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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション強化では百貨店の現状維持すら難しいと感じるという話

2021年12月9日 トレンド 0

12年ぶりくらいにフレアパンツが復活しつつある。

要するに裾が広がったタイプのズボンだが、2005年~2007年頃をピークとして、当時ブーツカットのズボンが大流行していた。

カジュアルのパンツはいうに及ばず、レディースのスーツもほぼ100%ブーツカットパンツだった。まるで制服かのようだった。

2008年からズボンのトレンドはスキニーに取って代わられ、その後、2010年代は一部の愛好家を除いてはブーツカットパンツを穿いているのをさっぱり見かけなくなった。

2000年代半ばの大流行の前となると、恐らくは70年代後半のベルボトムブームにまでさかのぼるのではないかと思う。

当方が物心つき始めた80年代、90年代にはベルボトムブームもブーツカットブームも無かった。

中村雅俊が若い頃の学園ドラマでベルボトムのジーンズを穿いているからあのあたりがブームのピークだったのだろうと思う。

そういえば、仮面ライダーストロンガーに変身する城茂役を演じた俳優さんも劇中ではベルボトムのジーンズを穿いていた。

 

まあ、そんなわけでフレアパンツが昨年ごろから久しぶりに復活しているのだが、2000年代半ばのような制服化するのかというと、それはないだろうと感じている。

2008年から2015年頃のスキニーパンツもそうだったが、制服化していたが、2015年以降のビッグシルエット復活後、廃れるのかと思ったら、今でもそれなりに定番化して残っている。

ブームがピークだったころと比べると、細さが幾分かマイルドになって、スキニーというよりはスリムストレートみたいな感じが増えたが、細身ズボンの需要が無くなったかというとそうではなくて一定数量残っている。

それは国内のマス層を抑えているユニクロ、ジーユーの商品を見ても明らかだろう。

スキニーパンツは毎シーズン用意されている。

 

2015年以前なら前のトレンドはほぼ全滅したが、今は、共存する方式に代わってきた。

ワイドパンツとスキニーパンツ、1人の人間が日によって、コーディネイトによって使い分けているといえる。フレアパンツもそういう使われ方をするのではないかと見ている。

あと、個人的にはフレアパンツが体型的に似合わない。「フレアパンツはスタイルが良く見える」みたいな文言をファッションメディアで見かけるが、「それってお前らどのパンツに対しても言って来たよな?」という感想しかない。

スキニーが流行ればスキニーに、ワイドパンツが流行ればワイドパンツにそう言ってきた歴史がある。

結局のところ、記事を鵜呑みにするならどのパンツを穿いてもスタイルが良く見えるということになってしまう。しかし、現実はどうだ?心斎橋にも梅田にもスタイルの悪い老若男女が溢れている。

スタイルの良い人は何を穿いてもスタイルが良いし、スタイルが悪い人は何を穿いてもスタイルは悪いということである。ただ、あるとすると「悪いスタイルが少しマシに見える」という選択肢はあるだろう。

フレアパンツは着る人の体型をワイドパンツ以上に選ぶと感じるので、2000年代半ばのような「制服化」するまでには復活しないだろうと思っている。

 

2015年以降、一つのトレンドが圧倒的にマス化し、制服化するようなことがなくなってきた。

ワイドパンツとスキニーは共存並立している。

そうなると、アパレル各社がこれまでやってきた「マストレンドの〇〇を揃えました」という売り方は意味をなさなくなる。

制服化するほどのマストレンドが無いからそういう売り方自体が不可能になる。

 

当方は百貨店という販路に対して何の思入れもない。

意味もなくプライドだけが高いめんどくさい社員がどの百貨店にも少なからずいたよな、という感想しかない。

しかし、メディアはいまだに百貨店好きで、百貨店の復活策みたいなことを定期的に特集し、識者と呼ばれる人たち(自称も含む)に提言させる。

その多くは、だいたいがファッション強化で、事実報道の内容を見ていてもファッション強化が多い。前回書いた「空きスペースの埋め草D2C」もその一環だといえる。

ただ、今更ファッション強化が本当に効果的なのだろうか?と個人的には疑問しかない。

 

もちろん、当方が50歳を越え、ジジイ化してファッションへの興味が薄れてきたということは大きい要因だろう。それを踏まえても、60年代半ばから2000年頃までの「ファッションへの渇望」は今の大衆には無いと感じる。渇望している人もおられるだろうが、圧倒的に少数派だと感じられてならない。

その少数派にスポットを当てて強化しても、せいぜいが新宿伊勢丹とか梅田阪急みたいな特定単店舗へのテコ入れに過ぎなくなるだろう。大手百貨店チェーン全体が持ち直すはずもない。

こう書くと必ず「可処分所得の減少ガー」という人が湧くが、じゃあ、今、可処分所得が一気に増えたら絶対に服をもっと買いたいと思っている人がどれほどいるのだろうか?

当方はほとんどいないと思っている。最新機種のスマホだとか、自転車だとか、バイクだとか、アクセサリーだとか、最新鋭のゲーム機だとか、犬猫だとか、そういう物に使うという人が多いのではないだろうか。

当方なら何千円~何万円もするから高くて手が出なかったガンダムのプラモデルを買うことを最優先するだろう。

 

マストレンドが多様化、多極化、分散化した上に、どの低価格ブランドで買ってもそこそこマシに見えるから、よほどのジャンキーでない限り、マス層はファッションにそこまでの渇望を覚えなくなっているというのが、当方の見方である。

何も手を打たなければ、好転するはずもないが、埋め草D2Cも含めたファッション強化で百貨店の業績が回復する、もしくは衰退に歯止めがかかるとは全く思えない。

それこそ「コト販売」を重視するなら(重視しすぎても無意味だが)、屋上の遊園地やテーマパークの復活だとか、そういうことを模索した方が効果的ではないかと思うがどうだろうか。

 

 

城茂のフィギュアをどうぞ~

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