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南充浩 オフィシャルブログ

すでに「何でもサステナブル」な状態の繊維・衣料品業界

2021年12月13日 トレンド 0

以前にも書いたが、当方は環境に配慮したり公害が出ないようにすることは必要不可欠だと考えているが、行き過ぎた環境配慮や、現在の技術レベルでは実現不可能なことを今すぐ実現しようとすることには全く賛同していない。

 

【ファッションとサステイナビリティー】ファッション企業の調達実態調査 97%が環境・社会配慮品を販売 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

繊研新聞社が認定NPO(非営利組織)のACE(エース)と共同で、繊維・ファッション企業を対象に実施した「サステイナブル(持続可能な)調達に関するアンケート」の結果によると、回答企業96社のうち93社が「人権や環境、社会に配慮した製品を企画・販売している」と答えた。リサイクル繊維やオーガニック原料の使用という回答が多かったほか、よりエシカル(倫理的な)とされるフェアトレード(公正取引)や寄付付き商品を扱う企業も2~3割程度は見られた。

 

とある。

このアンケート調査の結果をどう見るのかは、様々な意見があるだろうが、当方からすれば「当然では?」と感じる。

それは人々の意識がこれまでよりも格段に高くなったというより、素材や織布、染色などの川上でほとんどの企業が「サステナブル」だかなんだかを謳っているため、それを使って製品を作っている企業やブランドは必然的にすべてがサステナブルに理論上はなってしまうからである。

例えば、最近だと、東京の知人のアパレル会社に「大手生地問屋の在庫生地を安値で買い取り、行商して歩く人」が飛び込み営業をかけてきたそうなのだが、この人が掲げているのも「サステナブル」である。

 

売れ残って廃棄される可能性のある生地を引き取って、販売して廃棄を減らしているからサステナブル

 

という理屈である。

この人から生地を買って製品を作れば自動的にサステナブルファッションになるというわけだ。

 

まあ、この人は何も間違ったことは言っていないし、嘘もついていない。

しかし、この人がサステナブルというなら、これまで大手生地問屋から売れ残りの在庫生地を安値で買い取り、投げ売り価格で販売していた西日暮里や船場の生地安売り店は60年くらい前からサステナブルに特化していたといっても問題ない。

同じ理屈でいうなら、売れ残りの不良在庫服をブランドから買い取って投げ売りをする在庫処分店はみなサステナブルである。ショーイチもラックドゥもサステナブルである。いっそのこと「在庫処分店」ではなく「サステナブルショップ」とでも名乗ればいい。

 

また知人の薬剤販売会社は、抗菌・抗ウィルス加工剤を主力商品の一つとしている。

抗菌・抗ウィルス剤にはさまざまな効果があるがその中の一つに「消臭機能・防臭機能」というものがある。そこに目を付けたこの会社は

 

「この薬剤で加工すれば、消臭機能が付加されるため、洗濯の回数を減らすことができる。洗濯の回数を減らすことはサステナブルだ」

 

という謳い文句で販売している。

これもたしかに嘘はついていない。洗濯を頻繁に行う理由は、汚れるからということのほかに、洗濯しないと服が臭くなるということもある。

ニオイがしなくなるのなら、今まで毎日洗濯していたのを2日に1度、3日に1度にしても問題ないだろう。その分、洗濯に使用する水の量は減るかもしれない。(逆に1度にドカ洗いするので水の量は減らないかもしれないが)

そうすると水の使用量、生活排水の削減をしたからサステナブルだということになる。

これは確かにそうだ。

そういうわけでこの抗菌加工剤で加工された衣料品はサステナブル製品だということになる。

 

このような販売文句はほぼどの川上・川中企業でも見られる。そのため、それらを使用して作られた洋服はすべてがサステナブルになっても全く不思議ではない。極めて当然の結果で、どの調査会社がやっても同じ結果になるだろう。このようなアンケートはすでに意味をなさなくなっている。

じゃあ、どうしてこの人たちまでがサステナブルを謳うのかというと、それは「売れるかもしれない」と思っているから、洋服ブランド側が「売れると思ってそれを求めているから」に過ぎない。

在庫処分業は昔からあるし、各種抗菌加工剤も20年くらい前からある。サステナブルの高まりでできたものではない。

 

これを謳って売れているのかというと、多分売れ行きは20年前とあまり変わっていないだろう。

となると、サステナブルを謳ったところでそれほど消費者の購買にはつながっていないと考えられる。一部のイシキタカイ向けブランドを除いては。

当方ももう5年近くファッション専門学校で教えているが、サステナブルだからという理由で服を買っている生徒を見たことがない。

生徒が服を買う理由は大きく分けて2つである。

1、その商品(ブランドはいくつか併用で)が高くても好きだから

2、そのブランドが安くてカッコイイ商品を出しているから

である。

ちなみに当方にも25歳と23歳の息子が二人いるが、当方の息子なので彼ら二人もサステナブルが理由で買い物をしたのを見たことがない。

多分、これがマス層の消費行動だといえるだろう。

 

それにしてもこれだけ「何でもサステナブル」という売り方が蔓延していると、実際何がサステナブルなのかもわからなくなっているし、何が問題なのかもわからなくなっている。また、あやふやな根拠不明の事象も多い。

今のメディアや一部イシキタカイ系の集団ヒステリーのような状況は百害あって一利なしとしか思えない。

 

 

3足532円のサステナブル靴下をどうぞ~

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