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南充浩 オフィシャルブログ

丸井の「脱物販」は他の大手流通企業には当てはめにくいと思ってしまう理由

2021年8月31日 企業研究 0

マルイがプライベートブランド(PB)から撤退することを発表した。

丸井が衣料PB撤退 EC台頭が打撃、「脱物販」へ改革: 日本経済新聞 (nikkei.com)

紳士服「ビサルノ」や婦人服「アールユー」、婦人雑貨を中心とした「ラクチンシリーズ」の3ブランドを順次廃止する。PBを中心とした事業には20年3月末で全社員の約2割の1150人が従事している。

26年3月期までに650人がネット企業の誘致や店舗運営支援、イベント事業などを担当する。その他の500人はフィンテックや新規事業に振り向ける計画だ。

 

とある。

紳士服、すなわちメンズスーツの「ビサルノ」は無くなっても大して影響はないだろう。パターンオーダースーツのファブリックトーキョーは実質的にマルイのPBとも呼べるから、同じジャンル、しかも売れにくいメンズスーツに2つの自社ブランドは要らないということだろう。

婦人服の「アールユー」は当方の不勉強のため、あまり聞いたことがない。推測になるがこちらは業界や消費者にとってほぼ存在感は無かったのではないかと思う。これも廃止しても全く影響がないだろう。

この2つに比べて一番支持者がいたのは「ラクチンシューズ」だろう。

一時は大々的に取り上げられていたが、近年はあまり取り上げられなくなった。恐らく売上高も低下していたのだろうと思う。

 

丸井はPBに1970年代に本格参入し、成長のけん引役となっていた。16年3月期にはPBがほとんどを占める「自主専門店」の売上高は約600億円と全体の2割を占めていた。足元では全体の4%にあたる約80億円にまで落ち込んだ。

 

とあるから、たったの5年間で売上高は8分の1弱まで縮んでしまったということになり、売上高が80億円ということは3ブランドで割ると、平均売上高は26億円強ということになる。

おまけに全体売上高に占める構成比は4%しかない。

マルイグループという大企業にとっては「無くても構わない」という位置づけになってしまう。

売上高構成比が4%しかないのに、従業員は2割も使っている。これでは採算性が低いと取られて、廃止されるのも当然だろう。

 

しかし、逆に言えば、衣料品&服飾雑貨の企画・生産・販売というのは、これほどに人手が必要になってしまうということにもなる。

もちろん、企画と生産はどこぞの専業メーカーに依頼したり、ODM会社や商社を中間に入れて依頼していたのだろうと考えられる。マルイの社員が生産管理をやっていたとはまったく考えられない。それでもこれだけの人手が必要となってしまうところに、衣料品&服飾雑貨の難しさがあると感じられてならない。

 

マルイの現在の主力は

 

ネット通販企業の商品を試すスペースや飲食店などを増やし、非物販の売り場面積の割合を現在の3割から26年3月期に7割に高める。

 

 

丸井の収益面での主力はカード決済手数料を中心としたフィンテック事業だ。22年3月期の営業利益は前期比2倍の410億円と全体の9割を占める見込み。自社のクレジットカード「エポスカード」の会員数は15年3月期の591万人から21年3月期には709万人に増えた。

 

の2つである。

 

マルイが物販と簡単に決別できたことと、フィンテック事業に切り替えられたことの理由は、もともとマルイは金融と縁が深かったことが挙げられる。

最近では聞かなくなったが、当方が小学生くらいの時は、両親を含めた周りの大人たちが「月賦」という支払い方で高額商品を購入していた。

今でいう分割払いといえる。毎月〇〇円ずつ何回かに分けて支払うという支払い方法である。

マルイは、これを国内で最初に取り入れた企業だと言われている。またカードによる販売も国内で最初だとも言われている。

この背景があったから、すんなりと切り替えることができたと考えられるし、経営者もそちらを選択することができたと考えられる。

このやり方を他の大手流通企業や大手アパレル企業が全面的に取り入れられるかというと、社内ノウハウ蓄積の問題、人員の問題、背景の問題、すべてを総合的に考えるとかなり難しく、切り替え期間はかなり長期間必要になるだろう。

マルイの事例を持って「見習え」などとは安易には普通は言えないはずである。

 

さて、この日経新聞の記事では、伊勢丹のPB縮小、ニトリとワークマンのPB拡大の事例を合わせて今後の流通企業のPBについて考察している。

なかなかに難しい問題である。

流通・小売業がPBを一様に拡大してきた理由として、粗利益高の確保ができやすいことが挙げられる。

他ブランドを仕入れるよりも、ODM丸投げとはいえ、PB製造した方が粗利益額が大きくなりやすい。

しかし、その一方で、

 

PBはメーカーからの全量買い取りが基本で、計画通りに売れなければ、在庫を抱え込むことになる。大量生産を前提としており、少量では開発や生産にかかる費用が割高になる。

 

というリスクもある。

まあ、商売の原則はハイリスクハイリターンなので、何を当たり前のことを言っているのだろうと思うが、ローリスクハイリターンという美味しい話はこの世には存在しない。存在するならみんなやっている。

通常の百貨店各社や大手スーパーマーケットがマルイ手法を取り入れることは容易ではないし、現実的解決策でもないと思っている。

一つの参考事例にはなるが、広く当てはめられる事例ではない。

目先の報道に惑わされることなく、各社には舵取りしてもらいたいと願うばかりである。

 

 

これから廃止に向かうビサルノの軽量本革シューズをどうぞ~

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