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南充浩 オフィシャルブログ

ど素人からの生産依頼にも繊維業界が飛びつきたくなる理由

2021年10月27日 トレンド 1

ちょっとしつこくて恐縮なのだが、今回も前回の続きである。

しつこい男はモテないと言われるが、事実モテてないからしつこく続ける。

インフルエンサーブランドはOEM&製造加工業者が思っているほど美味しい商売ではない – 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info)

 

このブログをアップして何時間か後に、こんな記事が流れてきた。

読んでみて、ああ、根っこは同じだなあと思った次第だ。

「NUTTEで頼んだ人」「頼まれた人」それぞれの愚痴を聞いてわかったことをまとめてみました(^-^)|C.A.Dimple塾|note

 

どんなシステムにもメリットとデメリットがある。

メリットとしては、失礼な言いかたになるかもしれないが、今まで埋もれていたような縫製職人や小規模工場へ仕事が生まれることがある。

デメリットとしては、ここでまとめられているように、いわゆる「ど素人」相手にやり取りをすることになるから、同じ日本語で話していても、さっぱり意味は通じなくて、何度も何度も修正を繰り返さざるを得ないということ、である。

 

縫製職人と、依頼主は同じ言語で話していても全く意思疎通ができていないし、どうしてほしいかも伝わっていないし、逆に職人側の答えも理解されていない。

そして、これはOEM&製造加工業者とインフルエンサーのやり取りと全く同じなのである。

これは当方も顔見知りのOEM業者の実録ツイートである。

 

インフルエンサーはど素人だから、業界用語を全く知らない。全く知らないから的確な指示も出せないし、要望を伝えることもできない。

受けてのOEM業者は、比較的理解力もあり柔軟な方だと当方は平素から評価しているが、それでもやっぱりつかみ切れていない。

これが今のインフルエンサーやど素人相手の現場である。

 

じゃあ、これを解決するにはどうすれば良いのか?である。

方法は2つしかないと思っている。

 

1、通訳のできる人間を間に挟む

2、依頼主が業界知識を身に着け、受け手は聞き方を学ぶ

 

である。

先ほど挙げたヌッテに関する記事でも

 

パターンや縫製を頼んだ人も、頼まれた人も、
それぞれ「デザイン」「パターン」「縫製」の基礎知識が必要だなと!

だから頼む方も少しは基礎知識を学んでから頼みましょう!

頼まれる方は、そんなもんだと思って、聞き方を勉強しましょう!

 

という解決策に達している。

このどちらか、もしくは両方を行わない限り、状況は今後も改善されることはないだろう。

 

さて、当方がOEMの商談に立ち会った最後の記憶は5年くらい前のことである。

2015年とか2016年ごろである。この頃の業界状況は、もちろん90年代ほどには良くなかったが今ほど悪くもなかった。2019年末までと同じような感じだった。

それが昨春のコロナ禍から急激に悪化した。

営業時短や店舗休業、コロナによる収入減などが相まって、洋服の売れ行きは激しく落ち込んだ。

店頭で売れていないから、製造を控えることになるのは当たり前である。

 

なぜ、OEM&製造加工業者がインフルエンサーブランドに飛びつくのかというと、この商況の悪化が関係している側面もあるそうだ。

5年くらい前だと、OEMの商談では「1型サイズ込みで100枚」というのは、個人・零細ブランドを除いた中規模以上のブランドなら当たり前の発注量だった。

国内の縫製工場と、中国の一部の縫製工場は1型100枚というのがだいたいのミニマムロットと設定されている。

しかし、コロナ禍が始まってからはこの1型100枚に達しないブランドが増えたとOEM業界では言われている。相当に有名な大手ブランドでさえ、1型100枚に達しないことが珍しくなくなったそうである。

ブランド名を聞けば「あの有名ブランドたちが?」と驚くことになるだろう。1型50枚くらいが普通の発注量になってしまっている。

それに比べて、売れているインフルエンサーブランドなら1型100枚とか1型300枚とかは珍しくないそうなので、そりゃあ飛びつきたくもなるのも無理はない。

2019年までだったら、たかだか1型300枚程度の発注数量のど素人ブランドに飛びつく必要などさらさらなかっただろう。

だがこのコロナ禍では1型300枚程度の発注量でさえ「大口客」ということになってしまっている。

何ともすさまじい話である。

 

コロナ禍が収束すれば、もう少し活況にはなるだろうと思うが、現状の国内市場では、ユニクロ、しまむら、ジーユーという極少数の超大量生産ブランドと、1型50枚程度のその他大勢のブランドという完全な二極化が起きているということになる。そして、ユニクロ、しまむら、ジーユーの超大量生産は海外工場で行われていて、国内工場や国内OEM業者は1型50枚の発注に対して争奪戦を繰り広げているということになる。

そしてその争奪戦の産物がインフルエンサーブランド数の増殖ということにもつながっているといえる。

DX(デラックスじゃないよ)の推進とか、サステナブルとか、そんなお題目ではこの状況は絶対に解決しないだろう。

 

インフルエンサーなTシャツをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/10/28(木) 11:21 AM

    うちは金属加工業ですが、業者間でもJISの表記をちゃんと理解してなかったりで話が通じなかったり、指示が間違って理解されたりしますねw
    メッキとか膜厚5ミクロンというJISの表記があると、本来は「5ミクロン以上」となるのが正解なのに、メッキ業者によっては「5ミクロン狙いで4~6ミクロン」と思ってる所があったりして。ま、うちの工場の部長クラスでも全然JISの規格を理解してないですがw
    服飾関係もJIS規格で色々決まってるはずですが、多分同じような感じなんでしょうね。

    ちなみに、今、中国で黄燐の生産が電力不足とか環境保全の関係で止まっていて、メッキ屋さんはメッキ液(次亜リン酸ナトリウム)が高騰して来年以降はメッキ代も上がりそうです。あと鉄、ステンレスも値上がりしてるので、服飾でもボタンとかファスナーとかの値段上がっちゃうんじゃないですかね?

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