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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店の月別売上高を見て考えたこと

2022年1月28日 ネット通販 3

当方は独立してからの12年間というものほとんど百貨店で買い物をしたことがない。

一番多く買い物をしたのは、今は閉店してしまった大丸梅田店にテナントとして入店していたユニクロだ。百貨店内ということでもしかすると、通常のユニクロ店とは異なる客層だったのかもしれず、他店で品切れとなっていた商品がよく残っていた。2017年~2019年にかけては年に何度か買い物をした。

それ以外だと、2020年9月ごろに、亡父の香典返しを百貨店から行った。

何度も書いているが、どこで買おうと変わらないビールの詰め合わせセットとかインスタントコーヒーの詰め合わせセットだが、亡父の親戚・友人という目上の人への返礼で、イオンやイズミヤ、スーパー万代から贈るのはやはり失礼だと考える。アサヒスーパードライの詰め合わせなどどこで買おうが中身は変わらない。百貨店で買った方が美味しいというわけでもないし、スーパー万代で買ったら不味いわけでもない。何なら値段はスーパー万代の方が格段に安い。

それでもこういう時には百貨店から贈るようにしている。

ちなみにもし当方に贈っていただける方がおられるなら、当方はスーパー万代からでもスーパー玉出からでも喜んで受け取らせていただくのでお待ちしています。(笑)

 

そんな調子なので、百貨店の動向については、あまり親近感は感じられないのだが、世のアパレル業者やメディアの人は百貨店が特別にお好きな方が多いのでちょっと百貨店について考えてみる。

 

2021年百貨店売上高、楽天グループの国内EC流通総額に抜かれる | 通販通信ECMO (tsuhannews.jp)

 

(一社)日本百貨店協会が25日発表した全国の百貨店売上高によると、2021年(1~12月)は前年比5.8%増の4兆4182億円となった。一方、楽天グループ(株)が今月4日に発表した21年の国内EC流通総額(取扱高)は5兆円を突破し、百貨店売上高を追い抜いた。
とある。
これは当然といえば当然の結果としか言いようがない。
理由を箇条書きにする。
1、コロナ禍で百貨店は営業時短や長期休業となり、逆にその需要がネット通販へ移った
2、低価格品とは縁のない百貨店と、低価格品も多く扱っていて間口が広い楽天
3、ファッション衣料や宝飾が強い百貨店と、ファッション衣料以外の種々雑多な商品も扱う楽天
という感じではないかと思う。
要するに、お金持ちでファッション衣料や宝飾品に興味のある人しか利用しない百貨店と、低価格品で衣料品以外の取り扱いも多い楽天では利用者総数が全く異なる。
楽天の方が圧倒的に間口は広いから、広く浅く売上高を稼ぎやすい。
そこにコロナ禍による外出自粛や営業時短が加わったのだから、楽天の方が売上高が伸びるのは当然である。
で、当方が興味を持ったのは記事中にある、2019年・2020年・2020年の月別の百貨店売上高表である。
特にコロナ禍が起きる前の2019年の月別売上高である。いわば、百貨店がもっともまともに稼働した最後の年だからだ。

https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/68257

 

2019年の月別売上高を見ながら、考えてみたいと思う。

売上高が突出して高いのは、12月の6400億円強である。ついで、9月と3月の5100億円台ということになる。

意外に売上高が低いと感じたのは1月の4920億円である。1月といえば正月バーゲンでアパレルとしては稼ぎ時だといわれている。値下げするとはいえ、単価の高い防寒アウターが売れるからだ。そして、それを期待したお客が押し寄せてで売り場も他の月とは比べ物にならないくらいに混雑する。

その割には12月には遠く及ばないし、3月・9月よりも低い。

これについて自分なりに考えてみたのだが、もし補足する点などがあればご指摘いただきたい。

12月にはクリスマス、年末という二つの売り時がある。しかし、両方ともに年々勢いは弱まっていると伝えられてきたが、この数字を見ると、勢いはピーク時よりも弱まってはいるのかもしれないが、まだ他の月よりも売上高が格段に高いから、やはり売り場としては引き続き注力すべきではないかと思う。

12月には、クリスマス向け、年明け用として高額衣料品ばかりでなく、単価が格段に高い宝飾品なども売れるのだろう。また何万円もするおせち料理も売れるだろうし、クリスマスパーティー向けの高級食材や高級酒類なんかも売れるだろう。

逆に1月はこれらの売上高が見込めないから意外と低いということになるのではないか。

 

3月・9月の売上高が高い理由は、恐らくは衣料品が春の立ち上がりと秋の立ち上がりで好調なのだろう。しかもこの時期は値下げ品はほとんど無いから、単価もバーゲン時期よりも高くなる。

年々先物買いが減っているといわれるが、百貨店客層においては衣料品の先物買いは根強いということができる。

 

業界では「ニッパチは売上高が稼げない」と言われる。夏冬のバーゲンが終わった2月と8月は苦戦するという意味だが、月別売上高で見るとそこまで悪くない。

ノーマークなのに突出して売上高が低いのは10月である。2019年で3863億円しかない。しかもコロナ禍の2020年10月、2021年10月もほぼ変わらない売上高がある。10月だけはコロナ禍が無くても売れないということになる。

世間的には10月はハロウィンという販促イベントをでっち上げて消費意欲を煽っているが、こと百貨店には全く恩恵がないということになる。

また当方があまり興味を持てない7月の夏のバーゲンだが、4970億円もあり、数字上では1月の売上高を上回っており、百貨店においては馬鹿にできるものではないと認識を改めた。

あと、7月はお中元、12月はお歳暮も売上高に加わっているのだろう。逆に1月は冬の洋服バーゲン以外の需要はほとんどない。

 

1月、7月についで売上高が高いのが11月で4930億円あるが、これは恐らくは、10月下旬に一斉に入荷する防寒アウターの売上高ではないかと思う。防寒アウターは単価が高い上に11月はまだ値引きしてないから定価販売され、その分売上高としては高くなる。

 

と、こうして数字と消費行動を照らし合わせてみると、3月・9月の春物・秋物の立ち上がりと、10月下旬に入荷した防寒アウターのプロパー商戦の11月は意外に重要度が高いといえるのではないかと考えられる。

逆にハロウィンなんて販促は百貨店客には何の意味も無いということになる。

全体の売上高推移だけを見ての大雑把な考察なので、全ての百貨店店舗に当てはまるかどうかはわからないが、販売方針を決める際には多少の参考にはなるのではないかと思う。

あとは如何に各店舗ごとの顧客の消費動向や購買行動に照らし合わせてカスタマイズするかだろう。

一挙に問題を解決できるような「神の一手」などこの世には存在しないのだから、この辺りのことから着実に改善していく方がはるかに効果的ではないかと思う。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/01/28(金) 1:25 PM

    1月が低いのは、12月に金使いすぎの反動と、お正月にお年玉でお金使うからじゃないかと妄想w
    個人的には、もう10年はデパートでお金使って無い気がします。あっ、舞台役者さんに差し入れする時に買ったことあるか。でも、自分のものは最後に買ったのはコンタクトレンズで、それも今はAmazon通販。

  • 定期読者 より: 2022/01/28(金) 2:35 PM

    2019年10月の低売上高は、消費増税の影響ではないでしょうか。

  • 読者 より: 2022/01/28(金) 3:42 PM

    需要面ではセレクトショップのUAなんかのほうが衣料としては数字がリアルかなと。

    百貨店は9月はカード顧客優待による秋冬立ち上がり。利益率高い。
    12月は化粧品やアクセが良かった気がする。クリスマス需要やね。これも大事。
    百貨店は法人外商の数字があるのでそこがどこで計上するかにもよる。
    正確に分析するなら部門別売上がどっかにあった気もするけど
    探すのは面倒いなぁさすがに。
    近年百貨店はファッション比率が低下し続けてるので
    もう法人外商や美術が重要部門になってる気がします。
    オンワードの経営悪化と百貨店ファッションの凋落が同じ感じですね。

    今日のユニクロのチラシみたら二月は一部を除き折り込みチラシ中止と予告してました。
    これは柳井の挑戦?社内でなんかあったのか?
    まあマンネリしてたから柳井さんが御前会議でブチギレたんかなwww

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