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南充浩 オフィシャルブログ

高額でファッショナブルな服は一般大衆には売れにくい

2021年9月2日 誰がアパレルを殺すのか 1

欧米のラグジュアリーブランドを除いて、ファッショナブルでそこそこの高価格品を売るということと、百億円単位以上の売上高を稼ぐまでに成長させることは現在では両立しにくいと思って見ている。

ファッション衣料と一口に言っても、様々なジャンルがあるが、どれをとって考えても1アイテムの価格が数万円するようなブランドは極大化しても50億円が限界ではないかと思っている。

 

例えば、ジーンズというアイテムだと、1990~3990円にジーユー、しまむら、ユニクロというマスブランドが君臨している。

2000年代後半までは、デザインやシルエット、色、などがヘンテコリンで、とてもではないが5900円以上の専業ブランドの代替品にはなり得なかった。

現在は、その辺りはかなり改良されており、そこまでおかしくは見えない。2009年頃までユニクロでジーンズだけは絶対に買わなかった当方でさえ、今現在では「ユニクロの値下がりジーンズで十分じゃねえの?」と思っている。

4900~6900円くらいには、アダストリアの各ブランドや、アズールなどのSPA型ブランドがひしめいている。

8000~1万円強にはリーバイス、エドウインという老舗の専業ブランドが踏ん張っている。

1万円台後半~3万円台に懐かしのプレミアムジーンズブランドやビンテージレプリカブランド、デザイナーズブランドなどが種々雑多にうごめいているわけだが、このプレミアムやビンテージ系、デザイナーズなどに属するブランドが単独でリーバイスの100億円規模、エドウインの200億円規模にまで成長できるかというと、それはあり得ないだろうと見ている。

この価格帯に属していて「好調」と言われる某ブランドですら、売上高は30億円規模だと言われている。これがあと3倍~5倍に成長することなど、よほどのブームでも起きない限りはあり得ない。

 

理由は、品質やらデザインやらは置いておいて、価格差である。たかがジーンズに2万円前後を支払いたいという人がどれほど存在するのかということである。

もちろん「普段はユニクロだけど記念に1本くらいは買いたい」という人はいるだろう。

だがその人は1本買えば満足して2本目、3本目は買わないだろうし、1本買ってみたいという人は何千人も存在しないだろう。

おまけに低価格ジーンズといえども現在では、素材組成やら縫製仕様やらは置いておいて、パッと見た感じはそこまで変ではないから、ファッションにさして興味のない多くの人々はこれで満足してしまう。

ユニクロ、ジーユーばっかりはちょっとなあ、と感じている人は、5900円前後のSPA系ブランドやその上のリーバイス、エドウインくらいを買ってそれなりに満足するだろう。

それでも満足できない、という人はよほどのマニアや変わった嗜好性のある人で、どちらも人口的にはそんなに多くない。少数派・マイノリティだと言っても差し支えないだろう。

そういう少数派に向けて売っているのだから、需要が増えるはずもない。そのあたりの上限が30億~50億円だと見ている。

 

特にジーンズブランドは、ジーンズやカジュアルパンツと言った「単品」が強く、他のアイテムが弱いので、売上高を伸ばしにくい。トータルブランドなら、ジーンズの買い足し需要が無い人がコートを買うなんていうことがあるから売上高は伸ばしやすくなる。

ただし、型数を増やせば増やすほどそれぞれの品番で売れ残るリスクは高まり、ひいては不良在庫リスクも高まることになるから、メリット100%のシステムなどこの世に存在しないことがわかる。

 

 

ジーンズやその他の単品アイテム(スーツ、ダウンジャケットなど)に限らず、トータルブランドでも構図は同じで、

 

1、マスに支持される低価格ブランド

2、中価格帯のSPAブランドと専業ブランド

3、高価格ブランド

 

という具合になっており、3のブランドが売り上げ規模を日本国内において500億円とか1000億円とかに拡大することはほぼ不可能だと当方は見ている。

実際にそのように考えて活動している高価格ブランドもいくつか知っており、小ロットで高額品を売るブランドはその割り切りが必須だろう。

 

しかし、経済メディア、業界メディアや一部の業界人の中は、こうした背景を考慮することなく「同じ洋服という商品を売っているのだから、同じ規模まで売れて当然」と思っている人がいて、そういう言説が無用な混乱を生じさせているように感じる。

 

先日、某業界人が、商品価格2万~3万円台のJブランドの苦戦を評して

「リーバイスの牙城は崩せなかった」

頓珍漢なツイートをしていた。

だいたいが、知名度においてリーバイスとJブランドでは大きく異なる。リーバイスはファンでなくても名前くらいは知っているがJブランドなんて一般人は知られていない。

また、価格差も歴然で、2倍は違う。

そんな「高いけどあまり知られていない」Jブランドがリーバイスほどの売り上げ規模になれるはずがない。

この人は業界事情にはかなりお詳しいが、よくわからない結論を導き出すことが多々ある。分析は苦手なのだろう。

 

ただ、この手の考え方をする人は世の中では昔から珍しくない。メディア人にも業界人にも昔から多い。

だからこそ、衣料品業界は25年間近く混迷を極めているのだろうと思う。

 

 

値下げされたリーバイスをどうぞ~

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 comment
  • kimgonwo より: 2021/09/03(金) 11:57 AM

    「ユニクロのデニムなんかはかないよ!
    普段 ラングはいてるのに(怒)」
    ふーん ファッションの学校で勤務してる人は
    そういう考え方するんだ
    ユニクロがなぜ売れてるかは 考えたりしないのね
    ふーん ファッションの学校で教えてるのにね
    ところで
    ラングってなに?

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