある。

当方は、低価格チェーン店でしか買い物をしない感度低い系・イシキヒクイ系の人間だが、ダイソーにしろセリアにしろキャンドゥにしろ、ユニクロにしろ無印良品にしろ、各店舗で面積は異なるが、店舗づくりのイメージや感覚、商品展開などはほぼ統一されていて違和感を感じない。

もちろん、大型店と小型店では置いてある物は違うが、それも区別して認識しやすい。

 

一方、高感度を売りにしている店は、各店舗の感覚が異なることが多く、わかりづらい。

個人的にはその最たる例は、百貨店の伊勢丹だと思っている。

伊勢丹新宿本店はファッション性で名高い。特に衣料品業界人やメディア人からの信仰はすさまじい。ところが、伊勢丹が2010年代に出店した地方店や郊外店はことごとく短命に終わっている。

丸の内「イセタンサローネ メンズ」が6月に閉店 – WWDJAPAN

 

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、東京・丸の内の中型店「イセタンサローネ メンズ(ISETAN SALONE MEN’S)」を6月19日に閉店する。新宿の伊勢丹メンズ館のエッセンスを集約したセレクトショップとして、2015年12月に丸の内の仲通りに開店した。丸の内や大手町で働くビジネスマンを主なターゲットに設定。しかしコロナ禍の長期化や在宅勤務の浸透で「来街者自体が減少し、入店数も低迷が続いた」(同社広報)ため、6年半で撤退を余儀なくされた。

 

中小型店では、名古屋駅前の大名古屋ビルヂングの「イセタンハウス(ISETAN HAUS)」(16年4月開店、3フロア・2970平方メートル)を20年8月に閉めている。

 

とのことである。

またこれに先立って、鳴り物入りで開店したJR大阪三越伊勢丹も閉店し、ルクアイーレに変わっている。

ルクアイーレ内には伊勢丹コーナーがいくつか残っているが、消費者目線で見てもイマイチ区別ができないし、特別に惹きつけられるものがない。

JR京都イセタンは成功していると言われているが、ファッションの伊勢丹にふさわしいのかと言われると、当方はあまりそれは感じない。

京都のインバウンドブームに乗っかったことが成功の要因ではないかと思っている。

品揃え・ブランドラインナップは結構保守的と感じる。

 

大阪伊勢丹には内覧会を含めて何度も足を運んだが、これもそんなにファッション的に当方にとって面白い店舗ではなかった。

普通の百貨店である。

もちろん開業にあたってはいろいろと上手く行かない事件が起きたことは知っているが、そんなことは元から織り込み済みで対処すべきであり、それが言い訳にはならない。

 

当方からすると、業界人やメディア人は、新宿伊勢丹のイメージを引きずりすぎているのではないかと感じられてならない。

関西生まれ関西在住の当方には新宿伊勢丹のありがたみがまったくわからない。

だから、新宿伊勢丹に対する幻想みたいなものを抱いたことがない。

 

新宿伊勢丹のイメージが強くあり、あれが大阪をはじめとする地方・郊外に出店すると思う人が多いから、実際にできた地方・郊外伊勢丹に失望する人が多いのではないかと思う。

2016年に開店し、4年後に閉店した名古屋のイセタンハウスだが、開店前に名古屋に取材に訪れたことがある。その際の名古屋の期待度の高さはすさまじいものがあったし、メディアからの注目度も高かった。

だが、開店直後から売れ行きが芳しくないという評判が業界内では流れていた。

これは大阪伊勢丹も同様である。開店こそ華々しかったが開店直後から計画未達が続いた。

 

さて、伊勢丹を見ていると、製作が同じなのに続編でトーンダウンしてしまうエンターテイメントと似ていると感じる。

本店の興奮は地方・郊外店には移植できないのだと思う。

 

伊勢丹に限らず、ファッション性とかファッション感度というのは、かなり属人的要素が高く、再現性が低いというのが自分の考えである。

高感度店をチェーン店化するというのは、理想ではあると思うが、実現に固執することはやめた方が賢明ではないかと思う。

新宿伊勢丹を地方・郊外に移植する試みはもうそろそろ中止した方が良いと思う。これ以上やったところで損失を増やすだけである。そしてこれは伊勢丹に限らず阪急にしろ髙島屋にしろパルコにしろ同様だと思う。

 

 

そんな伊勢丹のエコバッグをどうぞ~

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 comment
  • 読者 より: 2022/02/07(月) 3:31 PM

    南さんと視点を変えた分析として、後背地に歌舞伎町があるということを上げたいです。

    水商売の人は派手なのでファッション性が高い。
    また価格よりも目立つことが重要なので最先端のモノを定価購入する。
    二丁目の人がゲイカルチャーなのでトムブラウンみたいなのも売れそう
    (これは想像で裏付けはないw)ちなみにホストはコムサ等でスーツ買ってたので
    メンズ館はあんま利用しません。客同伴で自分に買わせるとかはありますが。

    上記はもちろんメインになるほどの数字、シェアではありません。
    しかしトンがったモノを入れても必ず上記の方が購入するのでバイヤーは冒険しやすい、
    というのはあるでしょう。
    だから他店より攻めた品揃えができる。そこでチャレンジしたら評判になって、
    当時セレクトショップが開拓育成していた団塊ジュニア以下の世代が通うようになった、
    というのがメンズ館成功の印象。
    それに伴い婦人も高感度化して日本の大手を隅においやり
    海外ブランドや日本の新ブランド群(ハイクやマメ等)を中核にしたのが今の新宿伊勢丹。
    だがしかしこれは新宿と梅田でしかも単館でしかできないビジネスモデル。
    汎用性はないというのが南さんが書かれた通りの結果。
    地方は水商売の規模も小さいしファッション性も低い。需要がそもそもない。
    UAグリーンレーベルですら入るのに緊張するwみたいなのが地方の空気ですから。
    イセタンサローネは耕運機とか売ってたら成功したかもしれませんwそんな感じですな。
    大阪の失敗はまあ新宿高島屋の仕返しですなw
    阪急と提携解消したのも痛かった、というか提携維持してればちがったけど、
    勘違いしたままで他でさらなる大失敗してた可能性のほうが高いか。

  • BOCONON より: 2022/02/07(月) 8:04 PM

    新宿伊勢丹メンズ館はリニューアル後ますます高級店化していますね。普通の百貨店と同じ比較的お手頃なブランドもなくはないが,全体に高級すぎ高価すぎてもうフツーの人,つまり大して金のない僕みたいな人間が買い物するような店じゃなくなってきている感じがする。ああいう店でそんなに高くはないものを買ってもあまり気分は揚がらないので買い物の楽しみがない。
    昔伊勢丹でイタリアもののテイラード・ジャケットを試着させてもらったら,あり得ないくらい袖も丈も長くてびっくらした事があった。日本人体型に会うはずもないインポートブランドの服たくさん置いている店でスーツなど買う人の気持ちはよくわからない。靴の品揃えが良いって定評があるようですが,そりゃ有名な外国ブランドの靴は格好は良いけれど,日本人的に甲高幅広な足の持ち主としては履きにくそうだから試し履きする気にもならない。

    ・・・といった次第で,あそこはクルマで言えば故障しやすいので最近暴力団も敬遠するM.ベンツや無駄にデカいアメ車乗り回すような人種の行くところ,といった気が最近しています。(日経新聞によれば)店側も「”生活必需品ではない” 洋服売っているのだ」って言っているようなお店にはもう行きたくもない。あんまりお客いなくて販売員の方がずっと多いし,コロナ禍で急速に業績悪化してるようだし,しまいに GINZA SIX みたいになって行く気がしないでもないですな。

    • とおりすがりのオッサン より: 2022/02/08(火) 11:20 AM

      もう10年も前ですが、近所のお金持ちのオッサンはベンツがあまりに故障するのでプリウスに乗り換えてましたw
      経営コンサルタントの大前研一氏は九州かどっかに知り合いのベンツで講演に向かう途中の高速道路で車が故障し、電気仕掛けのトランクも開かなくなり、資料を車に置いたまま電車で公演会場へ向かったそうですw

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