販促手法としては賛成だが・・・
2014年1月14日 未分類 0
販促に使う説明文やキャッチコピーについて考えてみる。
今回はユニクロがサイト上で使っている自社のジーンズに対するコピーである。
個人的に気にかかったのが、
1、パターンをミリ単位で設計
2、希少性の高いデニム生地を使用
という2点である。
1でいうなら、大概のメーカーはパターンをミリ単位で設計している。
現在、量産商品のパターン作りはCAD/CAMというコンピューターシステムで行われている。
そして出来たパターンに沿ってパーツを裁断するのも機械による自動裁断である。
手書きパターンで手で裁断するのはよほど生産数量の少ないブランドである。
ユニクロほどの生産枚数がなくてもCAD/CAMでパターン作りは行われているし、パーツは自動裁断機で裁断されている。
で、パターンをシステム上で作る際にはどんなブランドでもミリ単位で設計を行う。
別にユニクロの専売特許ではない。
アイテムのシルエットのバランスやサイズバランスを指して「ミリ単位の設計」というなら、それも各ブランドは通常業務としてこなしており、センチ単位で修正する場合は、アイテムのシルエットそのものやサイズバランスそのものを変える場合である。
2に移る。
カイハラ社製のデニムのクオリティが高いことは業界の津々浦々まで鳴り響いている。
旧式力織機で織り上げたセルビッジデニム生地の希少性が高いことを謳っているが、ユニクロのジーンズは平均的に年間1000万本を売り上げると言われている。
某紡績から教えられたところではピーク時には1000数百万本、不調時ですら800万本の販売量があったという。
年間1000万本内外を生産するアイテムに使われている生地が「希少性が高い」はずがない。
通常のジーンズメーカーのヒット商品ですら、2万~3万本の販売量である。よく行っても数万~10万本である。
それですら「希少性が高い」とはとても言えないのに、それを500倍上回る数量を製造できるのだから「希少性が高い」とはとても言えない。
で、この2点の言い回しに関して筆者はかなり違和感がある。
なぜなら1に関していえば「当たり前」に過ぎるし、2に関していえば「ちょっと表現がオーバーすぎる」と感じるからだ。
しかし、他方で「一般消費者にわかるように伝えようとするならこういう表現になるのではないか?」という意見もあり、この意見には筆者も賛成する部分がある。
一般消費者は生産のことまであまり知識がない。
そこに向けてわかりやすい表現をするとなると、ユニクロの使った文言に全面的に賛成はできないが、それに近い表現になるということも理解できる。
反対に、今まで「当たり前」のことを一般消費者に説明してこなかった業界側にも責任の一端はある。
筆者も含めた業界関係者は「ミリ単位の設計」なんて当たり前のことをわざわざ消費者に説明してこなかった。
それをもっと説明すれば、現在のような衣料品不振には陥らなかった可能性もある。
某化粧品メーカーがテレビCMで「当社の工場は消毒してから作業をしています」と重々しい声でナレーションしているが、化粧品関連の業界に勤務する人間は「どこのメーカーの工場も当たり前にやっていること」と切り捨てる。けれども業界関係者にとっては当たり前でも一般消費者は知らないかもしれない。
一般消費者の知らない(であろう)ことを伝えるのが販促の手段としては最適である。
そういう意味においては某化粧品メーカーもユニクロの販促は王道だといえる。
逆にこれまで業界がその部分を伝えてこなさすぎたのではないかともいえる。
製造業者もブランド側ももっと伝える必要があったのではないか。ユニクロの販促に見習える部分は大いにある。
それらを踏まえた上で、ユニクロのキャッチコピーと説明文は大げさすぎて筆者は大嫌いだということをお伝えしておきたい。