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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品分野でネット通販とオンライン展示会が占有率を高めにくい理由

2021年10月13日 トレンド 2

実は昨日、またジーユーで値下げ品を買ってしまった。

スリットロングシャツである。定価1990円が990円に値下がりしていた。

いわゆるチュニック丈で丈長のシャツでタックアウトして着用する。白・黒・薄ブルーの3色展開だが、迷わず黒を選んだ。

 

 

 

白は汚れが目立つから嫌だし、すでに似たようなモノを持っている。もう少し黄味がかったクリーム色だが。

薄ブルーもすでに何年か前にユニクロのアンダーソンコラボで似たようなモノを持っている。

最近はまた黒い服を着ることが増えたし、黒のロングシャツは手持ちに無かったので買った次第だ。

 

当方はユニクロ、ジーユーの両アプリのヘビーユーザーである。

必ず火曜日と金曜日に値下げ品をチェックし、店舗在庫検索機能を使い、どの店には豊富に在庫が残っているのかを確認してからその店舗へ向かう。

どの店にもない場合のみそのままオンラインで買うが、実物と見比べてから決める確率はだいたい8割強である。

素材組成は綿63%・ナイロン37%だった。

ここで当方は商品の特性上、恐らくは綿ナイロン混で柔らかい感触の生地を想像していた。その方がドレープ感があってデザインに適しているだろうと。

しかし、レビューの中には低評価のものがあって「レインコートのような生地でした」と書かれてあった。

それを頭に留めて、売り場で現物を触った。

なるほど、レインコートのように感じる人がいても不思議ではない。

ドレープ感は全くなく、どちらかというと硬くてハリ感のある生地だった。薄手のマウンテンパーカなんかに適しているんじゃないかとも思った。シャツというよりジャケット、コートに近いハリ感だと思う。

しかし、購入した。990円だったからだ。

 

で、何が言いたいのかというと、やっぱりウェブ上の画像や組成表記、説明文だけでは生地の硬さまではわからないなあということである。

低評価レビューこそが生地に関しては事実を言い表していた。

 

で、ここから、先日のこんな記事を連想した。

【専門店】婦人服専門店経営者に聞く オンライン展の使い心地は? | 繊研新聞 (senken.co.jp)

しかしコロナ禍が全国拡大した1年間(20年3月~21年2月)を対象とした婦人服専門店経営者へのアンケートで、アパレル展のあり方への問いには併用でもリアル展を主体にしてほしいと望む声が全体の6割に達し、オンライン展は不要という声も約1割あった。反対にオンライン展示会を望む声は6%と極めて少なく、婦人服経営者にとってオンライン展は満足や納得できないものが多いのがうかがえる。

という記事である。

もちろん、昨年春から始まったコロナ禍において、オンライン展示会、オンラインショッピングが増えるのは当然の結果だし、最も有効的な解決策であったことは言うまでもない。

だが、IT業界や一部の先端的アパレル業界人が思うほどには、オンライン展示会やオンライン通販は目覚ましいシェア率ではない。その理由は、生地の質感や厚さ・薄さなどが一切画面からでは判断できないからである。

また着用した感じもわからない。例えば同じ型紙で縫われた同デザインの服でも素材によっては異なった着用感になってしまう。レーヨンなどのテロっとした素材とパリっとした硬い素材で同じ形の服を作っても人間が着用してみると違って見える。

オンライン展示会で小売店に「発注しにくい」と感じさせるのはこの点だろう。

 

オンライン展の不満の多くは商品を手に取って確かめられないことにある。デジタル画像で商品の着心地や触感がわからないのは当然で、色やサイズの実感がつかみにくいのも否めない。その現実からオンライン展を利用しない経営者は少なくない。

うめや(兵庫県姫路市)の梅田繁店長も「数社のオンライン展を利用したが素材・サイズ感が捉えにくい。BtoCのネット通販なら返品できるが、展示会発注はそうはいかないので、商品を直接見られないものは原則仕入れない」と言う。

とあり、これに対して当方は大いに共感できる。

もし、当方が店主、オーナー、バイヤーであっても同じことを思うからだ。

 

毎月セール品を2~4枚くらいアダストリアの通販サイト、ドットエスティで買っている。アダストリアの商品は実店舗で確認せずに画面だけで購入することにしている。

1つには、自分が画面だけでどれほど正確にサイズ感や素材の質感、着用感を想像できるようになるかという訓練の意味もある。

訓練に毎月4000円(送料無料にするため)を支払っているのだから、我ながらアホではないかと思う。

もう3年間くらい続けていると精度は向上してきたが、やっぱり2割くらいは外してしまう。

消費者として買うなら、失敗しても捨てるなり人にあげるなりすれば済むことだが、人に売るために購入する(仕入れる)となると、2割外していては商売にならない。

また、実際に生地を触っていないままで仕入れたとして、買ってくれたお客に満足な説明もできないし、説明のないまま売れても、もしかしたら後日にクレーム返品になるかもしれない。それは返品による損失だけでなく、顧客からの信用を失うというリスクも伴っている。事実こんな一節もある。

 

カワシマ(島根県出雲市)のヤングミセス向けのサブズカワシマは仕入れ全体の30%がオンライン展からの発注だが、やはり的中率は低いと感じている。

 

そうなると、やっぱりオンライン展示会とリアル展示会は併用するのが最も安全だということになる。そして、同じ理由でネット通販もリアル店舗と併用するのが消費者にとっても最も安全だということになる。

この手の議論は、雑貨や家電、家具にはあまり当てはまらず、アパレル製品特有の課題であるといえる。

家電や雑貨だと、素材が少し柔らかかったり硬かったりしても「我慢して使うわ」ということになるが、身に着ける衣服はそうはならない。

 

キャッシュレスの議論と同様に、その手の愛好家にとっては現物やアナログは取るに足りないものと映るようだが、台風や地震などの自然災害が定期的に襲来する我が国では、長期停電も珍しくなく、その際キャッシュレスが進みすぎて手元に現金が無いと、下手をすると生命にかかわる事態(食品や物が購入できない)につながるというデメリットも厳然としてある。

 

オンライン、デジタルの可能性を否定する気はないが、オンライン、デジタルへの過度の依存は現段階では不可能であることを念頭において、様々な施策を進める必要がある。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2021/10/13(水) 12:01 PM

    アパレルと関係ない金属加工業のうちの会社ですが、数回オンライン展示会に参加したことあります。会社のPCの前に担当者が待機して、オンライン展示会に参加してる企業からの引き合いを待っていましたが、3日間一社も問い合わせ無しというのがあって、全く効果出そうもないので、今はオンライン展示会には参加しなくなりましたw
    現地に行けば、だらだら歩いて面白そうなことやってる会社ないかな?とか、綺麗なお姉さんいないかな?とか出来ますが、オンラインでちまちま色んな会社を見るのは面倒くさくてやってられねぇわ、ってのもある気がしますw

  • ヒデ より: 2021/10/13(水) 2:30 PM

    リサイクルショップと古着屋のヘビーユーザーですが、実物に触れ、試着せずに衣服を購入することは、まず考えられません。実物ですら、見た目と着用時の感想が異なることが多いからです。特に生地の感触、アームホールやウェストのサイズ感などは、実際に触って、試着してみないとわかりません。あと、特定のブランドの特定の品番の商品であっても、生産地によって、サイズに違いがあることは多々あるので、やはり、試着しないで購入することはありません。

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