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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロは「月満つれば則ち虧(か)く」という状態になったのではないか?

2022年2月4日 ユニクロ 1

国内では単独ブランドとしては最大の売上高を誇り、靴下や肌着などを含めると、ほとんどの人が1枚は買ったことがあるのがユニクロである。

それは依然として変わらないが、2021年後半からムードは変わったと感じる。

それまで絶対王者として君臨していたユニクロだが、少し勢いは無くなり、人心も少しだけ離れつつある。

もちろん、売上高が急減するとか、経営基盤が揺らぐなどということは全くないが、2020年末までのユニクロの強さは徐々に感じられなくなってきていると当方は思う。

それが如実に出ているのが、毎月発表される月次速報だが、1月度も既存店売上高7・1%減に終わり、6か月連続での既存店減収となっている。

これまでの快進撃から明らかにムードは変わっている。

気になるのは、ファーストリテイリングに限らず各社は月次速報に手短な商況の要因を付け加えるのだが、それがあまりにも陳腐な内容となり果てていて、これまでそれこそ柳井正氏がバカにしていた百貨店や大手総合アパレルと同じような「単なる言い訳」にしかなっていない点である。

何も売上高云々だけのことではなく、そういうマインドの部分でも著しく変調してきていると感じる。

1月度の商況の要因解説としては、

 

防寒衣料の在庫の過少や、セール時期での売り込みが不十分だったこと、
入庫遅延の影響で春物商品の立ち上げが遅れたことにより、既存店売上高は減収となりました。

 

とある。

国内ユニクロ売上情報 | FAST RETAILING CO., LTD.

まあ、たしかにその通りだろう。

まず、文章を前半と後半に分けて考えてみよう。

前半は

防寒衣料の在庫の過少や、セール時期での売り込みが不十分だったこと

である。これはファーストリテイリング社としての在庫数量の計画を読み誤ったということに他ならない。在庫過少の問題は後にまた触れたい。

マインドの変調をとりわけ感じさせられるのが、後半の

入庫遅延の影響で春物商品の立ち上げが遅れたことにより

という部分である。

これは恐らく、アジア地区での生産工場が新型コロナ感染の拡大や相次ぐ大規模停電によって操業が停止したこと、また輸送コンテナの不足による遅延などを指していると思われる。

一般消費者は洋服に関してはあまり気が付いていなさそうだが、マクドのポテトやら自動給湯器やらと同様に各ブランドで入荷の遅れは確実に起きている。

当方が言いたいのは、その「入荷の遅れ」は何もファーストリテイリングだけに起きていることではなく、アジア地区で生産を行う全ブランドで起きているということである。

 

専門店1月度は冷え込み効果で前年超え ただしユニクロは6カ月連続の苦戦 – WWDJAPAN

 

自分でまとめるのはめんどくさいのでこの記事からお借りする。

まず、

しまむらの「ファッションセンターしまむら」は同10.7%増。同社は12月21日〜1月20日集計のため、まん防による客数減の影響が加味されていないが

とある。

次いで

アダストリアは同6.5%増と、4カ月連続の前年実績超え。年末からの冷え込みを受けて「初売りセールを中心に好調な売り上げとなった」(発表資料から)

ともある。

ユニクロと商品価格帯や消費者像としてはある程度バッティングする、しまむら、アダストリアの両社も当然アジア地区での生産がほとんどで、同じく入荷の遅れは発生したと考えられるが、前年実績をクリアしている。

もちろん、ユニクロよりも売り上げ規模は小さいから単純に同一視できないが、しまむらやアダストリアができていることをユニクロができないというのは、なんともおかしな話である。

 

もっと気になったのが、2021年12月度の月次速報による要因解説である。

ユニクロの既存店売上高は11・1%減という大幅減少だった。

 

ユニクロ12月度は11%減 気温高く5カ月連続の前年割れ – WWDJAPAN

 

これに対して出されたコメントは

「12月26日以降は気温も下がり、年末祭も好調だったが、それまでの期間が温かったことで、防寒商品全般の動きが鈍かった」と広報担当者。

というものであり、これはあまりにもナンセンスだろう。要するに「暖冬でダメでした」と言っているわけである。

だが、

「ファッションセンターしまむら」は、同1.6%増と気を吐いている。同社は11月21日〜12月20日での集計のため、気温が下がった月末が入ればさらに数字が伸びていた可能性はある。

とある。

またこの記事にはないが、アダストリアの2021年12月度既存店売上高は、前年比5・3%増となっている。

 

2022年2月期 | 月次売上速報 | 業績・財務 | IR情報 | 株式会社アダストリア (adastria.co.jp)

 

しまむら、アダストリアの店舗が出店されている地域だけが寒く、ユニクロ店舗の地域だけが暖かかったわけではあるまい。店舗数でいうなら、しまむらの方が圧倒的にユニクロよりも多いのだから、そんな言い訳は通用しない。

また体感的に言っても、2018年、2019年と比べると2021年12月は寒い日が多かった。2020年12月の記憶と対比させても21年12月の方が当方は厚着をした日が多かった。2019年の年末は厚着せずに大掃除ができたし、20年年末は大晦日に寒波が来るまでは厚着せずに掃除していた。

マサ佐藤氏もツイートの中で、2018年・2019年よりも2021年12月は平均気温が低いことを指摘しておられる。

となると、たしかに20年前とか30年前の12月の寒さに比べると「暖冬」と言えるかもしれないが、直近の何年間かの中では21年12月というのは比較的寒いといえた。この状態で防寒アウターが売れない理由を「暖冬だったから」というのはあまりにも責任転嫁しすぎではないか。

同じ気温条件でしまむら、アダストリアは伸びているではないか。

これでは、前年割れの原因を常に「冷夏で」「暖冬で」「休日が1日少なくなったので」「長雨で夏の気温が上がらず」と20年間言い続けている百貨店協会と同じで、他責体質丸出しではないか。

売れる・売れないは商品の企画力や販促手法によっても大きく左右される。

個人的にユニクロのメンズに関して言うなら、2020年までに比べると2021年以降、ユニクロメンズの商品力は低下していると感じる。同じ値段だったら20年の商品の方が値打ちがあると感じる。

また、これは「在庫過少」ともつながるかもしれないが、商品の色数や柄数を大きく減らしている。SDGsガーとか不良在庫ガーからすると賞賛すべき事例なのかもしれないが、例えばメンズのハイブリッドダウンパーカだが、黒・紺・オリーブグリーン・黄茶色の4色しかなく、全部基礎的なダークトーンである。似たような色のダウンや中綿ブルゾンを持っている人ならもうわざわざ買うことはないだろう。

だから、12月20日すぎまで大量に残っていた。

ところが、12月末からの寒波襲来で正月明けにはオリーブグリーンを除いてほとんど無くなってしまった。

凄まじい売れ行きなのか、店頭投入数量が少なかったのかのどちらかだと考えられるが、1月度要因の「在庫過少」から考えると店頭投入数量を減らしていたということだろう。

恐らく、色数・柄数だけでなく、数量そのものも減らしていたと考えた方が適切だろう。

これはユニクロUの秋冬物も同様で、いつもよりも最終値下げされる前に完売する品番が多い。ユニクロUが超ブームという話しは聞いたことがないので、これも店頭投入数量が少ないということだろう。

「在庫は悪だ」とされることが多いが、物販において在庫が無ければ売上高は稼げない。100万円の売上高が欲しければ100万円分の在庫がないと売上高は作ることができない。

50万円分の在庫しかないのに100万円の売上高を作ることはできない。

これを忘れているメディアやコンサルが多すぎるのではないかと思う。

 

閑話休題

 

商品力や販促手法云々の失敗だけではなく、社内マインドまでが百貨店協会や老舗大手総合アパレルと同じようになりつつあるのが、ユニクロの危機ではないかと感じられる。

繰り返すが急激な売り上げ減少や収益悪化はないだろうが、国内売上高のピークは過ぎてしまい、今後はゆるやかに下ったり踊り場で踊ったりしながら推移していくようになるのではないかと見ている。

「亢龍悔いあり」「月満つれば則ち虧(か)く」

である。

 

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 comment
  • 一言居士 より: 2022/02/04(金) 3:10 PM

    そういえばこの一年ユニクロでの購買はめっきり減った。
    足が向かない。
    行っても買いたいものがない。
    このところ新機軸の商品が発売されていない。
    (お得意の機能面訴求のもので)
    マーケティング能力が弱まったのか?

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