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南充浩 オフィシャルブログ

「コロナ自粛解禁」「感謝祭」「+J投入」の3大要因が揃っても前年割れしたユニクロの11月度

2021年12月3日 ユニクロ 3

昨年の秋冬物から少し感じていたが、今春夏その感想はさらに強まり、今秋冬物ではもっと強まっている。

何かというと、デザイナーコラボを除くユニクロの通常ラインのメンズ商品がつまらないということである。

もちろん、業界にはいまだ根強く「ユニクロ=実需品」という信仰を固く守った原理主義な方々もおられるが、国内ユニクロの売上高が8000億円規模にまで成長したのは、ファッション需要も取り込んだためであることは言うまでもないだろう。

当方も2010年代からはそういう客の一人だったといえる。

毎シーズン、コラボラインの値下がりは言うまでもなく、通常ラインの値下がり品もかなりの枚数を買っていた。けっこうおもしろい物があったからだ。

しかし、昨年秋冬からそれが減った。今春夏は激減である。今秋もウェブメディアの依頼でレビューを書くために買ったジーンズを除くと、990円に値下がりしたトレーナー1枚と、同値下げのパーカ2枚のみである。

ベーシック品が増えて、というかベーシック品ばかりになって、値下がりしていても手持ち服と被って買おうとは思わないのである。同じ服を2枚も3枚も持つ必要がないからだ。

専門店11月度、気温低下でも消費回復せず ユニクロは4カ月連続前年割れ – WWDJAPAN

この記事に報道されているように、前年割れである。個人的にはベーシック品の焼き直しばかりで新鮮味がないというのが、原因の一つだろうと思う。

11月度は既存店売上高が4・6%減と4カ月連続の前年割れで、既存店客数は0・9%増と前年並み、客単価が5・5%減となっており、客数は前年並みだが客単価の下落が売上高減につながったといえる。

とはいえ、買い上げ枚数やセット率も落ちているのではないかと推察できる。

ユニクロにとって11月の前年割れというのは、傍から見ているよりも深刻に受け止めているのではないかと思う。

理由は3つある。

 

1、コロナ自粛が解禁されている

2、毎年恒例の感謝祭が今年も開催された

3、去年と同時期に+Jが発売された

 

である。

環境要因でいうなら、前年割れする要素がない。

昨年の11月というとコロナ感染者数が今年11月よりも圧倒的に多く、外出を控えようというムードが高かったが、今年の11月は自粛解禁なので、本来なら昨年11月よりムードは明るい。しかし、客数は前年並みである。

先の記事にも触れられている通り、しまむらの「ファッションセンターしまむら」は同4.7%増である。またアダストリアは同5.3%増であり、好転している会社もあるのだから、問題は環境ではなくユニクロ自身にあるといえる。

 

ここから考えられることは、

 

1、感謝祭が前年ほど売れなかった。もしくは、中旬に開催された感謝祭が売れたとしてもそれでも補填できないほど前半に苦戦した

2、+Jの売れ行きが昨年よりも悪い

3、コロナ解禁にもかかわらず、買い上げ客数(ひいては来店者数も)が伸びなかった

 

ということになる。

 

1については、11月中旬から開催した感謝祭期間中に何度もラインやメルマガ、アプリへの通知が矢継ぎ早にあったことから売れ行きが芳しくないのではないかと感じた。

2については、昨年秋に発売したところたちどころに完売品番が続出した+Jだが、今年は今のところそこまで完売品番が出ていない。生産数量を増やしたことも大いに考えられるが、それとともに売れ行きが昨年物よりも少ないのでその相乗効果によって完売が少ないのではないかと考えられる。

3については、「前年並み」ならいいじゃんと思うかもしれないが、繰り返しになるが昨年11月はコロナ感染者数が増えており、緊急事態宣言待ちという状態で、外出意欲は乏しい人が多かった。今年はコロナ自粛解禁であるのに前年並みということは客脚が伸びていないということになる。もしくは昨年秋の+Jによる集客数がコロナ禍にもかかわらず多かったか、である。

4カ月連続の前年割れの中でも、これだけ好要因に恵まれた11月の前年割れはユニクロにとっては結構衝撃的なのではないかと思う。

8月は毎年そんなに売れ行きが良くない。9月・10月は秋物の立ち上がりなので期待はあるが、今年はまだコロナ自粛が続いていただから、前年割れもやむなしという判断もできる。

しかし、解禁の11月は環境による言い訳はできない。

自分はユニクロの商品力が落ちたから売れ行きも落ちたと考えている。

順不同で思いつくままにいうと

1、通常ラインがベーシック品ばかりで買い足す理由がない

2、ウルトラライトダウンベストが無印のインナーダウンベストより1000円高く、しまむらより1290円高い。

3、意味不明の男女兼用服が増えた

4、デザイナーコラボラインもマンネリしてきてた(特にユニクロU)

ではないかと思われる。

付け加えるなら、客単価の低下は投げ売り品が増えたというよりも(売り場で商品を見ている限りにおいて)、ユニクロとしては高額な+Jが昨年ほど売れなかったからではないかと思っている。

1は説明不要だろう。カジュアルシャツにスエットトレーナー、スエットパーカばかり。もう日本国民は一体何枚持っていると思っているのか。これ以上買い足す必要もないだろう。

2については以前にも書いた通りで、黒と紺のインナーダウンベストなら無印良品かしまむらで買った方がコスパが高く、ユニクロで買うお得感はない。強いてあげればウェーブ型のキルトのオリーブグリーンだけが目新しいカラーで買う価値があるが、ユニクロもそれ以外は黒と紺なので、なら無印で買った方がお得ということになる。

まあ、もっとも無印良品の衣料も相変わらず6・6%減の前年割れを続けており、インナーダウンベスト以外の洋服の企画はゴミ同然で買う価値がないのだが。

3については無印良品と同じである。例えばメンズにとっては大ベーシック品であるヴィンテージレギュラーフィットチノパンがなぜか男女兼用になっているが、ちょっと意味不明すぎる。言ってみればレギュラーストレートジーンズを男女兼用にするようなものであり、全くマス層の男女から支持を受けることができない。ユニクロもそれがわかっているからジーンズは男女兼用にしないのだろう。

男女はいくら権利が平等だからと言っても体格・体型は異なる。女も穿けるチノパンなんてどこの世界のオッサンが欲しがると思うのかである。

先にも書いた今秋の購入商品スエット1枚、スエットパーカ2枚だが、これはルーブル美術館コラボ1枚とジェフ・クーンズコラボ2枚である。これは最悪なことに男女兼用なのだが、サイズ感が通常のメンズスエットとは異なっていた。試着した結果、Lがジャストフィットなので、XLを購入して自宅で洗濯後着てみたものの、いつものメンズスエットよりもバランスが悪い。個人的には男女兼用服など二度と買わないと思ったが、マスブランドにもかかわらずこういうズレた企画を増やしていることが11月の前年割れの要因の一つだろう。

男女平等という思想は必要だが、着る物も同一にする必要はない。デザインやディテールは共通でも服そのものを男女兼用する必要性はゼロである。

そして、4も大きく、ユニクロUはもうすでにマンネリ化している。今春物、今秋物はマンネリ度合いが酷く、過去の焼き直しと無難な色展開と無地モノに終始している。あれなら、3年前に買ったユニクロUのスエットパーカを今着るのと同じである。

 

と、まあこんな感じだが、ちょっとユニクロの施策、ひいては柳井正という人の施策がマス層のニーズとはズレ始めたと感じる。

今の「過度なベーシック路線」「男女兼用服路線」を来春以降も推し進めるなら、それはユニクロの終わりの始まりだろうと感じられる。

今のままの路線を来春以降も続けたとするなら、何年か後には、ユニクロは夏用・冬用肌着を始めとする実需品屋に逆戻りで売り上げ規模も何千億円か縮小して、GMSの平場みたいなイメージで存続することになるだろう。

 

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 comment
  • ヒデ より: 2021/12/03(金) 6:26 PM

    同感ですね。メンズの売り場で買いたいものはありません。GUもそうです。最近欲しいと思うのは、ワークマンのコーデュロイシェフパンツです。GUにも同じ名称の商品がありますが、ワークマンの方が素材感もデザインも数段上だと感じました。暖かくて履き心地も良いのです。値段もGUより数百円高いだけ。色のバリエーションがもっとあれば言うことなしですが、それでも気に入りました。ユニクロとGUのコラボ以外の商品は、やがてワークマンに食われるのではないかと思います。似たような商品なら、ワークマンの方が良くできているし、値段も安いものが見つかるからです。

  • ハマオ より: 2021/12/03(金) 7:45 PM

    自分がユニクロで購入するものを考えて見るとヒートテック ドライスポーツTシャツ
    UT ジョガーパンツ 3PセットのTシャツ
    ボクサーパンツ コラボ企画位ですね。
    この中で定価で買うものは3pセット位で
    後は全部値下げした時しか買わないですね
    GAP程ではないですがユニクロに定価で買うという気持ちにはなれないですね
    感謝祭もここ何年かは値引率が低く抑えられていますよね
    前はこの時に買うと凄くお得感がありましたが今は週末値下げと変わらないですね
    柳井さんは感謝祭の時に配るノベルティーが欠品する事にお客様の期待を裏切ると思っているみたいですがそこではないのではと思います
    そうしたところが微妙にお客様とズレて来てますね。
    自分はユニクロの最近の不振の原因はある女性役員が原因ではないかとみてますが

  • 読者 より: 2021/12/04(土) 1:57 PM

    たしかに今季の施策は?な感じ多かったかも。

    自分の住んでる地方では三年前だったかUのワイドチノが840円になってて(定価4300円)
    お得だと思って買ったらその後540円になりました。さらに2本追加で購入。
    地方都市でトレンドものを販売するのには限界があると思った。
    ワイドパンツなんて普通の人は穿かない。デブがさらに太るだけ。
    他方若者はKPOPの影響大で先日GUの店内でヘソ出しルックの子に遭遇。
    今の若い子は情報において都市と田舎の格差が少なく
    ファッション性高くても売れるのかも。
    ただこれは極端な例であって
    マス的にはユニクロUは南さんの指摘するように壁に当たっていると自分も思います。

    SOFH.やホワイトマウンテニアリングみたいに企画は良い感じなんだけど
    製品が質的にイマイチ感あるのをみると、コストがキツくなってるのも思うし
    現場の担当者があまり自由に仕事できなくなってるのかなとも思う。

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