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南充浩 オフィシャルブログ

スタート地点に立ったにすぎない百貨店のD2C売り場

2021年9月28日 トレンド 0

10月1日からコロナ自粛が解禁されることが濃厚となった。

解禁後はこれまでとは一転して、しばらくの間は実店舗が活況に賑わうのではないかと思っている。(はずれたらゴメンね)

まず、居酒屋を含む飲食店は間違いなく、活況を呈するだろう。

また、飲食店に限らずほとんどの実店舗も恩恵にあずかるだろうと見ている。一方、巣籠り需要で好調だった商品群は少し消費が落ちるのではないかと思う。主に書籍やゲーム類、玩具類などの需要は9月末までよりはトーンダウンするのではないか。

逆に衣料品店は今までの反動と気温の低下による秋物需要の増加によって10月はかなり好調になるだろう。

ただ、アセアン諸国の工場が新型コロナで停止したり、中国が電力不足で工場を停止したりしているので、好調が続くと各店舗(飲食含めて)は物不足となり、価格も上昇するのではないだろうか。

そんなふうに見ている。

 

10月から実店舗が好調になるという自分の予想が当たったとして、その反動消費がある程度の期間続くとすると、導入開始し始めた百貨店内にオープンした「売らない売り場」は期待外れに終わってしまうかもしれない。

 

そごう・西武初OMOストア「チューズベース シブヤ」は“未来の小売空間”を体現 初回は約50ブランドが出店 (fashionsnap.com)

 

大丸東京店に“売らない”店 新進D2Cの見本商品を陳列 | WWDJAPAN

 

これらが始まった原因は、海外だとエバーレーン(最近名前を聞かないが)、国内だと丸井の先行事例があったからだろう。

また、新型コロナ禍による実店舗の苦戦と、出店ブランドの経営苦境による撤退が相次いで、スペースが埋まらなくなったことも大きい要因だろう。

百貨店から大手アパレル各社の店が撤退し、スペースが埋まらなくなっているから、百貨店がこの企画に飛びつくのは必然だったといえる。

 

また、西武渋谷店というのは、西武百貨店の中ではそれなりに知名度はあるが売上高が大きくないので、実験はやりやすい。失敗しても大きな痛手ではないからだ。

西武百貨店というのは池袋本店が突出して売上高が大きいが、それ以外はあまり大したことがない。

もともと売れてないんだから、少々コケても同じだといえる。

 

大丸東京店は売り上げの大きな店舗だが、食品がメインである。

新型コロナ禍以降は立ち寄っていないので、どうなのかわからないが、東京駅と隣接している利点もあって、コロナ禍前は、食品売り場は平日でも常に賑わっていた。一方、上の洋服売り場は平日昼間はガラガラだった。

となると、このD2C売り場に変更して売れなかったところで、恐らくは大した違いはないだろう。

どちらの店舗も大コケしたところで損害は軽微だといえる。

 

新型コロナ禍前からの百貨店常連の大手総合アパレルの百貨店販路縮小の煽りから、百貨店は都心、郊外・地方を問わずスペースが埋まりにくくなっていた。

そこへ来て新型コロナ禍による消費低迷がそれに一層拍車をかけた。

現状、スペースを完全に埋め切れる百貨店はないだろうし、百貨店に出店したいというアパレルも少ないだろう。

となると、この手のD2C集積売り場を実験してみるにはうってつけの環境だったといえる。

 

では今後、この手の売り場が残存する百貨店全体に燎原の火のごとく広がっていくかというと、それは難しいだろうと当方は考えている。

両売り場の出店ラインナップを見てもらえばわかるように、ほとんど知名度の低い新興ブランドばかりである。これでは「イシキタカイ系」が多い東京都心ならまだしも、地方・郊外では集客は難しい。

 

20代〜30代の若者をメインターゲットに新たなショッピング体験を提供する。

 

と記事中に書かれているように、明らかにターゲットは若い層なので、年配層がメイン顧客の店舗は導入しても全く意味がないだろう。そして地方・郊外店や三越日本橋店なんかは年配客がメインである。

それと、売り場全体で見ても大規模な売上高は望めないだろうという点もあるから、絶大な売上高を誇る伊勢丹新宿店や阪急梅田店なんかは導入が難しいだろう。

 

ある程度成功できるのは、東京23区内の都心中規模店、名古屋や大阪、横浜、仙台などの大都市都心店くらいで、あとの地方中核都市程度ではまったく集客できないだろう。

 

もちろん、これまで決まりきったメーカーからの消化仕入れを頑なに守り続けてきた百貨店が新しい形態の売り場を模索するという意義は大いにある。

おなじみのメーカーからの消化仕入れ以外の形態がいかに難しいものなのかを、百貨店は一度経験してみればいい。

 

ただ、これが百貨店復活の起爆剤にはなるとは到底思えないし、大都市都心の中規模店以外には広がる可能性は極めて低いだろう。

また売り場の組み立て、デジタルの組み立ても恐らくは現状のままではまずいだろう。ディレクションする人間がIT系やイシキタカイ系に偏りすぎていて、商品説明文をポエムで済ませてしまっていたりする。(例:チューズべースシブヤ)

ポエムを読んで商品内容が理解できるのは、某環境担当大臣くらいだろうから、一般人に向けては、そのあたりの精度はイシキタカイ系に引きずられることなく、これから修正し高めていく必要がある。

これがゴールではなく、あくまでもスタート地点に過ぎず、今後は検証と修正を重ねる必要があるということを百貨店側は理解せねば「時代のあだ花」で終わってしまう取り組みだといえるだろう。

 

 

 

あんまり真に受けないように

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