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南充浩 オフィシャルブログ

実店舗の売上高減少を補完しきれていないアパレルのネット通販

2021年10月21日 ネット通販 1

これまで度々書いてきたことだが、洋服のネット通販については、今回のコロナ禍のような長期間にわたる営業自粛が今後も起きる可能性があるため、不可欠であることは間違いないが、実店舗の減少分を完全にカバーできるほどの額ではないし、新たなファッションの需要を作っているわけではない。

 

まず、こちらの記事だ。

コロナ禍における新たなEC消費・行動変容に関する調査 10~30代のEC利用が増加 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

オンラインで買い物・サービス利用をする頻度はコロナ禍でも「変わらない」と回答した人は57.3%と半数を超え、「増えた」34.5%「減った」4.8%となった。年代別では10代女性の6割、10代男性と20~30代女性の4割以上が「増えた」と回答しており、特に若い世代でEC利用の頻度が増加していることがわかった。

 

とある。

表題にもあるように「コロナ禍において」という状況なので、増えたのは実店舗の休業・営業時短・撤退に寄る物だろう。

逆に注目すべきは、コロナ禍においても「変わらない」と答えた人が6割弱の57・3%もいるということだ。我が国市場において、いかに実店舗が強いかということがわかる。

今年10月1日からコロナ自粛が開け、今のところ、感染者数が激減している。もし、この調子が続けば、実店舗売上高は幾分か回復し、ネット通販需要はよくて横ばい、下手をすると微減に転じるのではないかと思う。

 

一般的にネット通販市場は拡大し続けていると解釈されているが、経産省の統計データによると、2020年は微減に転じている。

電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

令和2年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、19.3兆円(前年19.4兆円、前年比0.43%減)とほぼ横ばいになりました。また、令和2年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は334.9兆円(前年353.0兆円、前年比5.1%減)に減少しました。

とのことで、2020年度は2019年度と比べて1000億円ほど減少している。

これには理由があって、経産省はEC市場を①物販分野②サービス分野③デジタル分野の3つに分けている。

2020年は春以降コロナ自粛が続いたので、②のサービス分野の市場規模が36・5%減と激減した。サービス分野というのは主に旅行サービスが占めており、旅行サービス・飲食サービス・チケットサービスが激減した。

 

とはいえ、店舗休業・営業時短・店舗閉鎖の影響から物販は増えているし、自宅待機が増えた分だけデジタル消費は増えた。

ただ、旅行を中心とするサービス分野が回復しないことにはEC市場全体は今後も良くて微増、下手をすれば減少傾向が続くのではないか。

 

物販分野の内訳の表をお借りした。

 

内訳の中で衣料品を見ると、1兆9000億円(2019年)から2兆2000億円強(2020年)へと19・4%増となっている。約3000億円強増えたということになる。

コロナ禍による店舗休業・営業時短があれほど続いたため、ネット通販に頼らざるを得なくなったという状況下で衣料品のネット通販売上高が業界全体で3000億円増えたということをどう捉えるかだ。

当方は「意外に伸びが小さい」「3000億円しか増えなかった」と捉える。

 

国内アパレル市場に関する調査を実施(2021年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所 (yano.co.jp)

2020年の国内アパレル総小売市場規模は前年比81.9%の7兆5,158億円

~その他(通販等)チャネルのみ前年から伸長するも、専門店、百貨店、量販店はいずれも規模縮小~
もうご存知の方も多いが、矢野経済研究所が発表した2020年の国内アパレル総小売市場規模はコロナ禍の影響で7兆5000億円にまで縮小した。コロナ前の2019年は9兆1700億円だったから、約1兆6000億円低下したことになる。
矢野経済研究所と経産省の統計では集計の手法や範囲が異なると思うが、単純比較してみると、ネット通販売上高の3000億円増を含めて、アパレル小売市場は1兆6000億円縮小しているのだから、実店舗は1兆9000億円低下したと考えられる。
これで考えても、ネット通販は好調だと言っても、実店舗売上高の減少を完全にカバーすることができていないことがわかる。
ネット通販の伸びは、実店舗売上高の減少の6分の1程度しかないということでもある。
ネット通販がアパレルの新しい市場を創造しているというのであれば、少なくともアパレル小売市場規模は増えていなくてはならない。
現在の状況はコロナ禍で圧倒的に実店舗の稼働が減っているにもかかわらず、ネット通販の売上高の増え方はそれに追いついていないということにしかならない。
実店舗で買っていた客の何割かが「店が閉まっているので仕方なく」ネット通販で代用しているというのが実態である。
また、スマホやQRコードによるキャッシュレスについてもSNS上でイキっている奴らが思っているほど広がっているわけではない。
冒頭の繊研新聞の統計記事によると、

オンラインでの買い物・サービス利用で最も利用している決済手段は、「クレジットカード」が64.1%と圧倒し、続くペイペイが7.6%、コンビニエンスストア決済が3.8%という結果だった。

 

との結果が出ており、クレジットカードが6割以上と圧倒的で、あれほどのキャンペーンを続けていたペイペイはわずか7・6%しかない。

今後も我が国ではキャッシュレスはクレジットカードが大多数を占め続け、業者からの手数料の徴収が始まったペイペイを導入する店舗は10月以降減少に転じ、占有率はさらに低下すると当方は見ている。

IT業者もマスゴミマスコミもこの辺りの統計データを基に考えるべきだろう。またアパレル業界も煽られることなく、事実に立脚した施策を採るべきである。

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 comment
  • マスゴミ より: 2021/10/21(木) 11:59 AM

    このデータを見るだけでは、オンラインで買い物・サービス利用をする頻度はコロナ禍でも「変わらない」と回答した人は57.3%と半数を超えた=実店舗が強いとはならないのではないでしょうか。

    そもそも、「変わらない」と回答した人の中には元々ネットで買い物する比率が高い人も含まれているはずです。そこを無視して結論を出すのは些か乱暴かと。

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