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南充浩 オフィシャルブログ

大手セレクトショップという業態に難しさしか感じられないという話

2021年9月7日 企業研究 5

ユナイテッドアローズやアーバンリサーチなどの都心型大手セレクトショップの苦戦が続いている。

苦戦の大きな理由の一つは昨年春からの新型コロナ禍であることは間違いない。

しかし、新型コロナ禍の前から調子の悪い大手セレクトショップも散見され、アーバンリサーチもその一つだと言われていた。

もし、新型コロナ禍がなければ各大手セレクトの業績はもう少しマシだっただろうと思うが、個人的には、大手セレクト各社の成長というのは2019年くらいが天井だったと考えている。

 

元来、セレクトショップというのはベタな言い方をするとブティックだったり仕入れ型専門店ということになる。

店オーナーまたは店長や幹部の「セレクト」によって仕入れてきた商品を売る店というわけである。

個人の嗜好や見識に基づいて仕入れる商品をセレクトするわけだから、大衆に売れるような「最大公約数」的な商品選択には本来はならない。

逆にその偏り具合が面白いということで、特定のコアなファンを集めるという売り方である。コアなファンに売るわけだから必然的に販売枚数は少なくなる。またこの手の店なのでこだわりの商品を集めるから、商品単価も高くなる。

そのコアなファンたちに毎シーズン必ず買ってもらうというのがこの手の店のビジネスモデルになる。

 

ただ、この店がコアなファンの周辺にいる人たちの「憧れの的」になると、この店は売上高を伸ばすことができる。

高度経済成長期やバブル期に成長したブランドはこういう人たちに支えられたのだろうと思う。

当時は大手スーパーマーケットが出始めたころで、低価格衣料品はあったものの「安かろうダサかろう」の商品ばかりだった。どうしてそんなことが言えるのかというと、大学卒業時まで大手スーパーマーケットであるジャスコ、イズミヤの服を着て育ったからだ。

ジャスコの平場で売っている謎のメーカーの2900円のジーンズと、リーバイスの501ではブルーの色合いからシルエットから何から何まで違っていた。

そりゃ、我慢して7900円の501を買う人の気持ちも分かる。

 

だが、バブル崩壊以降、衣料品の価格破壊が起き、低価格ブランドの商品の見た目がマシになってくると「わざわざ高い商品を買わなくても良い」という人も増えてくる。これが2000年代半ばからの動きだろう。

そんな中、有名セレクトショップは売上高を拡大して成長してきた。

大手セレクトショップ各社が成長するためには、自社企画商品を増やさざるを得ず、洋服に限って見れば各社とも自社製品比率は8割を越えるだろう。

トータルでの自社製品比率が6割とか7割でとどまっているのは、靴、スニーカー、バッグ類などを他社ブランドから仕入れているから構成比が下がっているだけである。

500億円とか1000億円台に成長するためには、この手法しかなかったと当方は思っている。

ただ、コロナ禍が終わったとしても今以上に規模を拡大することは不可能だとも思っている。

 

大手セレクトショップ各社は、大都市都心の人々をターゲットとしてきた。

以前にもピンクのスラックス問題をこのブログで書いたことがあるが、大都市都心に住む人と、地方に住む人は圧倒的に嗜好が異なる。

インコテックスだかPT0ナンチャラか知らないが、その手の高感度ブランドであろうと、ピンクのスラックスは大阪府南部では「近所を歩けないほど恥ずかしい服装」と言われてしまう。

大手セレクトショップ各社の現在の売り上げ規模を合計すると、大都市都心の支持者はあらかた取り込み切ってしまっており、これ以上、売り上げ規模を拡大するには地方民を取り込む必要に迫られることになる。

しかし、地方民の多くは、都心型大手セレクトショップが打ち出しているような雰囲気にはあまり興味がない。

ユニクロ、しまむら、ジーユーあたりで十分だと思っている人も多いし、そうではないマイルドヤンキー層は、もっとゴテゴテしたのを好む。

また、自家用車や自宅のメンテナンス、飲食にはそれなりの費用を使うが、毎月、セレクトショップで服を買いたいと思っている人もそんなには多くないだろう。

 

大手セレクトショップ各社のコロナ禍の成長戦略について、ローコストオペレーションでエッセンシャル(シャンプーリンスではなく、生活必需品)を扱えという提言があるが、それをやると、しまむらや西松屋などとバッティングしてしまうことになる。

同じ土俵で戦って、今の大手セレクト各社に西松屋やしまむらを打倒するほどのノウハウがあるのかといえば、恐らくは皆無だろうから確実に負ける。

個人的な秘策(大げさかよ)としては、マイルドヤンキー向けにギラギラコテコテの地方民向け新ブランドを立ち上げてみてはどうかと思うが、皆さんはどうだろうか。

 

欧米に名だたるセレクトショップはあるが、国内でチェーン店化し、大型化している例を不勉強かもしれないが当方は知らない。それは店主なり店長なり幹部なりの嗜好性を発揮した品揃えを行うという極めて属人的性質を持つから、マニュアル化しチェーン化することが難しいからではないかと考えている。

それを乗り越えて大型化した大手セレクトだが、ここらが成長の限界ではないかと見ている。

売り上げ規模の追求ではなく、営業利益を高める施策を模索する方が賢明だろう。

新型コロナ禍向けに付け焼刃で地方郊外対応をしてみても、そこには西松屋、しまむら、ユニクロなどの大手がすでに地盤を固めているわけだから、極めて分の悪い勝負になる。

多店舗チェーンの大型セレクトショップというのは、結構矛盾した存だから、その矛盾が今噴出しているように感じられてならない。

 

 

 comment
  • xiang より: 2021/09/07(火) 11:15 AM

    実家がまさしく和歌山のちょい手前の
    なんちゃらニュータウンで全然愛着ないんですけど
    和歌山に行くいい道ができたおかげで
    大阪に住みたがる和歌山の小金持ちが越してきてるらしいし、
    サンプラザ寄ったらたまにおしゃれな人を見かけますよ。
    ピンクのスラックスは確かに見かけませんw

  • くぼちhkb より: 2021/09/07(火) 1:49 PM

    ユニクロやGuで肌着以外買えず、この春夏はそれらセレクトショップのSaleを楽しんだ70歳です。できれば地方都市にリアルなアウトレット店舗を狭くていいから展開してくれると嬉しいです。彼ら販売員の提案力はきっとユニクロGuではないファッションの楽しさを教えてくれることでしょう。日本型セレクトの道は閉ざされてはいません。

  • BOCONON より: 2021/09/07(火) 10:39 PM

    セレクトショップの客層というのは(くだんのピンクスラックス氏のような)「収入の多い人」であって「資産の多い人」ではたぶんない。資産家は「金持ちそうに見えても,あやしげな人間が寄ってくるくらいなもので得する事は何もない」で「服なんぞはユニクロでOK」だったりしますからね。
    一方セレクトショップの販売員には,こんなタイプが多い。
             ↓
    https://www.beams.co.jp/styling/bhm/154889/

    “映画《アニー・ホール》(古いなw)に見るウディ・アレンのファッション” なんて普通(特に若い人には)何の事やら分かる訳もない。あるいはイタ物を有難がったり,要はファッションオタクあるいはお金かかってもイキった格好したい人たちであります。
    それ故ネット上のファッションまとめのたぐいを見ていても,セレクトショップなんてあまりお若い人たちの買い物の選択肢には入っていないように見える。どうも「大手セレクトショップ」なんて語義矛盾みたいなもので,このご時世未来のある業態とは思えませんね。

  • 読者 より: 2021/09/10(金) 9:39 AM

    街なかでの大人の恥ずかしい気持ち悪い半ズボン姿に比べれば、ピンクのスラックス全然ありです!

  • hitonotameni より: 2021/11/14(日) 5:44 AM

    これらのショップで買う人って俺ってオシャレって思っているかもしれませんが
    古着屋、リサイクル屋で掘り出し物発掘するのを趣味にしている私からすると。
    ブランド服の品質と値段ってピンキリに感じます。値段の大半がブランド名料じゃないかと。
    特にセレショのオリジナル商品の品質と値段に疑問を感じていました。
    古着屋でセレショの古着見ると、なんか劣化が凄いのです。
    だから古着は海外インポートブランドしか買わなくなりました。
    南さんのブログ読んで、OEM請負いやってる中小が3000円で納品したものを
    1万円で売っていると知り、納得しました。
    昔(90年代)は、8万円くらいのポールスミスあたりのスーツなら、
    日本生産で裏地はキュプラ使ってましたが、今じゃ、ポリエステル当たり前ですよね。
    今ではセレショは、海外インポートブランドの試着や新製品の確認にしか使っていませんね。

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