予期せぬボーナス
2014年2月3日 未分類 0
中国国内の人件費高騰と反日活動の激化によって、急速に繊維製造業の国内回帰が進んでいる。
その一方でアセアン諸国への投資も激増している。もちろん中国への投資は激減している。
こういう状況下にあって、国内縫製業者はどこにも受注であふれかえっており、生産スペースがタイトになっている。
ジーンズOEM生産を手掛ける友人は「今から、新規の注文を受けてくれる縫製工場はなかなかない」という。
国内縫製工場は倒産・廃業によって年々その数を減らしている。そのところへ中国を忌避した受注があるため、生産キャパはすぐにオーバーしてしまう。
さて、金曜日・土曜日と京都でテキスタイル・マルシェを開催した。
生地メーカー数社が集まり、2日間ほとんど寝食を共にするから、各産地の状況がいろいろとうかがえる。
各生地産地も国内回帰の影響から受注が好調に転じているという。
ある生地メーカーが「国内回帰で受注が活況となったことから、安心しきっている生地工場が多数ある」と指摘した。
しかし、国内生地工場も縫製工場と同様に、倒産・廃業によって年々社数が減っている。
そこに注文が戻ってきたのだから1社あたりの受注量はこれまでより増える。
けれども産地全体でトータルすれば以前のピーク時よりも受注量は少ないという状況にある。
国内回帰、日本製見直しの機運が高まったからといって、決して日本の繊維製造業の基盤が強化されたわけではない。縫製や織布だけではない。染色、整理加工など各工程の工場は年々減少し続けている。
今回の国内回帰に安住してしまう工場は遠からず淘汰されてしまうだろう。
国産不振によって、各工場はオリジナル製品開発、オリジナルブランド開発、直接販売への取組といった新しい試みに挑戦してきた。
ここで今回の国内回帰に安住して歩みを止めてしまえば、必ず破綻する。
また挑戦してこなかった工場は、今回の国内回帰があろうとなかろうと早晩に淘汰される。
けれども先ほどの生地メーカーによると、年配の先代社長が跡取り息子に向かって「ほらな、我慢してたらそのうち良いことがあるやろ」と得意顔だという。
何ともおめでたい話である。
現在、アセアンへの投資が急激に増えている。
数年後にはアセアンの生産設備はほぼ完備するだろう。
また現在、中国に進出している日本の繊維製造業は、現在の中国パートナーとともにアセアンに生産工場を作るだろう。
アセアンへの投資は日本だけでなく、中国企業も行っている。
そうなると、現在中国を忌避している受注の多くはアセアンへ流れることになる。
今回の国内回帰はそう長く続かないと見るべきだ。
これまで苦しい状況だったのだから、ホッと一息つくくらいは良いと思うが、そこに安住してしまうのは危険である。
むしろ今回の国内回帰を予期せぬボーナスととらえて、新規事業へ投資すべきである。
また、以前から新規事業を開発していた先行組はこの機会にさらに強化に努めるべきである。
仮に今回の国内回帰の一部が定着したところで、いくら待っても以前の「ガチャマン」時代には戻らない。
幸せだった下請け時代は二度とは戻ってこない。
数年先に備えてもらいたいと思う。
次のボーナスはないのだから。