MENU

南充浩 オフィシャルブログ

電動ファン付き服の市場規模が昨年夏よりも減少した理由を考えてみた

2021年10月28日 トレンド 0

世間的な評判が高い割に実売にはあまり結びついていないというケースが昔からアパレル業界にはある。

例えば、〇〇という製品の人気が急上昇しているという評判になっているのに、終わってみるとあまり売上高は増えていないというようなケースである。

これは本当に昔からある。当方の知る限りでも駆け出し記者だった24年前からある。

その場合、売り上げ枚数が少なかったのか、販売客単価が低かったのか、のどちらかである。もしくはその両方が起きた可能性もある。

評判の高さと販売実績の両方を加味して考慮しないと、それこそ、不良在庫が生じてしまって環境破壊ガーと後ろ指を指されることになってしまう。

 

今年の商戦でいうと、電動ファン付き服はまさにそれだったといえる。

真夏の暑さに耐えかね、電気代の節約も兼ねて、当方は電動ファン付き服を8月頭に購入した。「空調服」も含む電動ファン付き服は、最近ではすっかりと市民権を得て、一昨年くらいからはワーキングユニフォーム業界を飛び越えて、一般アパレルブランドでも発売が始まった。

当方もそれに乗せられた口である。

で、実際に身の周りを見ていると、今年8月のお盆ごろから(今年のお盆は記録的な長雨で気温は低めだった)電車内でも電動ファン付きベストを着ている人をちょくちょくと見かけるようになった。

着用している人はもれなく中高年男性(推定60歳以上)である。

そういう意味では、一般消費者層への浸透が高まったといえる。

 

どこかのメディアのアンケートでも来年以降に期待できる商品の上位に電動ファン付き服がランクインしていた。

後ろ姿

 

 

 

 

では実際の販売実績はどうだったのかというと、昨年よりも微減に終わっている。

繊維ニュースが報じている。

EFウエア 今夏の市場規模140億円に | THE SEN-I-NEWS 日刊繊維総合紙 繊維ニュース

EFウエア 今夏の市場規模140億円に

今夏の電動ファン(EF)付きウエアの市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年の約150億円を割り込み約140億円にとどまりそうだ。

とのことである。

メーカー出荷ベースでは2020年夏よりも10億円減少しているのである。

これは何故だろうか?

 

このブログでも何度か電動ファン付き服について書いたが、業界からは「今夏(2021年)実績は伸び悩んでいる」という声が圧倒的だった。

理由は大きく分けて2つ考えられる。

1、今年は猛暑がマシだった(最高気温35度越えの日が少なかった)

2、法人からの注文が昨年よりも少なかった

ではないだろうか。

 

1についてだが、当方にとって暑いことには変わりはなかったが、最高気温35度越えの日が昨年・一昨年よりも格段に涼しく、まだマシだった。

また8月のお盆は例年だと猛暑のピークになるがここに歴史的な長雨があり気温も30度前後までしか上がらず、比較的凌ぎやすかった。

こうなると、急いで買わなくてはならないという気持ちが無くなった人も多いだろう。

次に2だが、これは気温云々以前から言われていたことで、今年に入ってから法人受注がかなり減少したとのことだった。

法人需要が減少した理由も大きく2つあると考えられている。

1、今年はコロナ給付金の支給が無かった

2、必要だと思っていた法人はあらかた昨年までに買い求めてしまった

である。

 

業界から聞こえてきた今夏の声は

「一般消費者向けの購買は好調だが、法人受注は減った」

とのことである。

 

たしかに消費者向けの販売は好調だったように見える。当方が買い物に行った際、ワークマン女子の店頭にはもうXLサイズしか残っていなかったし、ワークマンの通販サイトはすべて完売していた。

また、一般アパレルブランドでも導入例が多かったし、当方が買ったのはそごう西武の通販サイトだから、百貨店のネット通販まで扱いだしており、販路は格段に広がった。

それにもかかわらず、実売金額が減ったというのは、法人受注の数量がいかに大きかったのかということを物語っている。

 

一般消費者が電動ファン付き服を買うのは1枚、よくて色違いで2枚だろう。

しかも1度買うと、よほどイレギュラーな破損でもしない限り、買い替えるのは5年後くらいになる。

一方、法人(建設会社など)は、最低でも5~6枚(零細の会社だとスタッフ5人くらい)は一度に発注があるし、多ければ何百枚、何千枚、何万枚の発注が1社からある。

不特定多数の一般消費者にチマチマと販売するよりもよほど効率的だし数量もまとまる。そして、その数量は今夏の一般消費者向けの数量よりも圧倒的に多かったということになる。

 

昨年夏のコロナ給付金で、法人需要はかなり取り切ってしまったと言われることを考えると、来年夏の販売実績は下手をすると今夏と同等にとどまってしまう可能性も低くないのではないだろうか。

来夏は一般消費者にどれほど広がるかがカギになるが、一般消費者向けの販売は需要予測が立てにくいため、よほどMDの精度を高くしないとメーカーや小売店の不良在庫は増えてしまうかもしれない。

 

評判が高い割に販売実績が伴わないという商品は今後も生まれるから、評判と実績のバランスを正確に見極めることがMDには要求される。

アパレルに限らず、評判先行で過大評価されてしまう商品やサービスは多々世の中に存在しているが、評判だけに惑わされずに取り扱う姿勢が重要になってくる。

 

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ