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南充浩 オフィシャルブログ

繊維関係の製造加工業者がすぐに電話をかけてくる理由

2021年10月14日 ファッションテック 1

以前にも書いたが、5年くらい前までお世話になっていた小規模なOEM事務所の社長が亡くなられた。

この5年間はお会いしていなかったので、その点については大いに悔いが残っている。

まだ、お元気だった頃、よく事務所にもお邪魔して、業務の様子なんかも拝見させていただき、非常に勉強になった。

当時は中国工場とのやり取りがメインだったが、やり取りはメールとスカイプでやっておられた。ZOOMなんて影も形もなかったし、逆に昨年からのコロナ禍ですでに一定数量普及していたはずのスカイプよりも聞いたこともないZOOMがなぜ、突然クローズアップされたのかはいまだに疑問でしかない。

それなりの規模感がある中国工場だと、スカイプは完備していたということなのだが、それ以上に中国工場ではそういう窓口専門の人がいるというのが大きかった。

工場の現場で機械を操作している人が、スカイプも並行していやっているわけではない。

日本だと、ブランドと工場をまとめる役割としてOEM屋とか振り屋がいる。まあ、業務品質はピンキリだが。

一方、一定規模の中国工場には、工場スタッフとしてそういう役割を果たしてくれる窓口とか部門があるそうである。

だから、もちろん年に何度かの面談・商談は重要だが、それ以外はメールとスカイプで業務が進行できたわけである。

 

さて、中国工場のこのシステムでのやりとりに慣れている人にとっては、国内工場とやり取りすることは極めてめんどくさいと感じられてしまう。

なにせ、メールとスカイプ(今ならZOOMか?)でのやりとりではなかなか仕事は進まないからだ。メインは通話とファックスになる。特に通話は多い。

工場関係者、もしくはそういう先との付き合いの長い人は、当方に対してもすぐに電話をかけてくる。

電話にはいつも必ず出られるわけではないし、出てみると「明日の飲み会は参加すんのん?」みたいな取るに足りない事案も多いので、イラっとすることが多いのは事実だ。

明日の飲み会の参加くらいメールかチャットで送れよ

と思ってしまうし、この思いは今後も変わらない。

 

 

だが、ところ変われば品変わるではないが、普段の業務の環境や育ってきた環境が異なれば、行動が異なってしまうのは仕方がないという側面もある。51歳ともなればそれくらいは理解できる。

で、往々にして国内の製造加工場はDX(デラックスではないよ)が進んでいないという議論があるが、進まないのには進まないなりの理由がある。

決して、中の人がサボっていたりやる気がないわけではない。(やる気のない人もおられるが)

そうではないよということを、マサ佐藤氏のブログに参加した山本晴邦さんのエントリーから引用しよう。

 

「メール見てないんですか?」は地雷原。 | ファッションビジネス ・リテールMDアドバイス ・マサ佐藤 (msmd.jp)

 

発注書や依頼詳細など、書面にして渡すのは当然のこととして必要なのですが、実際に現場に入って作業にしかかると、書面になっていても手元ですぐ確認したいがために依頼主の担当者へ電話で確認するなんてことはよくある話です。

紙で届いている依頼は現場へ持ち込んで確認などはしているのですが、メール文面に追記で変更内容コメントなどを入れている場合、現場では確認できないことも多いです。工場現場は効率を上げるために日中の作業時間を最大限に活かそうとします。そのため、事務所に戻ってメール確認をしている時間を省くために電話確認している場合が多いです。

 

工場見学(接待旅行ではない工場見学)に行かれるとお分かりになると思うが、パソコンが多数置かれているような工場はほとんどない。

コンピュータ制御するような工程ではパソコンが置かれているが、それとても制御用の1台くらいだし、それ以外の工程では工場のライン内にパソコンなんて置かれていない。

おまけに工場内の環境は過酷である。サウナくらいの高温多湿や激しい騒音などなどだ。

じゃあ冷房かけたらええやん、とか、消音装置を強化したらええやん、という話しではない。

糸が切れないように、とか、染色加工・整理加工の課程ではどうしても必要だから、という理由で高温多湿になっていて、エアコンをかければそれはB品を生み出す原因となる。また、例えば自動織機の音を消す装置なんていうのは存在しないはずである。

自動織機の凄まじい音が屋外に漏れないように防音にしている工場はあるが、織機の音そのものを消すことはできない。

そんな環境下にパソコンなんて置いておけるはずもないし、スマホやタブレットを持ち込んでも故障の原因になるし、着信音は機械音にかき消されて聞こえにくい。

また工場のラインが動いているときにそれを止めて、30分に1回とか1時間に1回とかメールを確認することはできないし、画面を見ながらラインを動かすこともできにくい。

 

変更内容を依頼書やメール文面で記載してあり、現場の担当者もその内容を確認した上でも、作業にかかると意味合いの確認が必要になることもあります。記載内容が理解できる内容でも実際に取り掛かると不都合が出たりするものです。解釈の齟齬もあり得ますからね。

だから現場の方々は電話の確認が多いです。それを「メール見てないんですか?」なんて冷たくあしらってしまうと、(見て読んで、やってみて意味わかんねぇから聞いてんだよ)と、地雷を踏んでしまうのでなるべく電話対応はして欲しいのが製造側からのお願いです。

 

また、DXするためには多額の投資が必要になるから、今の国内工場にそれだけの投資をできるところは数少ない。

工場側の人間がアパレル企業や商社、小売店の業務内容について無知なゆえに、的外れな批判をすることが多いのと同様、ITやアパレル、小売店の人間が製造現場について無知なゆえに、的外れな批判をすることも多い。それが実状である。

なので、製造加工業者が「明日の飲み会どうすんのん?」という案件だけで電話をかけてくるのも、また仕方のないことなのだと思うようにしている。

 

 comment
  • とおりすがりの元・服売り より: 2021/10/15(金) 11:32 AM

    この問題は年代、職業、地域性など複数の要因でそういう手法で生きる人が生まれてるのでは?と推測しています。

    自分はIT職でチャット、メール、電話などなど複数の連絡手段のメリットや特性を活かし、その時々で最適な方法を選んでます。
    例えば、チャットはメールほど形式張らないけど急ぎでない用事。ちなみにSMSはこれに立場を奪われ、今や二段階認証専用ツールに成り果てました。
    メールは急ぎではないが、チャットで書くには重いor文章で説明が必要な用事。
    電話は急ぎで確認したい用事。
    場合によっては、「メールじゃないと伝えにくいけど、急いでる」ということもあるので、電話+メールのように組み合わせることもあるかと思います。

    さて前段が長くなりましたが、これらツールの特性や使い分けができてない人が、そういう手法を取ってくると感じます。
    例えば、うちのオヤジの話なのですが、チャットで10行以上の長文を送ってくることもあれば、まったく急ぎでもないしょうもない理由で電話してくることもあります。
    これは明らかに前述のような連絡手段のメリットや特性を理解してないことが表れてます。
    オヤジはITにかなり疎く、何十年も営業をやってきていて、しかも管理職だったので相手に時間を取らせることをなんとも思っていないようなんですね。

    これは連絡手段のメリットや特性を理解し、使い分けてる人間からすればとてもストレスフルです。
    これに対する解決策は、連絡手段のメリットや特性を口伝するほかないです。
    毎回「そんなことで電話しないでくれ」とか、いっそ電話に出ない強硬策にする、相手以上に読みづらい長文をチャットで送る、などなどです。

    ちなみに自分はこれでもオヤジの問題は解決しなかったので、もう諦めました。
    そもそも、考え方の不一致で最近ほぼ連絡取ってない、というのもありますが。

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