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南充浩 オフィシャルブログ

え?在庫品の販売ってSDGsなの?

2021年11月17日 トレンド 1

最近、何でもSDGs、何でもサステナビリティ、何でもエシカルで個人的には辟易している。メディアもブランドもエライコンサルもごっちゃにして使っているし、全て「環境」とか「自然」に結び付けているが、そもそもSDGsってのは、SNS上で正しく指摘しておられる方も多くおられるように、17の目標がある。

SDGs(持続可能な開発目標)17の目標&169ターゲット個別解説 | 一般社団法人イマココラボ (imacocollabo.or.jp)

で、この17の目標については、メディアやブランド、エライコンサルは理解していないのではないかと最近そんなふうに感じる。

例えば、

1、貧困をなくそう

2、飢餓をゼロに

とある。

そして意外に知られていないのが

8、働きがいも、経済成長も

である。

 

どこぞの活動家が「これ以上の経済成長は要らない」とか言っているが、経済成長はSDGsなのである。似非の妄言もたいがいにしてもらいたい。

経済成長なしには貧困は無くせないから当然である。

 

で、SDGsなのかサステナビリティなのかエシカルなのかよくわからないアパレルの取り組みがメディアで紹介され、一部の人は沸き立っているのだが、さっぱり意味がわからない。

例えばこの記事である。

アーバンリサーチ、SDGsの取り組み強める キャリー品販売店拡充や備品の削減 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

アーバンリサーチがSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを強化している。今月から備品の扱いなどを見直し、シーズンを過ぎた商品(キャリー品)とハンガーの販売店舗を拡充する。

 

え?キャリー品の販売がSDGsなの?(笑)

キャリー品とは要するに売れ残って来年に持ち越した商品のことである。ユニクロなんかでも売れ残ったウルトラライトダウンやヒートテックインナー、エアリズムインナーを「昨年物」として値引き価格で年がら年中売っている。要するに「在庫処分」である。

この手の「在庫処分」なんてほとんどのアパレルメーカー、アパレル小売店ははるか昔からやってきている。この論法で行くなら、アパレル業界は数十年前からSDGsでしたということになる。

 

アパレル業界は、昔から不良在庫の処分販売をあの手この手でやってきた。

 

1、夏と冬のバーゲン

2、ファミリーセール

3、アウトレット店

4、百貨店や量販店での催事

5、在庫処分屋に売る

 

という具合である。近年はここに「ネット通販での値引き在庫処分」が加わっている。

キャリー品の販売がSDGsなら、これらの活動はすべて立派なSDGsということになる。

 

おまけに備品の削減やハンガーの販売がなぜSDGsなのかはさっぱりわからない。

原因はこれではないのか?

アーバンリサーチグループのショップが大量閉店、7月から8月末にかけて計18店舗が営業終了 (fashionsnap.com)

8月末までに18店舗を閉鎖している。

18店舗閉鎖するということは、18店舗分の不要となった備品、ハンガーが余る。

ハンガーがまるまる余るとは考えにくく、各店舗や自社倉庫に幾分かは蓄えておくだろうが、18店舗分全て蓄えておくというのは物量的にかなり難しいと考えられる。

となると、大量に不要となるハンガーが生じるわけである。

従来ならこれを廃棄する(金を払って産廃として)か、もしくは業者に払い下げていた。しかし、今回はこの不要ハンガーを消費者に販売することにしたということではないだろうか。

理由はわからない。

廃棄を嫌ったのかもしれないし、ハンガーだけでもカネに変えたいと思ったのかもしれない。もしくはその両方か。「廃棄は環境ガー」という以外に、産廃として廃棄するとカネを払わなくてはならないからそれを嫌ったという部分も大きいだろうと思う。

8月末までに大量閉店して、11月からハンガーを売るということで、時期から類推するとピッタリと符号する。

またキャリー品販売強化についてもこの18店舗の閉鎖で、もちろん各店舗で閉店セールを行い数量は減らしただろうが、何枚かは確実に売れ残るので、その分が例年よりも売れ残り在庫を増やしたのではないかとも考えられる。

 

 

この手の「黒を白に言い換える」という報道や発表が、アパレル業界に限らず、物事の本質を却ってわかりにくくしているように感じられる。

そして訳の分からない小手先のテクニック論ばかりが生み出されて、結局何がしたかったのかわからないという事例が近年多すぎるように感じている。

 

もうすでに、各アパレルともにキャリー品の処分販売を強めている。何もアーバンリサーチがことさら特別なことをしているわけではない。

催事販売の回数も増えているし、ネット通販での在庫処分値下げ販売も珍しくなくなった。

また夏と冬のバーゲンも期間が伸びているし、夏と冬にかぎらずハロウィンだのブラックフライデーだのでバーゲンの回数も増えている。

ショーイチがクローズアップされている在庫処分店も存在感を増している。

 

逆にSDGsとやらを掲げて「アパレルの廃棄を減らせー」と言いながら、有象無象の非アパレルが訳の分からない売れるか売れないかわからないような新規ブランドを立ち上げる方が、個々の規模は小さくともトータルすると、よほど売れ残りの不良在庫を増やしているのではないかとさえ思う。

アパレルはそれでも通用するチョロい業界だと思われているだけなのかもしれないが。

 

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 comment
  • たまも より: 2021/11/19(金) 12:13 PM

    繊維ニュースの記事がサステナブルだらけで、さっぱり面白くなくなった。

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